第29話
『僕らの隊長!』
(挿絵:パープル隊員)
いきなり、目覚まし時計が鳴り響くOFFレン本部。
朝から心臓に悪いベルの音を聞かされた隊員たちがぞろぞろと音の場所へと集まってくる。
『コンコン……』
ここはグリーンのお部屋。ベルの音はここから聞こえてくる。
『ドンドンドンドンドン!!!!!』
次第にノックの音がやかましくなってくる。その分ベルもやかましいのだ。
しかし、部屋の中からはうんともすんとも聞こえない。
「返事が無いね……」
「まさか、自殺なんて事……」
「そんな馬鹿な……」
「……でも、なんか普段から顔色悪かったし」
「いや、あれは元々ああいう色だから……」
お互い顔を見合わせた。
「と、とりあえず中を見ましょう」
ブルーやシルバーが異変を感じたのか、助走をつけて勢い良く扉に体当たりする。
体当たりしてみた物の、鍵を掛けてなかったらしく2人はおもいっきり部屋の中へ吹っ飛んだ。
「いたたたた……。普通こういう時は鍵がかかっているものなんですがね」
「思い込みが鍵だったんすね!」
「上手いですね……」
「いやぁ~w」
2人の後に他の隊員が部屋の中へぞろぞろと入ってくる。
しかし、いくら辺りを見回してみても中にグリーンは見当たらない。とりあえずホワイトが鳴り止まないベルを切ると机の上の手紙に気が付いた。
「これ」
手紙は白い便箋にシンプルな文字で2行ほど書かれていた。
『みなさんへ。ちょっと出かけてきます。お昼には帰ってきますので心配しないでください』
ただ単に目覚まし時計をかけたまま出かけていただけのようで、一同は安心した。確かに、自殺は想像が飛躍しすぎたかもしれない。
「ま、よかったんじゃないの?」
「だね」
みんなが帰った後、クリームはシェンナが1人部屋をキョロキョロ見渡していたのに気が付いた
何かを探しているわけでもなく、好奇心で見ているわけでもなさそうで再び部屋の中に入った。
「どうしたの?シェンナ」
ふと、声をかけられたシェンナはクリームに寄り付いて言った。
「なんか、隊長の部屋。雰囲気暗いですー」
「ぇ?」

シェンナに言われてクリームは部屋を見回した。特に暗いとも思わない。
「……電球が切れかけているんじゃない?」
「そうじゃなくて……寂しそう……」
「はいはい。もう帰りましょうねー」
シェンナの手を引っ張りクリームはグリーンの部屋を後にする。……途中、カツンと小さな木の板を蹴飛ばしてしまった。
「あ、いけないいけない……」
拾い上げると、それは前隊長レッドの写真を入れた写真立てだった。
何度も出し入れしていたようで少し動かしただけで隙間から写真の端っこが顔を出す。
クリームは机の上に写真立てを置いて再び部屋から出た。
ただ、ドアを閉める勢いが強すぎたのか、写真立てが、ガタッ……と倒れた。
「……そこでですね」
薄暗い部屋の中で、灰色の壁に向って男は言った。
何も壁と話しているわけでは無い。後ろにいる人間に話しをしているのだ。後ろにいるのは、先ほど本部を騒がせた隊長。グリーンだった。
「はぁ……それで?」
「我が署の最近の噂を聞いておりますかな?」
署……そう。ここは尾布市のほぼ中央に位置する尾布警察署。2日前グリーンの元に手紙が届き、今こうしてここに来ているのだ。
「あぁ、あの……汚職事件発覚後、ボロボロと不祥事が発覚したとか」
「そう……その通りですよ」
特に否定する事もなく男は言った。
「ぶっちゃけ、我が署は不祥事だけで成り立っているのですよ。しかし外部にはいえません」
「はぁ……ぶっちゃけましたね」
「そこで……我が署が智恵を絞りまして、我が署の不祥事を誤魔化すためにも犯罪の摘発に力を入れておるのです」
つまり、犯罪をかたっぱしから無くして不祥事があった事を誤魔化したいのだという事はわかった。
しかし、こんな非力な少年少女たちにこの男は何をさせたいのだろうかとグリーンは思った。
「それで、私達に何をしろと……?」
「……これで大体お分かりになるでしょう」
男は一枚の書類をグリーンに差し出した。
書類を見る限りでは。この辺にいる暴走族集団のことが書かれているようだった。
「……はぁ。つまりこの族を沈静させろとおっしゃるわけですよ……ね?」
「……まぁそうですな」
グリーンは男から暴走族の出現多発場所の地図を貰った。どうやら、駅の裏の空き地周辺に良く来ているみたいだ。
「あ、そうでした。あとこれも」
男は少し厚みのある封筒も地図の横にすっと差し出した。
「……我が署の手柄にしたいので、このお金でなんとかよろしくお願いいたします」
「はぁ」
……この男を見れば解る。この署がいくらがんばっても不祥事を誤魔化す事など出来ない。
グリーンはとりあえず、暴走族が良く現れるという夜10時以降を待ってそれまで、本部でゆっくりしてようと考えた。
