第26話

『某国のエージェント』

(挿絵:ピーターパン隊員)

大阪府、尾布市、通天タワーの下。
そこには、謎の秘密結社ぐるぐる戦隊OFFレンジャーが大阪を護る為に優秀な頭脳で活動している。
彼らは全員10代だが、世界有数の頭脳の持ち主であり、その資金源は国民の税金の半分を使用しているとの事。
ここ最近起きている人質事件もすべてこの団体の仕業である。何故、このような頭脳の持ち主が集まっているかは不明。
しかし、この団体の優秀な頭脳の源は日本に古来から伝わる特殊な方法によるものだと判明されている。

これは某国に記載されているOFFレンジャーに関する調査書類の一部分である。
間違いが多々あるものの、某国ではしっかりとその内容が信じられていた。

「……そこで、キミにお願いしたいのだが」

彼は某国の大統領。そして、現在日本へと派遣するエージェントに指令を言い渡している最中なのだ。

「日本には、このOFFレンジャーという素晴らしい団体がいる」
「……はい」

エージェントは静かに答えた。
今まで、このような国に関する調査をいくつか行ってきたが、日本という国には彼はまだ行ったことは無い。
少なくとも、彼の頭脳の中の日本はサムライやゲイシャやハラキリなどといった米国的なイメージが浮かんでいた。

「……そこでだ。例のものを彼らにお願いしたいのだ」

エージェントは静かにうなづいて部屋を後にした。
大統領は消して彼が理解したかどうかを疑わない。それはもちろん、今までの実績にあるからだった。
今回もきっと、いい結果をもたらしてくれるだろうと……。

大阪府、尾布市、通天閣の下。
そこには、正義の団体ぐるぐる戦隊OFFレンジャーが大阪を初め、日本を守る為活動している。
彼らは全員10代だが、個性的な面々で構成されており、一応資金源は自費。
ここ最近起きた某人質事件解決もこの団体の成果。何故、このような事をしているかはよくわかっていない。

これはOFFレンジャーの資料の最初の項目部分である。
違いが多少あるもののOFFレン内ではしっかりとその内容が当然となっていた

バタンと書類のファイルをグリーンは閉じて考えた。最近どうもヒーローらしい活躍をしていない。全然。全然だ。

「違う!こんなの正義の味方じゃな~い!!!」

床の上でグリーンは転げまわった。
結成当時のあの輝かしいバトルは何処へ行ってしまったのだろうか……。
そう、あの頃は、世界征服を狙う秘密結社をちぎっては投げちぎっては投げ……だったと思う。

「……ハッ!そうです。タイガのせいです……あれが来てからどうも調子が……殺りますか!?私。フフ……」

グリーンは床の上に体育座りをしたまま動かなくなった。隊長様ご乱心の原因は、タイガから差し入れのジュースに似せた焼酎によるものだった。

酔いの早い隊長はすっかり倒れてしまった。

「……悪いなグリーン」

実は、グリーン同様タイガも悪人らしく行動したいと自覚がでてきたのだったりする。
早速手始めに、グリーンと友好関係を保とうと近づき、そして以前実践した隊長入れ替わり計画を再び実行した。

「……さてと。これでよし~っと」

適当に自分の体を緑に染めてグリーンを虎柄に染め、そばの柱に縛っておいた。
これで計画の80%は完了だ。

「み、みなさん~!来てくれ~!……じゃなかった……来てください!」

ぞろぞろと隊員がめんどくさそうに会議室にやってくる。計画は順調に進んでいるせいか、おもわず口元が緩んでくる……。

「なんですか?急に」
「や、やっとタイガを捕まえたぜですよ!」

グリーンの指差す方向には柱に縛り付けられたまま眠っているタイガが居た。

「ZZZZZZ……」

確かに、タイガらしき人物が柱に縛られていたが、なんだか虎柄がいい加減なタッチになっている気がした。
それにグリーンも何だか……虎柄がうっすらと見えるような……。

「とにかく!こうしてオレがタイガを捕まえたわけだから♪始末しちゃおうか?」

グリーンは嬉しそうに怪しげなロープを持ってきた。

「……ちょっと松の廊下ですよグリーン」
「な、何?イエローちゃん。……古いネタだね」
「……私にはタイガよりもグリーンが気になりますね……」

イエローがグリーンの体をじろじとと舐めまわす様に見始めた。
予想外もしなかった事態にグリーンは焦った
「ど、どこもおかしく無いだろ?イエローちゃん……オレのどこが怪しいんだよ~w」
「そのどことなく違う喋り方……態度……」
「(ば、ばれたかな……!?)」
「ついに男としての自覚がでてきたのですね。うーん感心感心。どうも女々しい感じがしてたんですが男らしくなりましたねグリーン」

