第17話
『バレンタインと総入れ歯』
(挿絵:イエロー隊員)
今日は12月14日。世間ではこの日をバレンタインデーと呼ぶ。
女が好きな男にチョコレートをあげるだけというだけのなんでもない日なのだが。
恋愛がらみの祝日には執着するのが女の子。
例にもれずOFFレン内でもバレンタインデーはやってくる。
違う部屋で男子が集会していることを女子は知らない……。
もちろん「チョコを一番もらえるのは誰か?」という話題だ。
「今年はもらえるかなぁ。チョコ」
「本命は厳しい所だけど……。義理なら確実だね」
「そうっすね」
「ブルーはホワイトからもらえるじゃん」
「オレ同性愛者じゃないんで……」
「……ホワイトだよ?」
「あ、なんだ。オレンジって聞こえた……オレはホワイトを普通の仲間としか……」
「ま、それはいいけどさ。一番は誰だろうね」
「……隊長だな」
「僕もそう思う~♪」
話がだんだん固まり始めると視線が1人に集中してくる
「……私ですか?」
我らが隊長グリーンだ。
「隊長だから義理は100%貰えるね」
「そんなわけないですよ。私はチョコなんて嫌いです」
「チョコ欲しくないの……?」
「要りません。バレンタインデーなんて……菓子メーカーと歯医者の暗躍日なんですよ」
「冷めてるなぁ……緑色なのに」
「色は関係ないでしょう。とにかく私はチョコなんて要りません」
グリーンはさっと言い切ると新聞に目を通す
「やめとけやめとけ。万年0個のひがみなんだよ」
グリーンの方向から声が聞こえた。
グリーンが声色を変えているわけではない。グリーンの後ろに1人いるのだ。
「万年0個とは……言ってくれますね。タイガ」
そいつはつい先日。ボス代理の座を剥奪され、部下には見放され。泣く泣くこの団体に入ってきた。ちょっと性欲の強い虎少年。タイガである。
「だって、お前の事だし。今まで1個も貰ってないんだろ?ダサいもんなお前」
「ムッ……それはどうですかね。タイガだってもらえない可能性もあるんですよ。ダサいですから」
痛いところを指摘されていったんタイガは言葉を詰まらせるが再度毒舌攻撃を仕掛ける
「ふ、フン。オレが0個なわけないさ。お前らよりカッコいいもんな」

「美的感覚が狂ってるんじゃないんですか」
「カチン」
わざわざ自分の精神の状態を言葉で表現していると思っていると、彼の様子がおかしくなっているのに気づく。
手足が小さく揺れてると思いきや時折「ガッ……ウ」と呟く声が聞こえる。
これは注意報を通り越して【警報】の域だ。そう。彼は怒りが頂点に達すると野生的に覚醒するのだ
周りがグリーンに謝罪しろとでも言いたそうな目で見てくる。彼は非常に不服だが。後の被害を考えるとそうするしかなかった。
「わかりましたわかりました。私の失言でした」
「……わかればいいんだ」
あっさりしたものだとグリーンは呆れ返ってしまった。そんなグリーンとは裏腹にタイガは勝手に話を進めていく
「オレはOFFレンの全員にチョコをあげるんだぜ」
「え?タイガホワイトデーじゃないんだよ?今日」
「……馬鹿だな~。外国では恋人同士がプレゼントを交換するんだ。わかったか?奇形銀髪」
「き、奇形銀髪……また言われた……」
「オレは、そんな風習に少しアレンジを加えてこの企画を生み出した!」
「……?」
「女子からチョコを貰う!オレがチョコをあげる!女子喜ぶ!オレ嬉しい!最高の企画だぜ!」
イマイチ彼の脳内の光景が見えてこなかった。とにかく。本命はすべて自分が貰う物だと信じているのだろう。
その純真さが端から見ていて妙に痛々しかった
「よぉし!早速チョコレートを特注で作ってもらうぜ!じゃぁな!」
彼は足早に本部を出て行った。まだ正義の味方として自覚がない。
そんな本部をモニターで見ていた者がいた。
「フン。バレンタインデーか。下らん行事だ」
タイガを蹴落としてボス代理2代目の座に輝いたホランであった
「ホラン様はあいつみたいに女性中毒者でなくてよかったです」
「フン。当たり前だろ。誰が女なんか……」