お金はOFFレンの経費に使って、後はみんなで暴走族を捕まえに行って……ふと、部屋の前でグリーンは脚を止めた。
「……みんなになんて言ったら……」
ふと、グリーンはなんだか虚しくなってきた。この頃すぐ虚しくなるのが癖になった。
いや、きっと隊長生活が長引いた故の癖なのだろう。
この所自分の時間が無い。いや、時間はある。でも、なんだか自分の時間とはそういうものじゃない気がして。
「隊長♪ おかえりなさいー」
ハッと気が付くと、ロビーのドアの前に来ていた。
ドアをいつまでも開けなかったのか心配している顔でみんなこちらを見ていた。
「あ、た、ただいま帰りました」
グリーンは席に着くと、今日会った事を早速話した。
「……それで、暴走族をですね」
「あぁ、あの暴走集団ですか。邪魔ですよね」
「それを……まさか捕まえるの!?」
「……えぇ、そうですけど」
安易ではない要求に隊員はグリーンにクレームをたたきつけ始めた。誰だって、この歳で、暴走族の鎮圧を頼まれたって出来るわけが無い。
しかも、こちらの重要武器は、ボール&箱。
「グリーン……もっと自分達の立場を考えようよ~」
「あの……」
「できるわけないじゃないですか……」
「その……」
「しっかりしてくださいよ!隊長なんですから!レッドが聞いたら……」
『レッドが』『隊長だから』この言葉が今のグリーンには非常に辛い言葉だった。
好きで隊長になったわけではない。レッドは今いない。普通年下が年上をまとめるなんて……。グリーンの頭の中でいろんなことがぐるぐる回り始めた。
「だ、だったらいいですよ!私一人で行きますから!!」
テーブルの上の書類を鷲づかみにするとグリーンは部屋を飛び出していった。
静まり返った部屋で、イエローはシルバーをひじで小突いた。
部屋に変えるとグリーンは写真立てを掴んでベッドの上に寝転がった。
写真の中のレッドは笑顔意外何もしてはくれない。
「レッド……まだ帰ってきていただけないんですね……」
……夜は思ったよりも早く来た。夏だというのに……。
要は気持ちの持ちようなのだろう。
場所はすぐわかった。地図を見るまでもなく、夜中だと思えない明るさとバイクの轟音。
全員ハチマキをして、バイクにまたがってなにかしきりに叫んでいた。これが暴走族の集会という奴だろうか……。
グリーンは保険として武器をそっと手の中に忍ばせる。そして、堂々と暴走族の集会の間に割って入っていった
グリーンに突き刺さるような視線を受け自然と彼の喉が声を上げる
「あ、あのぉ……」
とりあえず何かを言いかけておけば言い終わるまで向こうは何もしてこない確率が高いという話がある。
実際、この後何を言うまでもなく近づいていくのだが、向こうはじっとこちらの様子を伺っているだけだ。
「何だ?」
族の中の1人が話しかけてくる。この一言で自然とグリーンの額に冷や汗が浮き出る。
「あ、あのですね……あの……」
グリーンは後を何も考えて無い冒頭を繰り返しながら一歩一歩近づいていった。
しだいに、バイクのライト以外のものが見えてきた。
……一歩。グリーンと同じ背丈の奴がいる
……一歩。鋭い目付きがこっちを見ている
……一歩。なんだか見たことあるような顔が並んでいる
……一歩。…………鏡だ。見まごうことなく鏡だ。
自分がそこに立っている。バックのライトが少し眩しかったがグリーンがそこに立っていた。
「……お前」
それは鏡ではなかった。良く目を凝らすと後ろにもグリーンがたくさん立って……いや、全員がグリーンだった。
全員、色は違うがマフラーをしている緑色の姿。一瞬グリーンは驚きを通り越して、目の前のそれに少なからず恐怖心を感じた。
しかし、良く考えてみると頭の隅にこの出来事を立証する記憶が会ったのに気づいた。
「まさか……みなさん……」

──あの時のグリーン200人!!そう、視力を回復する為だけに作られ、レンタルされていたあのグリーン達。
レッドがいなくなってからどうにもならなくなってどうなったか知る由もなかった
「お、お久し……」
「お久しぶりです。……だろ?自分なんだから言わなくてもわかるよ」
「あ、それ……」
「それもそうですね。って言うんだろ?」
グリーンはニコリと笑った。さっきまで感じていた恐怖心もその顔で吹き飛んでしまった。
「で、次にお前はこう言う。なんでみなさんがここに?」
「そ、そうです!」
肝心な事を聞くのを忘れていた。なんでグリーンが暴走族なんかを作っているのだろう。
久しぶりの自分との出会いですっかりそんなことを気にも留めなかった。
「オレ達な。いろんな所にレンタルされたわけだ」
「んで。結局行く所がなくなったから……暴走族になったわけですか?」
向こうのグリーンはすばやく首を振った。