挿絵

イエローはグリーンの肩をポンポンと叩いた。

「あ、私からは以上です」

グリーンは流れ出る汗をさっとふきとると再びロープを構えた。
いよいよこの手でタイガをやっつける事が出来る。グリーンはついに彼の首に縄をかけた。

「さらばだ……タイガ」

なんだか自分に別れを言うのは変な感じがしたが、これで見事入れ替わり作戦は成功する。
後は、グリーンに成りすましたままOFFレンを潰していけばいいし、女子ともイチャイチャできる一石二鳥というわけだ。

「では……!!」

『…………ピンポーン』
いよいよという時、チャイムが部屋中に鳴り響いた。
その音の為タイガは目を覚ましてしまった。

「ぇぁ?ここは……」
「(まずい……)目覚めたか!タイガ」
「はぃ?」

タイガは不思議な顔をしてグリーンの後ろに立っている隊員らを見る。その視線を横切ってグリーンは言葉を続けた。

「わ、忘れたのか!?お前は本部に女子の下着を盗もうとして入ってオレに捕まったんだぞ!」
「……オレにって……私タイガなんかじゃないですし。下着ドロなんてセコイ真似……」
「よ、よく見ろ!自分の体を! 頭を打ったショックで混乱してるんだ!」

タイガはまじまじと自分の体を見つめると確かに黄色と黒の縞々模様が施されていた。
しかし、どうも縞々模様がいい加減な気がする。

「……ど、どうだ!?思い出したか……!?」
「(まさか……今まで自分はグリーンだと思っていたのに……実はタイガだったなんて……)」

タイガは自分の腕を見ながらじっと考え込んでいた。後一押し……一押し……。

ピンポーン……ピンポーン……

「チャイム鳴ってますよグリーン」
「……わかったよ」

タイガ消滅作戦を一時中断してグリーンは玄関へと向った。
玄関のドアを見るなり……赤いレーザーがぐるんぐるんと突き抜けて向かいの壁を照らしていた。

「……誰だ?」
「……ドアを開けてもらわない限りは名乗れません」
「最もな答え……。よし、あけてやる」

グリーンがドアを開けると、怪しげなサングラスをかけたグリーンよりも背の高い男が立っていた。
スーツをぴしっと着付けていて、どこかの組織のエージェントといった所か……。

「……お邪魔します」

男はグリーンの有無も言わずに部屋に上がりこんでロビーへと入っていった。入るなり男は床に手を突き土下座の格好をし始めた。

「私は某国のエージェント……是非、貴方様方に我が国を救って戴きたい」

突然の出来事に一同は困惑した物の何やらいつもと違う雰囲気で、カッコいい活躍が出来そうだと予感した。
そう、今まで夢見ていた『正義の味方』らしく……。

「な、何の御用ですかっ!?」

何故かタイガが興奮して男を問い詰めた。男はタイガの声に耳を傾けずに頭を下げたまま話し始めた。

「……我が某国は現在食糧危機の危険がありまして……」
「某国ってどこですか?」

ピンクが何気なく質問した。

「……某国は某国です」
「はぁ」
「では続けますね。そして、噂に聞いた日本古来から伝わる不思議なアイテムがその危機を救えると……」

日本古来のアイテム。と言われても、せいぜい聞いたことがあるのは打出の小槌とか鉞とかそんな物。
食糧危機を救うアイテムがあるかいささか不安だがそこは突っ込まない事にした。

「……そして貴方様方OFFレンジャーの事を聞き、こうしてお願いをしにやって来ました。どうかアイテムをご一緒にお探しください」
「……わっ!わかりました!」

声を裏がえさせながらブルーは答えた。心なしか他の隊員にもなんだか熱気が窺える。

「……で、そのアイテムとは?」
「はぁ。なんでもビスケットを入れて上から叩くと2つになったり3つになったりするポケットだそうで」
「……?」
「日本の民謡にもあるそうじゃないですか。ポケットを叩くとビスケットが2つ!」
「不思議なポケット……?」
「そうです!それを是非探していただきたいのです」

……どの隊員も動揺を隠せなかった。

「あのー……」
「場所は大丈夫です。こちらが用意した地図がありますから」

エージェントは古びた地図を取り出してみんなに見えるように広げた。
そこには、真上の通天閣らしき塔を中心に、ここら一体が描かれていた。

「この……謎の洋館に×がありますよね?」

通天閣からずーっと指をそらしていった所に赤い×印が確かにあった。しかし、どうもその周辺は大阪らしくない雰囲気なのが地図上でもわかる。
第一この周辺に洋館などあっただろうか?

