第11話
『きんぎよ』
(挿絵:ピンク隊員)
もう秋も深まってくる頃。みんなは過ぎ去りし頃の夏を思い描いていました
「もう秋も終わりだね……」
「寂しいね……」
「夏の時もこうだったよね……」
「夏か……夏ね……夏といえばいろいろあったよなぁ……」
「花火大会。かき氷の食べ比べ。プール行ったり蚊にかまれたり……」
「夜店にも行ったよね~」
「行った行った」
「そこでさぁ~金魚すくいやったよねぇ?」
「やったやった」
「その金魚何処行ったっけ?」
「!?」
「ど、何処やったっけ……」
「金魚鉢にいれたよね……?」
「いや、確か……そんなの無いからフラスコの中に入れたけど」
「そのフラスコって……丸底フラスコですか?」
「そうそう!イエローそれだよ!」
「何でそんな物の中に……」
「だって金魚鉢に似てるから……」
「じゃぁ早く助けないと!イエロー!持ってきてよ。まるまるフラスコ!」
「丸底フラスコは先日塩酸を薄めるのに使いました」
「え!?」
「いやーなんか白衣着ると私、周りの物が見えなくて」
「そ、それはそれで困り者だね……」
「じゃぁ金魚さんは……泡となって消えたわけですね」
「なんか……人魚姫みたいですね」
「残酷な……」
「で、その塩酸は……?」
「あぁ、もちろん。シルバーに」
「え!?」
「わわわわわわわ……私飲んでませんよっ!塩酸なんてっ!」
「あのぉ……塩酸なんて飲んで大丈夫なんですか?」
「塩酸を薄めたら飲んでも大丈夫です。胃液も薄い塩酸ですから一応。味は酸っぱい水みたいなものですね」
「でも飲んでないですよっ!いくら大丈夫だからといって塩酸なんて……!」
「ホラ。あのレモンジュース。あれに混ぜたんですよ」」
「うっ……そういえば……ケーキにレモンジュースなんておかしいと思ったんですよね……」
「溶かした挙句に人に飲まれるなんて……金魚さん可愛そう」
「シルバーがおいしそうに飲んでましたよねぇ……なんて残酷な」
(責任転嫁して自分の罪をうやむやにしてるよこの人……)
「何だか気分が悪いです……」
「今はシルバーの胃液となって物を溶かして栄養分になってるんでしょうね」
「うぐぅぅぅ……」
「あぁ!わかりました!知らぬが仏ってこういうときに使うんですね!」
「あぁ、なるほどね」
「ボギャブラリーを実体験で覚えないでくださいよぉ……」
「まさに知らぬが仏ってやつだね」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……」
「棒読みっぽく笑わないでください……ちょ……ちょっとトイレ行ってきま……す」」
トイレでシルバーは自分の胃液をはいておりました。
「ぉえ……ぉ……ぉ……ぉぇぇ【以下自主規制】」
「ゲゲゲのシルバーだね」
「ぉ、上手いねぇ。オレンジ」

「さて、これで事件の真相は暴かれたわけだ」
「すいません。今度は白衣を着ないで実験する事にします」
「マッドサイエンティストて怖いね」
「私のこといってるんですか?」
「そうはいくかぁ……」
シルバーがよたよたと歩きながら地を這うような声でロビーにたどりついた。
「シルバー。すっきりした?」
「するわけねぇだろうがぁ……」
「シルバー何だか様子が変」
「そう?いつも変だと思うけど……」
「よくも溶かしてくれたなぁ……」
「まさか金魚の霊にでも取り憑かれたとか……」
「だね。お決まりのパターンだし」
「きっと嘔吐していたら霊も戻って出てきたんだね」
「だ、だれか霊媒師の人ー!」
「いないって!」
「普通に死んでしまうのならまだしも……溶かして飲むとは……許さないぞ……」
「それは……ホラ!あの……業務上過失致死っていうか?悪気はない!うん」
「シャレになってないよイエロー……」
「俺を殺した報いだ……こいつを取り殺してやるからなぁ……」
「そ!そんなことしたら私の実験台が!」
「イエロー!そういう問題じゃないでしょう!12人になっちゃうんですよ!人数が」
「グリーン隊長。わけわかんないっす……」
シルバーというか金魚に取り憑かれたシルバーはさっきから嫌な笑を浮かべながらこっちに近づいてきた
「キヒヒヒヒヒヒ……」
「怖い……怖いよシルバー……」
「とりあえずお祓いをしないと……」
「お祓い!?神社なんてこの辺ないし……」
「とりあえず探そう!」
この街には神社どころか教会すらない。金魚の霊はどうなってしまうのか!?