「いやいや!ちゃんと昼間は働いてるよ。 あっちは飲食店で、あいつは新聞配達かな」
「じゃぁ、何故……」
グリーンは思った。すでにグリーンと言う存在がいる以上決して彼らは決してオリジナルに離れない存在。
きっと、暴走行為というものを通じて、自分達の存在を周りに、そして自分達に印象付けているのだろうと……。
「……存在がどうとかって考えてるだろ?」
うつむいて考え込んでいたグリーンにグリーンは声をかけた。
そうだ。すでに、何もかもお見通しなのだった。
「え、あ……はい」
「そんな小難しい事じゃないよ。せっかく200人もいるんだから何かしたくて」
「そうそう!だから緑団って名前なんだ」
緑団。そういえば『暴走族』とは聞いていたものの族の名前は聞いていないバイクの後尾の布には確かに大きな緑色の字で「緑団」と書いてあった。
200人の別の自分がこんな事をやっているのだと怖くなった反面、グリーンには好奇心という別な感情がすでに顔を出していた。
その状況が他のグリーンにも届いたのか、グリーンの1人がグリーンの手を引っ張った。
「乗りなよ」
向こうのグリーンがバイクにまたがるとハチマキをグリーンに投げた。緑色のハチマキに黒字で族の名前が書いてあった。
ずいぶん長い物で、結ぶのに手間取った。多分この長さはバイクに乗ったときのなびきを強調させる物なのだろう。
「今日は、尾布市一周を2週するぞー!!」
グリーンがバイクにまたがった瞬間。団長(どうやらさっきから話していたのが団長になっているらしい)が叫んだ。
団長の腰をグリーンは掴んだ。エンジン音と共に暴走行為というだけで何だか罪悪感が沸いてきた。
「……ちょっと降りろ」
消極的な腰の掴み方に気が付いた団長はいったんグリーンを下ろした。不思議そうに団長の顔をグリーンは見た。
「……恥ずかしいのか?」
「え、いや……その……」
団長は団員の持っていたペンでグリーンの頬に黄色で2本線を引いた。
他の団員も数名同じような事をしているみたいだ。なんだかハロウィンのあのときを思い出す。
さらにグリーンのマフラーを長く見えるように結んだ。ハチマキと同じ原理だ。
「これで少しは、お前だと思われないだろ♪」
「……はぁ」
半信半疑だったが、いざこの状態だという事を自分で思うと、確かに自分では無い分なんでも出来そうな気がした。
少し恥ずかしいが、グリーンはバイクの後ろにまたがった。さっきよりも強く掴んだ。
そして再び団長は叫んだ。
「よぉし!今夜もとばしていくぞーー!!!」
「……なんでオレがお前となんか……」
「それはこっちの台詞だ」
夜の大阪。この時間でも外で人はごった返しているというのに、この路地は何故にこうも人通りが少ないのだろうか。
そして、その路地に2人の少年が愚痴を言い合って歩いていた。
「第一、なんでお前がこなきゃいけないんだ!?会社があるんだろ」
「……オレも一応はオオカミ軍団と関係があるんだ。来たって良いだろ」
「必要ねぇって何べん言わせるんだ!」
「……そうかな?じゃぁ餓死寸前のオオカミを部屋に閉じ込めてドアをコンクリートで壁にしていたのは誰かな?」
「……そ、そんなこともあったかな」
タイガとホラン。今2人はご飯を食べに行った帰り。
再びオオカミに賃金を届けに来たホランに、行き絶え絶えだったタイガがご飯をたかったのが事の始まり。
「それに、ホームシアターセットなんぞを勝手に買うから壊滅寸前だったではないか」
「だ、だって……AVはやっぱりでっかく見ないといけないだろ!」
タイガは嬉しそうな顔で両手で物をつかむようにくにくに動かす。
「……まったく。女なんて何処が良いんだ?」
「それを言うなら男の何処が良い?胸も無いし、汗臭いし、ガサツだし、可愛くないし」
「……バカだな。お前は男のよさが全然わかって無い」
「男の良さ?」
「……なんならオレが教えてやっても良いぞ」
ふと、公園の前でホランは足を止めたタイガは持っていたつまようじをホランの頭に投げる。
「オレは、女の子しか興味が無い!ホモは黙ってろ」
「まったく……固定観念にとらわれているバカは」
「なんだと!?」
「じゃぁ、キミは民主主義と共産主義の違いがわかるのか?」
「『しゅ』が1つ多いんだろ!!」
ホランは黙って鼻で笑った。
タイガはイライラした物の、さっきスシばかり食べていたせいもあってか殴りかかる事もできなかった。
途端、遠くからバイクの轟音と眩しいライトが見えてきた。
「お、なんだ。うるさいな」
「……暴走族か。別に大阪では珍しい事じゃないだろう」
「!」
ホランがバイクの方向を見ている隙にタイガはあることを考えた
殴る事は出来ないが軽く押す事なら罪悪感は無い。
バイクが来た瞬間に軽く呼びかけるつもりでホランを押したらひょっとしたらホランが道路へ行ってさよならになるかもしれない!