「……我々の発掘チームが古文書の解読の結果、こちらに例のポケットがあるそうで」
「自分でお探しには行かないんですか?場所までわかっていて」
「いやはや……これは痛い所を。 実は、この洋館はかなり広いものでして人海戦術といいますか多い方が心強いのですよ」
「そういうもんですかねー……」
「はい、そうなんですよ」

エージェントは地図を慣れた手つきで懐にしまいこむと、再び深く頭を下げてもう一度頼み込んだ。

「……どうかわが国の為に。お礼はいくらでもお支払いいたします」

特に戦隊らしくない活動だ。グリーンも乗り気ではない。でも……。

「探し物かぁ……オレの範囲外なんだけどぉ……お礼がねぇ。お礼」
「子供だし、乗り気でも無いんですけど……御礼を出されてはねぇ……ちなみに某国の収入源は何?」

シルバーが突っ込んだ質問をした。なるほど、某国にゴロゴロしている物を奪……じゃなくて頂こうと言う事だ。
エージェントは懐から小さな小瓶、小さなダイヤを取り出して机の上に並べた。

「は、石油とダイヤモンドなどの鉱物でございます」
「となると……某国とはサウジアラビアとかアフリカとかですね?」
「いえ、全然違いますな。某国ですから」

挿絵

「はぁ……。でもダイヤと石油ですか……ん?そんな国が食料難なんて……」
「それではみなさん。早速探しに行きましょう」

エージェントはシルバーの言葉をさえぎるように大声で一同に呼びかけた。グリーンもダイヤモンドを見てから浮かれている。

「行こうぜ!早く行こうぜ~!!」
「では、ご一緒に行きましょう」

なんとなく引っかかった物の、シルバー達もグリーンたちの後を追った。タイガは1人無意味な自問自答を繰り返していた。

「(私が……タイガ。いやタイガだからオレ?いやでもうーん……不思議ですねっていうか不思議だぜ?いやそれよりも……)」







蜘蛛の巣、カラス、昼間なのに暗い、の不気味3要素をパーフェクトにそろえた洋館がそこにあった。
窓を見るとガイコツの1つでもありそうでいい気はしない。

「さ、いきましょうか」

エージェントは怖さを全く見せず黙々と洋館の中へと入っていった。
中は確かに広く、正面には3つの階段があり、それぞれ上、右、左と別れている。階段の後ろを覗いてみてもパッと見部屋数は左右5部屋ずつある。

「では、見つけたらここに集合と言う事で」
「ちょっと待ってくださいよ。こんなに広いんじゃ1日ではとても……」

エージェントは黒いレシーバーのような物をグリーンに差し出した
「あ!?なんだこれは!オレがこれをどうするんだ!?」
「金属探知機ですよ」
「金属探知機ぃ?」

エージェントはスイッチを入れてグリーンに金属探知機を手渡した。
探知機特有のキーンという小さな音がし始めた。

「不思議なポケットは金属の箱の中にしまわれているそうです。では、ご健闘を祈ります」
「一緒に行こうぜ!パープルちゃん♪」

エージェントが去り、他の隊員も一通り去った後グリーンはパープルに声をあけた。

「いいですよー♪」

しかし、返事をしたのは横にいたシェンナ隊員だった。

「え、違……オレはパープルちゃんに……」

グリーンの手はしっかりとシェンナの肩の上に乗っていた。

「じゃぁ、私はイエローと行くから、シェンナはグリーンとね」
「はーい♪」
「え……ぱ、パープル……ちゃん……」

つまらない奴と一緒になってしまった……。とグリーンは思った。
シェンナのことが嫌いではないのだが、魅力や性格などが幼すぎて逆に惹かれないのだ。

「(でも……純真無垢な女の子を……なんていいかもなーw)」
「今Hな事考えてますねー。グリーン隊長」
「ん?いや別にーw」
「だってグリーン隊長。タイガくんみたいな顔してますもんねー」

……抜けているようで案外鋭い。

「にゃははーw シェンナちゃんも変な奴だな~wオレがタイガなわけないじゃ~ん♪」
「そうですね。喋り方がタイガくんみたいでうっすら虎縞が見えてもグリーンはグリーンですよね」
「……まぁ探しに行くか!」