するとオオカミはそっとOFFレンジャーの写っている写真をホランに差し出すと、ホランは「フン」と鼻で笑って写真をじーっと見つめた
いくらタイガと違っているといえども元々タイガの方割れのようなものだからちょっと心配だった。
「……いかがですか?ホラン様」
「……可愛い……」
ホラやっぱりという雰囲気がオオカミの中で満ちてくる。
でも、雰囲気的にはタイガほどではなさそうだ。
「ホラン様ー?」
「……えっ!あぁ……なんでもない!オレは何も言ってないぞ!」
「……それより例の計画を……」
「れ、例の計画……そ、そうか……手は回したのか?」
「はい。しっかりと」
「……そうか。では、オレも出かけるとしよう」
「……どちらへ?」
ホランは無言で出て行った。残された物にとっては以前の長の二の舞にならない事を祈るのみ
しかし研究員が不思議そうにつぶやいた。
「……変だな……女好きにはしなかったはずなんだが……」
【某大手菓子メーカー】
タイガは某菓子メーカーへやってきた。どっかの小さな会社や手作りでは全然ダメなのだ。
彼は軽く警備員を蹴散らすと社長室へ歩いていった
「~♪~♪~♪」
警備員に出会うたび彼の後には屍。いや、人の道ができて行く。
彼の実力の前ではザコに等しい存在で鼻歌が歌えるほどの余裕が出来た。

「……社長室。ここか」
あっさり社長室を見つけるとノックもせずにタイガは入って行った。
中には社長の他に少し社長よりも若い4,50歳ほどの男が立っていた。
「……ふむふむ。成る程。それはいい考えです」
「でしょ?我々も……」
「……オイ。お前ら」
話に夢中で全然気づいてくれない
「オイッ!!!!」
……と叫ぶとようやく気づいてくれたようで、タイガを2人はマジマジと見つめた。
「……何だねキミは」
「お、オレは……」
「子供が入ってくる場所じゃないだろう。キミ。国家権力舐めているのかね」
「お、オレは……その……」
「学校は?家は?まさか……非行少年かね?」
「お、オレ……」
「目上の人には僕だろ!敬語は!?学校で習わないのか!?」
なんだか見えないものすごいオーラにタイガは押されていた。これが重役と平民の違いなのだろうか。
やっと言葉が出たのは少し落ち着いてからの事。
「お、オレはっ!チョ……チョコを……作ってほしいんだっ!!」
この台詞を言うだけでなんであんなに時間がかかったのかすこし不思議に感じた。2人は無表情のままタイガを睨んでいた
「う、うぅ……」
「チョコってキミ。女の子かね?」
「お、オレは……」
「僕!」
「ぼ……オレは。男だけ……ど」
何が何でも敬語は使いたくないらしい。
「……誰にあげるの?」
「お、オレの好きな女の子達……」
「その子達かわいい?歳は?キミくらいかい?」
以外に女子の話に食いついてきた。
これはチャンスと思ったのかタイガは写真を取り出した。
「こ、この子達がオレの可愛い天使達♪」
写真を取り出したかと思うと2人にさっと取り上げられてしまった。じーっと何度も確認すると、
「……合格だな」
とだけつぶやいた。
「それで?どんなチョコを作りたいのかね?」
「作ってくれるのか!?」
「あぁ、まぁ……ね」
不敵な笑みに少々不安を抱いたが今のタイガにそんなことを気にする余裕はなかった
「え、えっとぉ。この子達の等身大チョコ……。を。む、無理かな……?」
「等身大ってつまりこの子らを?」
「そう! 金はどれくらいいるんだ?」
「いや、特別サービスで無料にしてあげよう」
「無料!?ラッキー♪」
「ただし……代わりに彼女達の住所教えてくれるかい?」
「うん。OK!」
……。というわけで。何とかチョコを作ってもらえる事になった。
しかし、彼らのバックに黒幕がいる事をタイガは知らない。
「……早速来たか。タイガ」
そしていよいよ来るべき2月14日。
男子はそわそわしてロビーを歩き回る。
「あー。あー。義理かなぁ。本命かなぁ」
「残念だな。お前らのチョコは全部オレがいただきなんだ」