ホランは居なくなるし、お金も自分が独り占めすることが出来る。それに黙っておけば平気なのだ♪……金は人を凶悪に変える。
タイガはバイクが来た瞬間を見計らってホランの肩をそっと手を当てる
「ホラン♪」
「何……」
振る帰ろうとしたホランの肩をタイガが思いっきり押すとホランは重力その他諸々の力により道路へと押し出された。
倒れるホラン。静かに目を閉じるタイガ。バイクの近づく音───。
「ん?」
所変わって暴走族サイド。団長は道路の脇にあった人のような人は静かに道路へと倒れていく
その瞬間をグリーンは見逃さなかった。バイクの後ろに乗った人は常に前を気にする物なのである。
「あ、あれはホラン……」
「……知り合いか?」
「……ひ、轢いちゃうんですか?」
グリーンは不安になった。暴走族なんて人を殺しても何とも思わないような人たちの集まりだろうと思っていた。
例えグリーン達であっても、少なからずそう思っていた。団長はため息をついた。
「はぁ……。どうしてそう偏見的な見方しかしないかな。お前、人を殺しても平気でいられるか?」
「い、いいえ!そんなこと……」
「オレ達も、そうなの。お前と少なからず同じ性格なんだから」
「じゃ、じゃぁ……」
「……しっかり捕まってろよ」
覚悟を決めた風に団長は言った。グリーンは聞き返す間もなく、ギュッと後ろから団長の腰を抱きしめる。
「飛ぶぞ!」
団長の合図と共に、次々とバイクがホランの上をアーチを描くように飛び上がる。
道路に仰向けになったホランにも、その様子がしかと目に焼きついていた。
「……」
グリーンは、ホランと目が合った。
ドキッとしてグリーンは団長の背中に顔をうずめた。
ガタン!!
───とバイクが着地した。
少し鼻を前にぶつけてしまったが後ろを振り返ると他のバイクも次々に着地していく。
思わず、息を呑む光景にグリーンは見入ってしまっていた。
「……凄いか?」
グリーンは静かにうなづいた。そして、すでにグリーンはバイクに乗っている余裕が出来たらしく、ふと、周りを見た。
後ろから照らされているバイクのライト、暗闇に痛いほど響くエンジン音、猛スピードで去っていくネオン
通りがかる人の好奇の目、そして中には憧れの眼差しで見るような人もいる。
……次第にそれらはリズムを刻んでいくように思えてきた。
バイクのスポットライト、勢い良く響く楽器、光の帯──そして観客達。
団長は黙ってバックミラーを見る。
グリーンはすでにその楽曲に酔いしれていた風だった。
「……なんか……楽しい」
グリーンが呟いた言葉を聞いて、団長は言った。
「……オレ達がこうしてる理由わかっただろ」
「はい。わかった気がします。バイクがすきなんですよね」
「……はは」
タイガが目を開けると1人放り出されたホランがすぐに目に留まった。
ゆっくりホランは起き上がって自分の後ろを振り返る。計画に失敗したタイガは急いで自己フォローに向う。
「あ、あのさ、ホラン!オレ……なんていうか?なんていうかさぁ~w」
「……」
「ほ、ホラン?怒ってる……?」
ぼーっとホランは道路の向こうを見つめたままつぶやいた。
「……グリーン」
「はぁ?」
「…………グリーンがいっぱい」
ホランは徐々に顔を赤らめていった。
「あぁ!……こ、ここは……?」
翌朝。グリーンは何処かの布団で目を覚ました。
何処かの小さなプレハブ作りの部屋の中のようで外からは工事の音が脳に響くくらいけたたましく鳴っていた。
「起きたか?」
昨日の団長──姿は同じだが多分そうだと思う──が部屋に入ってきた。寝起きにツンと鼻に付くコーヒーの匂いがする。
「あ、あの……昨」
グリーンの前に先回りして言おうといった感じで団長は言った。
「昨日は、お前が寝ちゃってたからここにつれてきただけだ」
「はぁ……。お家ですか?」
団長はにやっと笑った。なんとなくまだコーヒー臭い。
「違うよ。ここに住み込みで働いてんの」
「じ、児童福祉法があるんですよ!?住み込みで働くなんて……」
「知らないのか?尾布市ではどんな法律も都合の良いときに無効になるんだぞ」
団長に言われてそれもそうだとグリーンは考えた。今までの活躍からして捕まらなかったのが不思議。ホワイトだってバイトしているし。
「……あ、そろそろオレ交代の時間だからいくな。一息ついたら帰っても良いぞ」
「は、はい」
ヘルメットを手に取りながら彼は言った
「……また来たかったら今夜の11時に来ると良いぞ。いつでも歓迎するから」
「……はい!」