「キヒヒヒヒヒヒ……だんだん精気を吸い取ってやるからなぁ……キヒヒ……」
「大変だ!シルバーの顔が青い!」
「その後でおまえらも道連れだぁ……キヒヒ……」
「早く!誰でも良いからお祓いできる人を見つけないと!」
「じゃぁ私が!」
「ピーターお祓いなんてできるの!?」
「今、通信講座で「中学生から出来る!お祓い入門」を習ってる所です!動物霊くらいなら多分OKです!」
「じゃぁお願いピーター!」
「えぇ、と気を溜めるのにちょっと時間が……南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」
「ちょっとぉ~!気なんて溜めてたらシルバーがぁぁぁっ!!!」
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」
「とりあえずピーターはほって置こう!」
【ピーターパン隊員離脱】
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……南無妙法蓮華経……」
「まだピーター溜めてますよ」
「あの!ピーター!まだ?」
「南無妙法蓮華経……まだです……南無阿弥陀仏……」
「もう!役に立たないなぁ!除霊って!」
「南無阿弥陀仏……タイガくんなら……南無妙法蓮華経……出来るかもしれないかも」
「なんで?」
「南無妙法蓮華経……彼……南無阿弥陀仏……女子隊員のしている事は全て実践してるから」
「そうか!そういう顔してるもんな」
「行こう!」
【アジト】
彼は平面的にくどいてもダメだと今頃気が付いた。
ではどう攻めるか?趣味が合えば例え敵同士でも気が合うはずだと言うわけで彼は女子隊員の趣味を自分の趣味とするべく一生懸命努力しているのであった。
「えーと……次はホワイトちゃんの好きなサッカーを勉強して話を合わせよう」
「その横でパープルちゃんの好きなアニメを見ながら……」
「ピンクちゃんのぬいぐるみを作るっと……」
「大河!……じゃない。タイガ!」
「なんだよぉ~……お前らが来るといつも良い事ないんだよな」
「お前ピーターの通信講座やってないか?」
「ピーターちゃん?ちょっと待て……えーと……ボールペン字でもない……トールペイントでもない……」
「キヒヒ……」
「近づいて来てます!」
「う~ん……あ、お祓いか?」
「そう!それ!」
「除霊してくれない!?」
「悪いけどこの通信講座。明後日やる予定なんだ。今、オレ忙しいから」
「いいからやれよ!」
「黙れ!オレは今サッカーの勉強中だ。 えーと……サッカーには虎関係のチームないのかな……」
「何でも良いから早くしろ!」
「うるせぇなぁ……霊って何霊だ?」
「動物霊かな」
「キヒヒ……」
「早く!」
「動物霊ねぇ……確か3月号に……付録がついてたな」
「早く!早く!3月でも4月でも良いから!」
「あ、あった。動物霊除霊ディスクver2」
「どうするんだ?」
「PCに入れて再生すればいいに決まってるだろ。ディスクなんだから」
「早くしてくれよ!」
「待て待て。使用上の注意があるぞ。動物にも魂があります。あなたが愛すれば向こうもわかってくれるはずです。
そんで、心臓の弱い方、妊娠中の方、2時間以内に飲酒をした方、最近の日本に不満を持っている方のご使用は控えてください」
タイガの説明は無駄だと思ったグリーンはディスクを奪い取り急いでPCに挿入した。
タイガのPCは特注でタイガーカラーになっている。あちこち黒と黄色でチカチカする。
自分のPCもグリーンにしようかな~とちょっと思った
その瞬間。起動すると女子隊員のプライベート写真が何枚も壁紙加工されて
デスクトップに飾られていた。
「何だ。この壁紙は」
「女子隊員のスナップショット!」
「羨ましいか。絶対やらね~♪」
「なんで、お風呂の写真まで!?」
「さ、さぁ……なんでだろ~……」
「そんなのはどうでもいいんです!早く再生を」
「ハイハイ」
「キヒヒ……さてお前ら皆殺しだぁ!」
シルバーの手には巨大な斧
あれ?何でそんなものを……って急いで除礼しないと生首隊長になってしまう!
「早く!!」
「えーと……これでOK!]
【再生】
再生ボタンを押した瞬間、僕らの前に激しい閃光が走った
まぶしくて目を開けていられなかったがうっすらと見ることが出来たのは閃光の中でゆっくり床に倒れるシルバーの陰だった……。
「うぅ……ん……私は……」
「気が付いたね。シルバー」
「あ、何が……あったんでしょう……」
「まぁ、長くなるからそんなことはどうでもいいんだ……」
「でも、今度から動物は大切にしないとね」
「そうだね。一寸の虫にも五分の魂っていうもんね」
「????それどういう意味っすか?」
「相変わらずだね……」
「キヒヒ……まだ終っちゃいないぞ」
後ろからまたも不気味な声が聞こえてきた。
どうもタイミングが悪かったらしく金魚の霊はタイガに移っていた
「キヒヒ……今度はこいつを……」
「仕方ない……タイガと一緒に金魚の霊を消滅だ!」
「え!?」
「タイガくん。生まれ変わったらまたデートしてあげるね」
「ちょっと!コラ!こいつは敵でも……ォィ!」
「犠牲は闘いにつきものさ……」
「いくぞ!OFFレンジャー原子力速射砲!用意! そして各自!サングラス装着!」
「OK!」
「お、オイ!動物は大切にするんじゃなかったのかよ!オイ!コラ!」
「発射!」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……ッ!!!
タイガは眩しい閃光の中で金魚の霊と共に原子分解されて跡形もなく消えてしまいました
「終ったんだね……」
「うん。長い闘いもやっと終ったよ……」
「タイガくん……さよなら……あなたの事は当分忘れないね」
そして後日。きちんと金魚のお墓を作ってあげました。金魚さん。安らかに
☆おしまい☆