タイガは机に頬杖をつきながら鼻歌を歌っていた。
「……過去の話の流れで行くとタイガは最後に1個ももらえないって言う落ちになるんですよ」
グリーンがタイガの後ろで皮肉を呟く。
「フン。ほざいてろ」
しかし、今の彼に皮肉は通じない。彼には秘策があるのだ。そう、特製チョコレート言う名の味方が。
グリーンはそんな余裕のタイガを見て少し焦ってしまったよく考えれば最近の流れはタイガに有利な方向へ行ってしまっている……。
ひょっとしたら……筆者はグリーンを不利にする可能性もないわけではない。
「あー。女子達まだかなぁ~♪」
タイガの鼻歌が聞こえるとさらにグリーンは焦り始める。
いくら隊長とはいえ……。今の女子達に年下好みは少なそうである。
自然と部屋の隅っこで愚痴ばかり……。
「だからバレンタインは嫌いなんですよ……フフ。チョコがなんですか。あんなものなんてなくてもね。僕は生きていけるんですよ。上を向いて歩けるんですよ。それをなんですか。チョコチョコって。本命?義理?「大穴」はどこへ行ったんだっていう話ですよ。 チョコでね。恋愛できるんだったら苦労しないんですよ。所詮苦い物の固体に砂糖を混ぜただけですよ。第一バレンタインがきっかけで結ばれたカップルなんて聞いた事ないですよ。もし結ばれているんなら世界中夫婦同士ですよ。所詮夢です。幻です。虚像の世界なんですよ。ハッ……。まさかこの世界は実は私がいてはいけない世界なんじゃ……なんてことないですよね。フフ。ちょっと言ってみたかっただけなんです。それにホワイトデーだなんて。誰がくれてやりますか。えぇ。そうですとも どっかの菓子会社が儲ける事しか考えないで作った心もないような物には愛はないんですよ それになんですか。「女子達まだかな……?」馬鹿ですか。オイそこの虎。 それよりこっち来なさいよ。性根叩きなおしますから。180度通り越して360度改善しますから。もうね、私チョコなんていくらでもあげますから。帰ってくださいよ。早く。眼中からいなくなってくださいよ。アウト・オブ・眼中ですから。キミはえぇ。私より年上だからって。少しHな事知ってるからって……。グス、あ、しまった柄にもなく泣いてしまいましたね。フフ。らしくないですよね。ハイ まぁね。そんなことはどうでもいいんですよ。バレンタインデーとかチョコとかは。そんなものこの薄汚れた日常が生み出した一時の幻に過ぎないんですよ。 本当に思いを伝えるんならですね。「和歌」これですよ。 5・7・5・7・7という短い文章の中に以下に思いを込めるか。愛ってそういうもんじゃないんですか。それをチョコあげただけで恋愛実ったとか……「ありえない」っていうか【道徳的にありえない】 まぁ、いいですよ。夢でも見てれば……えぇ。ブツブツ……」

実際いろいろと悪口を言っているものの。チョコはもらえるものなら欲しいという男性の悲しい性が働いているのが悲しかった。
そんなグリーンをよそ目に男子達は騒いでいた。他人より我が身が可愛いとはよく言った物である。
「……女子達遅いね」
「もう2時間立ったのに……ね」
「タイガもその辺まで見に行ったしね。ついでにチョコも貰ってくるとか」
「グリーンこっち呼ぼうよ」
「いや、今はそっとしておこうよ……オレンジ」
「そうそう。とりあえずグリーンが元気になってから外行こうよ」
その頃タイガは市内を3周して来ても女子を見つけることは出来ずしぶしぶチョコを取りに菓子メーカーへと歩いていった
2週目辺りまで自分宛のチョコをたくさん買っているんだという根も葉もない期待を抱いていたせいで労力も底を尽きていた。
「チョコかってくれてないのかな~……まさか手作りとかかな……」
小さな希望はしだいに願望へと変わって行った頃……。
菓子メーカーの入り口に立つ警備員は、タイガの姿を見るなり目をそらして何処かへ行ってしまう。
社長室の前まで来ると再び声が聞こえてくる。
「……やっと捕まえましたぞ。ホラン様」
今一番聞きたくない奴の名前が出た瞬間。全身の血管が一気に拡がる。