長居するのも悪い為、グリーンは彼が部屋を出た後、颯爽と本部へ向った。
いつもより、見も心も軽くなったような感じで一夜越えてもまだ初体験の余韻に浸っている気がした
──また行こう。
何度も昨日の出来事を思い返しているうちにグリーンのその思いは募っていった。
自分だから、誰にも気兼ねすることなく、自分だからなんでもわかってくれるのだ。これほど良い仲間もそうはいない。
「ただ今帰りました」
「……グリーン」
帰ってくるなりブルーに手を引いてロビーへ連れて行かれた。見ると、タイガとホランがロビーにやってきていた。
ホランの首には縄が巻かれてあってタイガがその端っこを掴んでいた。
「グリーン、ちょうど良い所に。ちょっと聞いてやってくださいよ」
「え、あの……」
有無を言わさずにグリーンを席に付かせると早速タイガが話し始める。
「お前、昨日何してたんだ?」
全身に悪寒が走った。言うか言わないか……。
言わない。絶対言わないとグリーンは思った。恥ずかしいのもあるが、自分達だけの楽しみとして秘密にしたかったのだ。
「え、えっとその……」
「ぼーそーぞくにいってたですよねー♪」
シェンナがグリーンの真横ではしゃぎ始める。タイガが間を詰めずに言った。
「じゃぁ、お前昨日の晩、寿司屋の近くの路地にいたか!?」
「い、いいえ」
「ホントか!?」
「はい!」
「ホントーなんだな!?」
「お、オフコぉース」
タイガは腕組をしてチラとホランの方を見た。
「むー。昨日ホランがお前を見たって言うからこんなことになってるんだけどなぁ」
「?」
グリーンはホランを見た。虚ろな目でボーっとどこかを見つめたまま何かを呟いていた。
よく聞こえないので近づいて良く耳を澄ます。
『グリーンがいっぱい……グリーンが一杯……グリーンが一敗……』
なんとなくアクセントが段々変わっては来ているが多分「ぐりーんがたくさんいらっしゃる」という事を言いたいのだろう。
「私が……いっぱい?」
グリーンが言った言葉にふと、ホランは気が付いてグリーンを見つめた
「ぐ、グリーン!!」
ホランはグリーンの顔を見て後ろにドシッとのけぞいた。顔を赤らめて黙っているのはご愛嬌。
「グリーン……顔を近づけるなんて……ドキドキするじゃないか」
「はぁ……」
ホランのドキドキの基準がいまいちグリーンには解らなかった。
「き、昨日グリーンをいっぱい見たんだ!」
ホランは嬉しそうに口元に手を持っていってその出来事に酔いしれているようだった。
口元が緩んでいるのを見るとよほど嬉しかったようだ。
「まるで夢みたいだった……」

「フン。何が嬉しいんだか……帰るぞ。……またね~!イエローちゃん達♪」
うまく感情の切り替えをしながらタイガはホランの首につけた縄を引っ張ってロビーを後にした。
ホランは再び夢見心地で引きずられながら帰っていった。
一応帰っていったものの、隊員たちにはなんとなく疑問が残った。
「グリーンがいっぱいですか……変な事を言いますね」
「あ、確か……なんかそんな状況があったような……」
「そうそう。……なんか……似たような事を……」
「あ、あれじゃないですか?夢!夢ですよ」
とっさにグリーンは嘘をついた。
クローンの事がばれたらなにやらあの楽しみがなくなる気がしたからだ。
「夢……かなぁ」
「そういわれれば……そんな気もするけど」
一部はイマイチ納得していなかったようだったが疑問は「夢」という事で片付いた。解決した所でイエローがイエローがグリーンに書類を渡した。
「隊長。以前頼まれていた尾布市主要場所の近道のデータです。今日の会議でまとめるんですよね?」
「え、あ、そ、そんな物頼みましたっけ?」
「2週間前に言ったじゃないですか。まさか使わないとか言うんじゃ無いでしょうね!?」
イエローがメスをグリーンの目の前でちらつかせながら言った。
そういえば、今後事件の出現を効率化するためにそんなことを言った気もするが、
会議……しかもこの膨大な資料をまとめていたら今夜のお楽しみには行く事が出来ない。
「きょ、今日は……夕方から法事がありまして」
「ぁ~!?」
イエローがメスをグリーンの顔に近づける。明らかに怒っている。
よく見るとイエローの目の下にクマが見える……勉強の合間にがんばってくれていたのがなんとなく察する事が出来る。
「ま、誠に申し訳ないのですが……明日ということで……」
「……絶対ですよ?」
「は、はい!」
イエローはメスを下ろすとばら撒けた資料を重そうに抱えて帰っていった。イエローと入れ替わってシルバーがグリーンに話しかける。
