第16話
『白虎も現る。』
(挿絵:レッド隊長)
ここはOFFレンの本部……ではなくオオカミ軍団のアジト……。
「大掃除ったってなぁ……」
「片付けるもんなんて無いだろ」
今日はアジトの大掃除。年末になんてしないのが彼ららしいところ。
肝心のタイガは自室でお昼寝中。オオカミはあちこちを掃除しているのでした……。
「なんだこれ?」
ふと、オオカミは小さなボックスに入っているホルマリン漬けの猫を見つけたといっても形が小さいし、1リットルペットボトルぐらいの大きさだ。
「これは……タイガ様のプロットじゃないか」
「プロット……?」
「タイガ様を作る時に試作を作ったんだ。結局失敗したがこんなところにあったとはなぁ……」
「ふ~ん……失敗作か」
「ぉ……良い事考えたぞ……今のオレ達の技術なら……」
「なんだ?」
「まぁ、来てみろよ……」
研究室を掃除しているオオカミ達はそのまま研究室の奥へと進んでいきました……
「ZZZZ……」
一方朝から眠っているタイガは夢を見ていました。
彼の夢はいつもの通り欲望に満ちたアダルトな世界……。
「だっ……ダメだよ……ホワイトちゃん。下着はつけたままでいいよっ!」
……内容はともかく眠っていました。
「え?何……オレも脱げばいいの……?ちょ、ちょっと待って……」
「……さっきから何言ってんのよっ!」
「いてっ!」
誰かに頭を蹴飛ばされて気が付けば目の前にいるのはOFFレンホワイト……。
「ホワイトちゃんっ!ついに……オレのところに……」
「違うでしょ!そっちの方が来たんじゃない」
「……は?」
「自分の寝ている所を見て見なさいよ」
ホワイトにそういわれて自分の眠っていた場所を見てみるとそこはダンボール箱の中。
「おかしいな……オレ……ベッドで寝てたのに……」
「箱の張り紙を読めば解るんじゃない?」
「張り紙?」
【タイガです ♂。可愛がってください】

「……?」
「わかんない?捨て猫なんだよ?今」
「な、なんでだよーっ!!!」
「朝来たら本部の前に寝ているタイガくんがいるし……やっぱり捨てられたんだよ」
「……オオカミの奴……」
「……大丈夫?」
「お、OFFレンなんかに拾われてたまるかっ!」
「あ、ちょっと……」
怒りをあらわにしたままタイガはアジトへと駆けていきました
「オイっ!オオカミ!よくもオレを捨てたなっ!」
アジトに飛び込んだタイガだったが……。
「……誰だっけこいつ」
「……さぁ……変な虎猫だよな……」
妙にオオカミの態度が冷たい。タイガはぶち切れた。
「オレを捨てておいてそう言うのかよ!あぁ!どうせそうだよ!オレはどうせ猫だよ!虎柄だよ!えぇえぇ!エロ男だよ!
いつも女の子の事考えてますよ!頭の中で脱がせたりしてますよっ!それがなんだっ!お前らだって同じようなもんじゃねぇかよっ!大体……」
途中で詰まってしまった。滑舌が悪かったんだっけ……?