「何故あいつが?」「何故社長と?」などという疑問より先に「こいつが憎い」という感情が先走ってしまう。
「……そうか。あとはお前の好きにしていいぞ」
「では、そういうことで……」
「ホランッ!!!」
感情が激しいあまりに無鉄砲にも中の状況を把握しないまま勢いで入ってしまう。
しかし、入って正解。部屋の中では縛られて眠っている女子隊員。怪しげな機械。ホラン。怪しげな格好の社長と付き添いの男
しかも社長の手にはでっかいペンチ。

「タイガ……思ったより早いじゃないか」
「……ちょ、ちょっと待て……状況整理するから」
「まぁ、いいだろう。お前も道連れに」
「だから待てってば!!人の言う事聞けよ!モノクロ男!」
「……わかったが……頭の回転が遅いなキミは……。いっとくがこれは白虎柄だぞ白虎」
頭の回転の遅い(悪い)タイガはこの状況を把握するのに5分かかった。
ギャップの違いを急に感じると人間はこのような状況によく陥るらしい。
「よし、わかった!これはつまりSMごっこな訳だな」
「……違う」
ホランがやれやれといった表情でタイガを見下す。
タイガはこの目が非常に嫌い。
「……こいつらはオレの部下だ」
「部下?大手菓子メーカーの社長が?」
「フン。キミが女の子を追っかけまわしている間にな。いろいろあったんだよ」
「……それはいいが。何をしている最中なんだ?これは女子達に何をする気だ?」
ホランは再度呆れた目でタイガを見つめる。
いい加減そろそろ切れてもいい頃だろうかと彼はふと思う。
「いいか?つまりこれは作戦な訳だ」
「さく……せん?」
「そう、OFFレンを倒すためのな」
「そ、それはオレの仕事だぞっ!!」
タイガが赤い顔をして大声で叫んだ。
「フン。……悪者でありながら正義の味方に寝返った奴などにそんな資格はない」
弱い所を突かれてタイガは何も返す言葉がなかった。
「うぅ……」
「まぁ、作戦くらいは教えてやろう。寝返った裏切り者にな」
「う、うるさいっ!!」

「今回の作戦は、内部から崩す作戦だ」
「ふ、フン。そんな計画何度もオレが立てたさ」
「あぁ、まぁ、そうかもしれないが。オレはキミとは違う。それに、こっちにはこれがある」」
ふと見ると初期数話にしか出てこなかったタイガの取扱説明書がホランの手に握られていた。
オオカミの研究員が製作したこの本はどうやらまだあったらしい……。
これには弱点から行動パターンなどすべてが記載されている。説明書というより「研究本」に近い。
「……キミがOFFレンに入ってくれたおかげで以前より10倍は内部がもろくなっただろうな」
「そ、そんな物なくたって!平気だ!!」
「……ではこの本に従って作戦を実行した結果。女子隊員の情報を手に入れられたのは何故かな?」
「そ、それは……」
もうはや何も言うことがなかった。
さすがオレをボスの座から突き落とした奴だ……と少しでも体で感じるのが悲しい
「では、キミの愚かさが解かった様だし。もう計画を実行してもいいかな?」
「計画……だと?計画ってどういうことだ!?」
「……だからさっき話したじゃないか。頭の回転がホントに悪いな」
もう悔しさのあまり、何も言う気になれない。見も心もボロボロとはこのことだ。先ほどから変わることのない軽蔑の目は体に何度も突き刺さる。
「こいつらは……。女子隊員を捕まえて総入れ歯にするんだ。オレはそこまでしなくてもいいといったんだが」
ホランは呆れたせいか全て話してくれた。
「そ、総入れ歯?」
「ここの社長とこの男……。秘書は総入れ歯フェチなんだ。総入れ歯にしてやるから協力しろとな」
「そーいればふぇち……」
「要するに、総入れ歯マニアだ。まぁ、女子が総入れ歯になれば精神的ショックで二度と立ち直れないだろうがな」
「マニアですって!?失礼な!!」
謎の男……秘書がハスキーな声で叫んだ。
「いいですか!入れ歯は何者にもとらわれない自由な象徴ですぞ」
「我々はそんな素晴らしさを伝える為に~!」