「じゃぁ、グリーン。夕方までワタシの作った……」
「……フン」
グリーンはわざとらしく首を右に振った。
昨日の事を根に持っているのを悟ったシルバーはなんとかグリーンに話しかける。
「あ、あの。暴走族撃退マシーンというものがですね……設計図と概要書がですね……」
シルバーの熱心な(?)話に耳も貸さずにグリーンは部屋を出た。
「ふぅ……意外と思ったより怒ってますね」
シルバーは深いため息をつきながら椅子に座った
「で、でもあれくらいの事で怒るなんて……」
「この時期は変な事で起こるようになるんだってば」
「あぁ……思春期なんですね。グリーンも」
部屋に入るなるグリーンはレッドの写真立てをキチンと正して机に向った。
鏡にはまだ昨日の興奮が有り余っているのか口元が緩んでしまう顔が映っていた。
「レッド。私らだけの時間が出来ましたよ♪ 隊長少しだけ休ませてくださいよね」
写真の中のレッドの顔は何故かいつもと違う笑顔に思えた。……少々違和感は感じながらもグリーンはベッドに飛び乗って寝転んだ。
なんだか今までになかった爽快感がどっと押し寄せてきた。
「……」
グリーンは静かに目を閉じた。
「遅れましたー!」
早速昨日のいでたちでグリーンは例の空き地にやってきた。
今日で、グリーンがここへやってくるのも何十回目か……。
準備もすっかりなれて最初よりも手付きが慣れてきている。
「……今日は乗り気だな」
「そうですか♪」
気づいていないのだろうが声が少し上ずっていた。
「いや、最近楽しそうだなぁ……って思ってさ」
「……そりゃぁ。こんなこと1人だけじゃ出来ないんですもん♪」
「OFFレンジャーもまだあるんじゃないのか?ここの所ずーっとじゃないか?」
ふと、グリーンのハチマキをしめている手が止まった。そしてグリーンはさっきとは違った調子で言った。
「OFFレンジャーは……いいんです」
「いいって?」
「……思春期ですから」
「……なんだそりゃ」
団長の一言をグリーンは少し残念に思った。同じグリーンでもやはりこの気持ちは解ってくれないのだと。
「……もういいです。行きましょうよ♪ OFFレンの事は忘れて楽しめるんですから」
「……そうか」
グリーンがきゅーっとほっぺの線を引き終えるとまだ団長も乗ってないうちにバイクに乗った
「今日はどうするんですか?」
「お前なぁ……」
そわそわしているグリーンに少し呆れた反面、団長も少し乗り気になっていた。
「……よし!今日は市外へも行くか!」
「はい!」
まだ薄暗いうちから緑団の集会が始まった。
普段はもう少し暮れてからするそうなのだが今回は市外へということで様々な説明をするということだった。
「……というわけで今日は201人で市外で走りまくるのヨロシクー!!」
「オーーーッ!」
グリーンもみんなと一緒になって応えた。201人がいっせいに広場に集まっている姿は圧巻だった。
グリーンの様に顔に簡単なメイクをした者から大げさにキラキラしたアクセラリーをつけている者までいて、みな思い思いの格好をしていた。
「ねぇ、僕のこと覚えてる?」
急に後ろからグリーンに声をかけてきたグリーンがいた。
「え?」
「ホラ、例の視力低下騒ぎの時にキミに続いて同じ台詞を言ってたグリーンだよ」
「……2号?」
「そうだよ!」
顔がみんな同じだからグリーンは全く覚えていなかった。しかし、何故だか、
「あ!あぁ……!あの時の!」
と応えてしまうのは人間として仕方がなかい事だった
「OFFレンってあれからどうなったの?空中分解?」
「……お、OFFレンはまだありますよ」
「レッド隊長まだ生きてる?」
「え、えぇ」
「今、君が隊長なんだって?」
「まぁ……そうですね」
幾度もの質問を少々うざったく感じながらもグリーンはグリーンの質問に答えた。
「ふーん……」
ひととおり質問を終えたグリーンは不思議そうな顔でグリーンに言った。
「じゃぁ、なんでこんなことしてんの?」
「!」
グリーンはハッとして団長の方を向いた。
それ以降グリーンが何を話しかけてもグリーンは応えてくれなかった。何故話してくれないのかグリーンは解らなかった。
「それじゃぁ、出発!」
声をかけようとしたグリーンを無視してグリーンは黙って団長のバイクの後ろにまたがった。
今日の走りはなんだかいつもと違って見えた。
時間帯が違ったり、天候が曇っているせいもあると思うが一番はグリーンの心境にあった。
2人から触れられたくない部分に触れられたのがグリーンにとってはどうもシャクだった。同じグリーンでもこういうことには気が回ってくれていない。