「第一ボス代理というオレがいながらっ!」
「ボス代理?それは誰のことだ?」
「誰って……オレに決まってんだろ!」
「キミが……?」
「そうだよっ!オレがボス代理……って誰だオレに生意気な口を利くのは!?」
「……オレだよ」
声のしたのはすぐ後ろ。振り返ってみるとタイガと同じ背丈の奴が立っていた。
同じく虎柄の模様で漂う雰囲気も同じ、ただ違うのは色が白と黒の虎柄だった事。
「……ほ、ホワイトタイガー……?」
「そうだ」
「何だお前は……?」
フンと鼻で笑うとそいつは自己紹介を始めた。
「初めまして……かな?タイガ。オレはホランという者だ」
「ホラン……?」
「韓国語で虎の意味。無知なキミにはわからないだろうな」
「あ、あぁ……まぁ……そうだが……ってオイ!」
「今度からオレがボス代理に就任した。そういうわけだ」
「ちょちょ、ちょっと待て!!なんでお前がボス代理に?」
「オオカミ達はキミよりオレが良いって言ってくれてるんだわかったか?」
「なにっ!オイ!お前らぁ!!」
「ホラン様があまりにも優しい方なので……前のボスは覚えてないですね」
「俺も」
「俺も」
「え?前のボスって誰?」
「いたっけ?そんな奴」
このときタイガの中で何かが弾けた。
「お、お、前ら……が……が……ガァァァァァァァッ!!」
それをホランは冷静に止める。
「オイオイ。そうやってすぐ怒って暴れる所が野蛮だな」
「な、何っ!?」
「君はもうお払い箱。とっとと失せろ」
「……フン。いいさいいさ。オレには可愛い可愛いレディ達が居るさ」
「フン。負け惜しみとはな」
「ぐ……。うるさいな……白黒は黙ってろ!」
「白黒だと!白虎を馬鹿にするな!」
「フン。昭和じゃあるまいし、第一な、虎は黄色と黒の斬新さが素敵なんだろうが」
「そこら辺の電柱にはってあるような柄の何処が素敵なんだか……」
「何ぃ!?ホワイトタイガーなんてな!きょうび流行らないんだよ!」
「なんだと!?白虎はな!中国で聖獣としてあがめられてるんだぞ!お前よりも気高い種類なんだからな」
「聖獣だろうがなんだろうが……普通の虎が一番なんだよ」
「白虎こそ一番だね」
「何ぃ!?」
「やるか!?」
「ハイハイハイハイ……タイガ様、ホラン様。おやめください」
喧嘩の仲裁に入ったのは科学科のオオカミ達であった。
「オオカミ!どういうことだ!誰だこいつは!」
「タイガ様のプロットから作った弟みたいなもんですね。そっくりでしょ?」
「弟ぉ!?こいつが!?」
「キミに言われたくないね」
「性格が一緒だと面白くないんでタイガ様よりいい性格になってますよ」
「どこがいい性格何だか……邪悪な顔して……しかも似てねぇ~」
「でも微妙にかぶってますよ。例えば……好きなスポーツは?」
「オレ野球」
「オレサッカー」
「ホラ、かぶってる」
「……」
「じゃぁ好きな食べ物は?」
「オレ刺身」
「オレ焼き魚」
「ホラ、微妙にかぶってる」
「……微妙すぎだろ!!第一こいつ虎じゃねぇじゃん」
「それが、ホワイトタイガーのDNAしかなかった物で、まぁ同じ虎ということで」
「余計な事しやがって……」
「ついでにパンダも作っておきましたが……どうです?」
「いらん。消せ。ついでにこいつも」
「黙れ。能無し虎」
「あぁ!?」
「お互いの信念は同じなんですよね。虎が一番だと」
「フン。こいつが普通の虎だったらもっとよかったよ」
「オレもそう思うね」
オオカミは呆れながら手をパンパンと叩いた
「ハイハイ……というわけでタイガ様よりホラン様がよいので、タイガ様は消えちゃってください」
「何だと!?」
「どこか別の場所へ消えてもいいし、嫌なら我々が消しますが?」
「う……いいよ……もう来ねぇよ……こんな所……」
「あぁ、そうしろ。何も特徴のない虎はどこかに消えろ」
「あぁ、わかったよ!」
「引き止めてもムダだからなぁ!OFFレンジャーに入って正義の味方になってやるからな!」
しーん
「ほんとに行くからな!ホントだぞ!いい奴になっちゃうんだぞ!」
しーん
「…………すこしは声かけろよ……グスッ……」
「……というわけで。OFFレンに入隊したい!よろしく!」
行き場に困ったタイガはOFFレン本部にやってきて急にこんな事を口走った。OFFレンに勝手に入った物のみんなの態度がやけに冷たかった
「……タイガが?」
「悪いかよ」
「第一タイガって色じゃないし」
「ピーターちゃんはどうなるんだよ」
「悪役が恥ずかしくないの?敵に入って」
