第1話

『狼を統べる虎猫』

(挿絵:レッド隊長)

ここはOFFレンジャー指令本部。
レッド隊長が活動休止中の今、代理としてグリーン隊員が指揮をしている。



そして今日もグリーンがレッドの置いていった帽子やペンダントにご挨拶……。

「おはよーございますっ」

いつものように挨拶をし終えると、そのままグリーンは会議室へ向かう。
ここでいつものようにみんながグリーンに挨拶を……っと、今日はいつもと違うようだ。

OFFレンジャーの隊員達がモニターに向って、なにやらざわついている。

「どうかしましたか?」
「それが、オオカミに不審な行動が多く見られていて」

イエローの言葉に、グリーンはそのままモニターに向かう。

「不審な行動とは?」
「ええ。なにやら……あちこちの病院を転々と……」
「病院……。医療関係について何か企んでるのかもしれないですね。そのまま調査を続けてくださいイエロー」

イエローはうっすらと笑って再び顔をモニターに向ける。
こういうときイエローは頼もしい。さすがOFFレンのしっかりしたお姉さんだ。

グリーンはそのまま会議室を後にした。





「……ダメだ……」

所変わってオオカミたちの本部……。
ボスオオカミがいつにも増して落ち込んでいる。

「ぼ、ボス……気を確かに……」
「もう俺は……俺は……」

ボスがガクッと倒れるとオオカミたちがその背中を支える。
ボスには生気が無いとしか思えない。

「どこの病院へ行っても同じ結果です」
「ボス!こうなったら医者の言うとおりにするしか!」

「うるさいうるさい!!」

ボスが大声を張り上げる。オオカミ達は耳を押さえて座り込んだ。

「しかし……。このままじゃボスの円形脱毛症はますますひどくなりますよ」
「やっぱ、田舎へ帰って療養するしか方法が……」

ボスは永きに渡るOFFレンの活躍のおかげでストレスが溜まり円形脱毛症になってしまったのだった。

「円形脱毛症になったなんてOFFレンジャーに知られたら俺は間違いなく笑いもんだぁぁっ!!」

ボスが頭を抱えて暴れまくる。オオカミ達はただそれを見ているしかない

「俺達にはどうする事も出来ないのか……!?」
「OFFレンジャーを今から倒すにしても……」
「ボスは俺達だけに任せるのは心配なんだよ多分。ボス心配性だから……」
「いや……一つ手はあるぞ。代わりのボスを作り上げちまえば……ボスも安心して田舎にいけるかもしれないぞ」
「だけどさ、俺達みたいな奴じゃボスは……」

オオカミの一匹が一つ思いついた

「そうだ!いい事考えた」


ボスが部屋中で暴れまくっている頃、オオカミの一人がボスにそっと耳打ちをした。

「……何……?そんなことが可能なのか?」
「えぇ、ですからボス。ここはどうか療養を……」

ボスは少し考えてオオカミたちの考えに同意した。

「わかった。だが、それを見てからだ……いいな」
「了解しました。しかし問題が……」
「解ってる。俺がなんとかしよう」

オオカミ達は研究室へ入っていった。





そして一方こちらは……OFFレン本部。


「どうですか? オオカミたちのこと、何かわかりました?」

お茶を飲み干したグリーンが、早速イエローに問いかけた。

「えーと……グレーたちが調査に行きました」
「そっか。今オオカミ達は何しているんでしょう?」
「あ、それはわかりました。尾布駅にいます。出動します?」
「……いや、やめときましょう。特に騒ぎは起こしてないみたいですし」
「そうですか。ではグレーたちの調査結果を待ちます」
「そうですね。じゃ、引き続きオオカミを見ていてください」
「グリーン……!」
「ん?」
「だいぶ隊長らしくなってきましたね」

グリーンはその言葉を笑顔で返した。





「ボス、いってらっしゃいませ」

オオカミが大人数で駅を占領していた。電車に乗っているのはボスだ。

「後の事は、我々と新しいボス代理に任せてゆっくり療養なさってください」
「うん。アイツなら大丈夫だろう……。俺も安心して田舎にいけるというものだ」
「ボス。時々結果を報告いたします」
「うん。お土産も買ってくるから。幸運を祈るぞ」
「ボスの田舎の名品って何なんですか……?」
「名品か……?そうだな。まんじゅうかな」

「あ、じゃ俺お土産いらないっす」
「俺も」
「俺も」
「俺も」
「俺も」
「(以下省略)」

無言のボスが乗った電車はゆっくりと動き出した。


「別れはそのくらいで結構か?」

オオカミが振り向くと、後ろには小さな虎猫が立っていた。

「あ、タイガ様。ではアジトに戻りましょうか」
「そうだな。OFFレンジャーを早く倒さねばならないしな」

虎猫はそう言って、ニヤリと笑った。

挿絵