「疲れたか?」
さっきから無言で背中にしがみついているグリーンを見て団長は言った。
グリーンはただ後ろを振り返って「いえ」とだけ応えた。
「今日は楽しくないか?」
再びグリーンは「いえ」とだけ応えた。
妙に調子が狂ってしまった団長は少し口調を和らげてグリーンに言った。
「もしかして、OFFレンで何かあるんじゃないのか?」
団長の急な発言にグリーンは思わずぎゅっと団長の背中を握り締めた
「そ、そんなっ!そんなことありませんっ!」
「……そういう時は大抵何かあると気だな」
「そんなのわかるわけないじゃないですか!」
グリーンの口調がだんだん強くなってきた。
「いいや、わかるな」
「わかりません!」
「わかる!」
「わからないんです!」
「お前と同じなのにか?」
「……」
グリーンは急に口ごもってしまった。
感情が高ぶりすぎて強く握り締めた団長の背中のしわをグリーンは再び掴みなおしたまま一呼吸置いて言った。
「……レッドがいなくなってから隊長になったんです」
「あぁ、知ってるぞ」
「……最初は意気込んでたんですけど、私やっぱり隊長にむいて無いんじゃないかと」
「お前なら出来ると思うけどなぁ……」
グリーンが首を横に振ったのがバックミラーに映った。
「年下だから多分……みなさん私の事良く思って無いんじゃないでしょうか」
「そんなわけないだろ」
「……レッドの代わりなんですよ。それに、OFFレンの事ばかりで私プライベートなんて……」
「うーん……でもさ、何日もここにきたらOFFレンの隊員だって」
「もういいんです!今は。私も緑団の一員ですよ」
団長はとりあえずグリーンをなだめてバイクを進ませた。
その瞬間、ピカッと何かが光った気がしたが後ろのグリーンの事に気が行っていて特に気にはしなかった。
「ただいまです……」
グリーンは裏口(というか死角的な入り口)から本部へと入っていった。
しかし、ご丁寧にも目の前にはずらーっと隊員たちが並んでグリーンを見ていた。何か言い出すような雰囲気だが、ついにイエローがグリーンに言い始めた。
「何処行ってたんですか?毎晩毎晩!」
「ぼ、暴走族の調査ですよ……み、皆さんには関係ないじゃないですか」
嘘を見通したような顔でイエローはグリーンを指差した。
「じゃぁ、その顔はなんですか?」

グリーンはチラッと横のガラスを見た。そこには、両頬に2つの黄色い線。
物思いにふけっているうちに、さっきのメイクを落としていなかった。
グリーンは慌てて手の甲でメイクをこすりながら言った。
「こ、これは……ちょっとなんか付いちゃったみたいで……」
「嘘ついてもわかるんですよ!何処行ってるんです!?」
イエローがグリーンの目をしっかりと見た。
グリーンはつい、目をそらしてしまった。
「……ホラ、やっぱり何か隠してますね?私のデータ集めに費やした時間どうしてくれるんですか!」
「イエロー話が私事に……」
「あ、そっか……何やってるんですか?一体!」
イエローがグリーンの手を掴んだ。するとグリーンはその手を振り払って
「関係ないでしょう!ほっといてくださいよ!」
といって部屋にこもってしまった。残された隊員はただただ物音しない部屋の前で立っていた。
仕方なくロビーに戻るとホランをつれたタイガが入ってきていた。
何か用かと聞くのもめんどくさかったのでみんなは黙ってソファに向って座った。
何も聞いてこないのにイライラしているタイガは黙ってホランを突き出した。
「このバカになった奴をどうにかしてくれよ……」
「失礼だな!オレはバカになどなっては居ない!」
ホランは相変わらず緩んだ口元でキリッとした顔つきのまま言った。
全然説得力の無いこの白虎少年を黙ってOFFレンは見たじっと2人を凝視するOFFレンを見てタイガは言う。
「……なんか言えよ」
「あ」
「そうじゃなくて。うんとかすんとか言えってんだよ」
「…………すん」
「ムカつく奴だぜ……」
タイガは黙ってホランが持っていた紙を一枚机の上に派手な音をつけて置いた。よく見ると、写真だったようで、なにやら映っていた。
「……それ、やっぱりグリーンじゃないか?」
写真を見ていたOFFレンに向ってタイガは言った。
一同は写真を見たままうなづいた。バイクの真ん前に乗っていて鉢巻を締めている。
「どうしてこれを!?」
「ホランが例の事を証明するからって隠れて撮影してきたらしい……」
「あの時のグリーン……可愛かったなぁ……」
ホランが遠い昔を思い出すかのように呟いた。そんなホランをタイガは肘で小突く。