「もうあいつらはオレを必要としてくれない。それもこれもホランのせいだ。だから復讐してやるのさ。女子もいるし♪」
……冷たかった視線がさらに鋭くなった
「あぁ、嘘嘘。女子は二の次♪」
「……ホントかね~」
「とりあえずこれ見ろよ! タイガースーツ!かっこいいだろ?貯金叩いて買ったんだ~♪」
虎柄のマスクにマントに、スーツ。彼らしくすべて虎柄。マスクは目の部分がクリアイエローとクリアブラックのミックスになっている
「悪いけど私達スーツ着ないんですよ。猫バージョンでは」
「えっ!?着ないの!?」
「っていうかいつも着てないじゃないですか~……」
「しまったしまった~……計算外だぜー!これじゃぁOFFレン失格だ~!」
「とりあえずタイガをまだOFFレンに入れたと決めたわけではありません」
「え?そうなの?」
「ですから、適正試験を受けてもらいます」
「……わかった」
怒り出すかと思いきや意外とすんなり了承したので安心した。
多分ここしかもう頼れる所がないからだろう。寂しがりやだし張り切って準備体操なんぞをやっている。
「では、以下の質問に正直に答えてください」
「再びわかった」
「子供が飴を落として泣いています。どうする?」
「ガキに興味ねー」
「……女の子が道に迷っています。どうする?」
「年齢によってはお付き合いしたい」
「……正義とは何だと思いますか?」
「悪の反対」
グリーンが頭を抱えて机に伏せた
「……ど、どうなんだよ合格なんだろ?オイ」
「と、とりあえず。様子を見ましょう……ね」
ここで不合格にしても何をされるかわからない。様子を見てそこから決めて行こうと思った。
せっかくだから色々と雑用をやってもらおうなど色々と活用方法はあるし。
「イェ~イ!!これでオレも正義の味方の仲間入りだな~♪」
「そ、そうですね……」
いささか不安が残るがこれで彼は一応隊員となった。
彼はとても嬉しそうで次に部屋はどこだ?としつこく聞いてきた。部屋といっても空きがないのでレッドの部屋を使わせる事にした。
「ふ~ん。これがレッドの部屋ねぇ……」
隊長から降りた時の当時のまま残っているレッドの部屋。
多少は片付いているがまだ荷物が少し残ったままだ。
「特撮グッズが多いですけど。片付けときますよ」
「オレの好みに模様替えしても良いのか?」
「えぇ。かまいませんよ」
「じゃぁ、ちょっとホームセンター行って来る」
「あ、はいはい。その間に片付けときますよ」
タイガが出かけていった後、早速部屋の片づけをすることにした。
良くこんなに集めたもんだと今更ながら思う。段ボール箱を開けると古臭い匂いがした。
中身を漁っていくとビデオテープが出てきた。
「えーと。ウルトラセブン12話&怪奇大作戦24話高画質?なんだこのビデオは?これはいらないな」
グリーンはそれが特撮マニアの間では幻となっている貴重な話だとは知らなかった……。さらに漁っていくといくつか古い人形を発掘した
「ポピー製ロビンちゃん超合金?発売1975年って……こんな古いのいりませんよねこれ」
今度もグリーンは現在マニアの間では30万円前後で取引されている貴重な人形だとは気づかなかった
「さてと、結構片付きましたし。あとはタイガに任せましょう……」
「そうしてもらえるとありがたいな」
彼はもう帰っていた。
「じゃぁ、後はオレがやるから出てけ出てけ!」
せっかく片付けてやったのに乱暴に追い出された。とりあえず「家具の位置は動かさないように」といっておいたが少し心配だ……。
数時間後。レッドの部屋だった場所だとは思えないような内装になったタイガの部屋。
壁一面が虎模様。床には虎のカーペット。目がチカチカするような明るい黄色と黒だらけの部屋にタイガは1人たたずんでいた
彼は内心ものすごーーーく。ショックを受けていた。
「前のボスは忘れちゃいましたね」
「タイガタイガ……そんな奴いましたっけねぇ……」
「あぁ、いたような気がするなぁ……あの汚水まみれの奴だよな?」
ショックのあまりあることないこと思い出された
「……いっぱい可愛がってやったのに……。犬は3日飼ったら恩を忘れないんだぞ……グス」
そんな時あいつの声がタイガの頭に響いた。
『……ただの虎は白虎には勝てないのさ……』
「……! そんなことないっ!!普通の虎の実力を思い知らせてやるからな!!」
彼が初めて経験した挫折はだんだん復讐へと変わっていったのであった……。
……だが、彼はまだ自分が物凄く不利な立場にあるのをまだ自覚していなかった。