声がかすれるほど大きな声で叫んでいるので耳がキンキンしてきた。
「あぁ……ハイハイ。わかったわかったもういいぞ」
「そ、そんなこと!!歯科医師会が許しても!オレが許さないぞ!!」
とりあえずかっこをつけてみた。
「……やれ」
彼を早速無視したままホランは2人に命じる銀色に光るペンチが女子達のダイヤモンドのような歯にせまる。
タイガは2人に飛びかかるも女子を盾にされている為手出しが出来ない。
「あー!どうにかしないとみんなが!!でもオレ助けられないし~!!!」
イライラしながら頭を抱え込んでいるタイガを見ながら、ホランにはなにやら優越感を覚え始めていた。
今の自分はこいつよりも上なのだ。野生動物の感覚にビンビン反応する。
「……安心しろ。抜いた歯はチョコにでもしてお前にくれてやる」
「……!」
ふと、優越感で舞い上がってしまったホランは、説明書の「イライラ時の追い討ち禁止」の項目を忘れてしまっていた。
それに気づいたのは、歯を食いしばったまま唸っているタイガに気づいたときだった
「いい加減にしろよ……ホラン」
白目をむいていて凶暴な顔つきになっているタイガがふと呟いた。今まで感じなかった恐怖心が彼に芽生える。
凶暴化したこいつに勝てる自信は彼にないのだ。
「お、オイ……!」
気が付いたときは時すでに遅し。
ジリジリと距離我迫る。
「ウガァァァァッ!!」
ホランに飛び掛ると我を忘れて後ろの2人にも追突する。
女子隊員はまだ眠っている。タイガはまだ暴れている。今までの鬱憤が一気に爆発したのだろうか。
見る見るうちに部屋が荒れていく……野生という物はこんなに強烈なのだろうか
「タイガッ!」
OFFレンの男共が部屋に入ってきたのは女子以外の奴がボロボロになってからだった。
「……困りましたね。OFFレンボールがメルマガ小説初登場かと期待してたんですけど」
「でもまぁ、一応悪者の計画は阻止したみたいだし……ね」
「そうですねー……。タイガも正義の味方らしいことしてくれましたし」
「ちょっと手荒かったけどね^^;」
「でも、私たちが総入れ歯になる事もなかったしよかったよかった」
それから女子たちも縄を解いて、変人男も処分、残ったのは鎖につながれたタイガと、傷ついているホランのみ
「ガオーガオー!!」
「はいはい。分かりましたよタイガ。こやつをどうにかしないといけませんね」
ホランは黙ったままグリーンを見つめていた。
「では……。我々の勝利で宜しいですね?」
「……」
グリーンの顔を見つめたままホランは微動だにしない。何だか嫌な予感がするのは気のせいだろうか
「……何か……顔についてますか?」
「い、いや……そうじゃなくて……」
「?」
「あ、あの……。オレ……と付き合っていただけませんか?」
「……は?」
【グリーンは石化した】
「貴方と……是非……お付き合いしたいです」
ホランの目は本気だった。

「……こいつって……ホモ?」
「いや、ショタだろ……」
「……どうでもいいけどグリーン石化しちゃったよ」
「男からの告白なんて経験ないんだろうね」
ふと目をやるとグリーンの体を赤い顔をしてなでているホラン。
タイガと違って恋愛に凄く積極的ではないようだが、方向がまずい。
「……とにかく解決だね」
「あぁ……」
(2月14日 PM 7:00)
本部に帰ると早速タイガはでっかいチョコレートボックスを持ってくる。
「さー。ここに入れていいよ♪」
しかし、誘拐されていた為にチョコレートも用意していない&誰にもあげる気はなかったらしかったが、
タイガを中心とする男子達の希望により。とりあえずチョコレートをみんなで作る事となった。
グリーンも批判的なことを言わずに、みんなで作ってみんなで食べて……彼にも納得の結末となったようだ。
そして翌日。
グリーンの等身大型チョコレートが届けられた。豪華な包み紙に一時は喜んだ物の送り主はホラン。
グリーンはとても同封されたカードを読むことは出来なかった。
「だから私は……バレンタインデーは嫌いなんですよ……」