シェンナの頭にヘッドライトを付けてグリーンは金属探知機片手に真ん中の階段を登っていった。
他の隊員がいるにもかかわらず聞き耳を立てても屋敷内はひっそりとしていた。せっかくだからこの怖さを紛らわそうと、シェンナと話をすることにした。

「シェンナちゃん?何か面白い話無い?」
「ありますよー♪ あのですね。シェンナがバーッと!そんでもってワーッとですねぇ」
「アハハ……そうなんだー」
「それで、シェンナがびっくりしてるとそこにもグワーって!凄いよねー」
「……そうだねぇ」

ここで急にピピッと金属探知機が3番目の部屋の前で反応を見せた。
ドアノブに反応したことは数回あったが、この反応の凄まじさは尋常ではない
「お腹すいたんですかねー」

……このボケも何度聞いた事だろう。

「この部屋だな!?ベッドルームか……なんかそそられる響きだぜ♪」
「そんなに眠いんですか~?」
「違う違うw……そうだシェンナちゃん。オレとこの部屋で大人の勉強でもしない~?w」
「シェンナ。大人になっても勉強するの嫌ですー」
「……そうだよな。そういうやつなんだよなお前は」

興奮を冷まされたグリーンは部屋に入った。中にはシングルベッドが1つ中央にあるだけであとは何も無い部屋だった。

「ふかふかですー♪」

早速ベッドを見つけたシェンナが上で飛び跳ねる。
しかし、シェンナが布団の上に落下する度に、ホコリがベッドの下から吹き上げてくる。

「ゴホゴホ……変だな……まさかベッドがポケットなわけないし……」
「ひょっとして、ベッドの中に何かあるのかもしれませんねー♪」
「そっかな……?」

グリーンはひょいとベッドの布団を取り払った。
その下にはぺったんこになっている金属の板があった。ラベルにはちゃんと昔の字で『不思議歩毛津戸』と書かれている。

「ありゃー。長年の重みで鉄の箱が寝押しされたんだな」
「ぺったんぺったんですー♪」
「むー。何とかして膨らまさないとな……」

シェンナがごそごそと自分のめがねの中からストローを取り出してきた。

「これで膨らましましょー♪」
「バカだな……いい案だが差込口が無いから無理だ」
「うーん。自信あったんですけどねー」

グリーンはしかたなくその板を持って部屋を出た。しかし、自分の理性が何故だか許せなかったこのまま持っていっても、見つけた人。
そして、グリーンは考えた。『もし、この寝押しされた箱を元に戻して持っていけば!?』
女子達から羨望の目。エージェントからは多額の謝礼、そして見事グリーンに成りすます事が出来る。

「(よし……適当にこいつを騙してオレが手柄を独り占め~♪)」
「悪巧みの顔ですー」
「……ハハ。シェンナちゃんこの廊下のずーっと奥にお菓子がいっぱいあるらしいよ」
「うそ臭いですー」
「(鋭っ!?)……そんなことないよ♪お菓子がいっぱいあって溺死した人もいるらしいからね」
「怖いですー」
「んん。怖くないよ全然♪ 早く行かないとオバケが全部食べちゃうかもよ~?」

シェンナはハッと顔を上げて急いで廊下の向こうの扉のドアを開け中に入っていった。
グリーンは「ちょろいもんだぜ」と呟くとさっそく板の両端をつかんでおもいっきりひっぱった。
いくらひっぱってもうんともすんとも言わない。

「ぐー!!……オレの力でもダメかー!!」

逆に鉄板は延びてしまっていた。さすがボス代理だけあって指後が残っている。疲れて辺りを見回した。シェンナはまだ部屋から出てこない。

「……シェンナちゃん?」
「グリーン隊長~!ホントにお菓子が一杯ですー」

シェンナがキャンディを一杯手に抱えながら部屋から出てきた。グリーンは半信半疑でシェンナの入った部屋を覗いた。

「……おぉ!?」

匂いだけでお腹が一杯になりそうな濃い甘い香りが充満するその部屋の中には、たくさんのお菓子があった。
お菓子の海のような……というよりお菓子の海そのものだ。

「……嘘から出た真」
「グリーン隊長。シェンナもおぼれそうになったんですよー♪」
「……なんだこの洋館は……!?」

グリーンはふとお菓子の海の向こうにある金庫に目をつけた。開けて見ようとしたが金庫には鍵がかかっておらず、簡単に開いた。
中には古びた書類が一枚だけ置かれてあった。その表紙には……。

