第2話
『タイガお披露目』
(挿絵:ホワイト隊員)
ここは本部にあるレッドの部屋。そこにいるのはグリーンだ。
「……レッドがOFFレンから去ってもう数ヶ月ですかぁ……」
グリーンはレッドの部屋に置かれた前隊長の写真を見てつぶやく。
グリーンにはみんなを自分が引っ張るだけでなく、自分も誰かに引っ張ってもらいたいような気もあった……。
「レッドぉ……隊長って大変なんですね……」
「さて、改めて自己紹介しよう。オレが今度からお前達のボスになった。タイガだ」
アジトに帰って来たオオカミ達を前に、新たなボス代理となった虎猫のタイガが軽く自己紹介をした。
「しかし……狼のボスが猫とは……」
オオカミの言葉に、タイガはキッとオオカミを睨んだ。
「オレは猫じゃないっ!!オレは虎なんだ。体の柄を見れば解るだろうっ!」
タイガは顔を真っ赤にしてオオカミに怒鳴った。

「しっ!しかし……どう見てもOFFレンと同じ……猫……ですが」
すると、タイガは「あぁ、そういうことか」と言わんが如く不敵な笑みを浮かべた。
「お前達はオレの見かけが猫に見えるから猫だと思ってるんだな?」
「いや……猫に見えるとかじゃなくて猫じゃぁ……」
「オレの体には虎のDNAが組み込まれている。つまり中身は猫ではないということだ」
「は、はぁ……でもDNAくらいじゃぁ……」
何故このようなことになったかというと……それはオオカミボスが田舎に変える前のこと……
「代わりのボスを作ろうと思うんです……。あいつらと同じ猫を使って」
ボスはあの時、オオカミにこう耳打ちされていた。
「しかし……何故猫を?」
「俺達ザコオオカミの中じゃボスに値するような奴はいません」
「ふむ……そうだな」
「それにあいつらと同じ猫を使えばOFFレンと同類ですから作戦進行が楽になるかもしれません」
「だが……作れるのか?」
「作り出すしかないでしょう……。我々の科学力と小説のご都合主義をうまくあわせれば作れない物はありません」
「ふむ……なるほど」
「ところが。必要な物がありまして……」
「それは俺が集めておいてやる。俺も参加していいはずだろう?」
ということで、その辺にあった虎のDNAも+し、色々改造してタイガが誕生したのだった。
彼が誕生してからは、ボスじきじきに悪の基本をしっかり叩き込み、立派にボス代理の素質を身に着けたのがつい数時間前。
「……わかったな。オレは猫じゃなくて虎だ。そこを間違えるんじゃないぞ」
「了解しました」
「フン、わかればいいんだ。それじゃぁ行くぞ」
「えぇ!?タイガ様、何処へ行く気で?」
「わからないのか? OFFレンジャーの本部だ。早く来い!」
歩き出すタイガの背中を見ると、オオカミはついていくしかなかった。
そして、一方OFFレンジャー本部の入り口前。
「寂しいねぇ……シルバー」
「ですねぇ……ブラック」
ロボと喧嘩した2人は閉めだされ、ここに佇んでいた。
「寂しいから輪唱でもしてよっか……」
「私ガンダムがいいです」
「俺、今ガンダム輪唱する気ないよ……寂しいなぁ……」
「寂しいですねぇ……」
するとそこへ、タイガを先頭にオオカミの一団がやってきた。
当然彼らは玄関前の謎めいた二人に気がつく。
「っ!? おいオオカミ、アイツらは誰だ」
「OFFレンジャーのブラックとシルバーです」
「ブラックとシルバー!? 強いのか!?」
「えーと……二人とも謎が多くて特定不能です」
「と、とりあえず……あの2人を潰すか」
タイガは恐る恐る2人に近づいて行った。
「オイ……。お前達っ!」
2人はタイガをじーっと見つめると、ぽつりと呟いた。
「俺達寂しいんです」
「そっ……それがどうした」
「癒してください」
「どっ!どうすればいいんだよ……」
「寂しいなぁ……」
全く掴めない彼らとの会話から逃げるようにして、タイガはオオカミのもとへ帰って行った。
「お、OFFレンジャーって……みんなあぁなのか?」
「いえ、あいつらはOFFレンの中でも特別で」
「そ、そうだろうな」
「タイガ様、とりあえずあいつらは放っておいて中に入っちゃいましょう」
「そうだな。よ、よーし……!」
タイガは再度、勇気を振り絞って恐る恐る二人に近づいた。
「入るぞっ!? 入っていいんだな!?」
「寂しさが増しますよ」
「オレには関係ないっ!」
「君は何故寂しくないんですか」
「なんだ……こいつらの人生を悟ったような語り口は……」
このままでは埒が明かないと判断したタイガは覚悟を決めて、拳を握った。
「こうなりゃお前らを……!」
「ちょっとー。ブラックとシルバー、何騒いでんのー?」
「ぶん殴……って……」
その時、玄関の騒ぎをききつけたのか、女子隊員が出てきたのにタイガは気づいた。
「やだ!オオカミ達が本部の前で何の用?」
「オオカミは帰ってよ!」
無抵抗なオオカミの半数を、出会った瞬間ボコボコに倒す女子隊員たちをタイガは見つめていた。
すると、タイガの体は自然に彼女たちの方へと歩み寄って行った。
「だ、誰……? この子」
「オオカミの知り合い?」
「あ、あのっ……」
女子の前に立つタイガの顔は、ほんのり赤くなっていた。
「お、オレと……付き合ってくれないっ!?」
オオカミはタイガの予想外の言葉に固まった。
「あのっ! 是非電話番号と、差し支えなければ携帯のも! そんで差し支えなければ住所とか3サイズとか! それで差し支えなければ!」

女子を前にしてテンションの高いのタイガを呆然と見つめながら、オオカミたちの中ではざわめきが巻き起こっていた。
「ぉぃ……タイガ様どうしたんだ……?」
「こんな時はタイガ様の取扱説明書だ」
オオカミは、タイガの制作に携わったオオカミ研究員たちが作ったガイドブックを取り出し、中を開いた。
「何々……どうしたことかオオカミ以上に女性に対する意欲が強い為、注意……だってさ」
「まぁ、俺らオオカミが作ったからな……」
「なんだか、大変な奴をボス代理にしてしまったかもしれん……」
数時間後。
満足そうにメモ帳を抱えているタイガの後で、オオカミ達はブラックとシルバーの様にいつまでも黄昏ていた。