「……日本略奪作戦企画案?」
「どんなお菓子ですかー?」

グリーンはペラペラと書類をめくっていった。

「……そういうことか……」
「?」
「……シェンナちゃん。見つかったって言ってくれ」
「え……うん」







階段の前に全員が集まるには20分もかかってしまった。エージェントが1人だけ物凄く遅くやってきたのだ。

「……グリーンさん。いかがですか?」
「見つかったぜ」
「ありがとうございます……」

箱をエージェントに渡すと、彼はすたすたと出口へと歩き始めた
「待てコラ!」

グリーンがエージェントをいきなり呼び止めた。エージェントは聞こえないふりをしようともう一歩足を進めた。

「それはニセモノだぞ」
「……そうですか。では本物をお渡しください。しかし、何故このようなことをするのでしょう?」

「……それはこれを見つけたからだ」

挿絵

グリーンはさっき見つけた書類を取り出して男によく見えるように突き出した。

「……お前は、このポケットを使ってお菓子を増やして、日本の菓子産業をつぶし、某国が巨万の富を得ようとしてたんだな!」
「グリーン隊長。なんかインテリですねー♪」
「……シェンナちゃん。今いいところだから黙ってて」
「はーい♪」

エージェントは黙ったまま懐に手を突っ込んだ。

「……何の事でしょう?私はただ我が国の食糧危機を救おうと……」
「……動かないで」

突如クリームが武器を装備して男に銃口を向けた。エージェントは手を突っ込んだままクリームを見た。

「……タイ……いえ、隊長……どうぞ」
「あ、あぁ……うん。……とりあえず。お前はオレ達を利用しようとしていたんだな!」
「……ばれては仕方ありませんね。そのとおり、我が某国は日本を減点に世界征服を計画中なのですよ」
「じゃぁ。オレのすることはただ一つ……OFFレンボール!」

ブルーがオロオロしながらグリーンの肩を叩いた。

「え、あの……ボールの方は今無いんですけど……?」
「はぁ!?このバカ!必要な物も無いのかぁ!?OFFレン辞めろよてめぇ!」
「い、いや……ボックス……しかないです」
「……はぁ?」
「かくかくしかじか……そういうわけです」

グリーンはポンと手と叩くと早速ブルーの持っているボックスを高く放り投げた。

「これ、シェンナのですー♪」

再びシェンナがボックスを掴んで中身をごそごそとし始めた。クリームは何も言わずそれを奪い取ると男の方に放り投げた。

「……宅配トラック」

投げつけたと同時に男の真ん前に大きな宅配トラックが姿を現した。

「どこに発送すればよろしいでしょうか!?」

張り付いた笑顔の宅配やさんの持っている配達伝票にクリームがサインすると。
宅配員は手際もエージェントをひもで縛り、割れ物注意のダンボールに詰め込み、深く一礼をしてトラックに入れた
「大丈夫ですか?」
「はい、おまかせください!我々は信頼が第一ですから!ハッハッハー!では某国へ発送してきます!」

トラックは洋館を突き抜けると段々見えなくなっていった。

「……クリームちゃん。ありがとね♪」

クリームはグリーンの手をはたくとすたすたと帰っていった。

「事件解決!某国の陰謀は免れたぁ!」







この事件のせいでタイガは悪人らしく活動しようと言う意欲をそがれた。
なんていうか……極悪人も疲れる。正義の味方のふりをするのも疲れる。
グリーンはタイガに戻った。なんだか、正義の味方なんてやっていると鳥肌が立ってくる。

「はぁー……。やっぱちっこい悪のほうがオレには向いてるよな~」

タイガをグリーンに戻すと、タイガはあちこちいたい体を何とか起こすと、他の隊員が帰って来た。シャワーを数人浴びていたようで濡れていた。

「あ、タイガくん。来てたんですか?」
「あ、え、あぁ……うん」
「グリーンは?」
「あ、あぁ……そこで寝てるぜ」

タイガはいそいそと帰っていった。

「グリーン?グリーン?大丈夫ですかぁ?」
「ハッ!あ、イエロー……私、いや、あちき、あぁ……オレは!?」
「……寝てたみたいですよ」
「(ダメだ。どうも自分をグリーンだと思い込んでるな。よ、よし)」
「あ、ありがとイエローちゃん!」

グリーンはイエローに向ってかっこよくポーズを決めた。

「……何やってるんですかグリーン」