「全然可愛くないだろ!気持ち悪いな……お前は!」
「何だと!この写真1枚で昨日オレがどれだけ抜……」
言い争いを始めると話がややこしくなると察知したイエローは2人の中傷の間に入った。
「はいはいはいはい……何故自分達がここへ来たか良く自覚してますか?」
「グリーンが可愛いから」
「いいえ」
「女子達を見るため」
「すこぶる違います」
イエローは写真を手にとりグリーンを2人によく見えるように向けて指差した。
「つまり、2人はここ最近、暴走族とグリーンとに関係があるということです!」
「なるほど!タイガもホランもやってくれたね!」
「日本国民にはチクる義務がありますからね」
「じゃぁ、早速グリーンを問い詰めに!」
「いえ、ここは現行犯でいきましょう……次の水曜日に尾行開始です!」
勝手に騒いでいるOFFレンを見ながらホランもタイガも黙ってお互いの顔を見合わせた。
「……そんなつもりじゃなかったんだけどな」
声が綺麗に揃っていた。
ここ最近グリーンの部屋もずいぶんと変化を見せていた事はグリーン自信にも良くわかっていた。
緑一色だった壁も今ではずいぶんな量の写真が貼られるようになり、マフラーの色も様々な色が着物の丹のようにハンガーに係り、
所々に銀色の小さなアクセサリーも目立つようになった。暴走族の存在がグリーンを変えたのは言うまでも無いがグリーンは何故か腑に落ちなかった。
部屋全体を眺めて行く度、自分がかわって言ってる実感がわからずただ恐れていた。
「……このまま変わっても良いのかな……」
いっそのことOFFレンを捨てて暴走族として、1人の非行少年として生きていった方が楽に慣れるかもしれない
OFFレンにいて自分はなにをしたのだろう。隊長らしい事はしていても、隊長にしか出来ない事はしていない気がする。
それに、この時期特有の周りの人間はきっと自分を認めてくれていないのではないだろうか……という想いが交錯していく。
……などと、一人前に小難しい小説の主人公のようにグリーンは思い悩んだ。……そして決めた
「……やっぱりOFFレンを辞めよう」
グリーンは鏡に座って小型PCを外しし、机の上に置き、簡単な手紙を書くと暴走族のスタイルに着替えた。
部屋を出ると、シェンナが立っていた。グリーンは黙っていこうとした。
「帰ってこないの……?」
何故かいつもと違う妙なアクセントでシェンナはすれ違いざまにいった。違和感を感じながらもグリーンは言う。
「……ブルーやブラックやもっと隊長に相応しい人がいるんです」
「そんな事、生半可に考えるもんじゃないのよ……」
「ほっといてください。私は非行に走るんです」
「何故そんな事を考えるの?」
「そんなのシェンナは大人でしょう?聞く必要があるんですか?」
「……もういいわ行きなさい……。私の言葉は聞かなかったことにしてくれれば」
グリーンは走って非常口から外へ出た。
「……馬鹿な子。でも今は乗り越えなきゃいけないのよ……」
シェンナは1人、本を声に出して読んでいた。誰かが通った気がしたが本が面白かったので特に気にしなかった。
某月某日 AM5:31 木曜日
すでにグリーンが本部から姿を消してから2日がたっていた。暴走族のいると言う空き地を探してここまで時間がかかってしまっていた。
すでに暴走族はほとんどいなくなっており、朝日が見え隠れしていた
「なんでこんな馬鹿みたいな時間にいるんですかねぇ……」
「シェンナに見張りを頼んでおいたはずですよねぇ?」
「まさか寝てたなんて事ありませんよね?」
「そんなことありません!シェンナちゃんと見張ってました!全然グリーンの気配すら感じませんでしたよー!」
シェンナは自信満々に答えた。
いささかその自信さにクリームは疑いを隠し切れなかったもののとりあえず小鳥の囀る空き地を見た。
こんな時間にもう暴走族どころか人も来ないことはわかってはいるのだが来てしまった以上何だか帰るのがシャクに思えた。
「とりあえず、ひょっとしたら誰か来るかもしれません」
イエローも意地を貼っている事に他のみんなはすでに気づいていた。
しかし、待てば回路の日よりありの言葉どおり木漏れ日が差す中人影が空き地の中央に歩いてきた。
「グリーンですー」
「果報は寝て待てというけれど……本当ね。寝過ごした甲斐があったわ」
「強がってますね……イエロー」
グリーンは土管の中から小さな部品を取り出すと空き地を後にしようとしたすかさずイエローはそばにいたオレンジをグリーンに投げつけた。
オレンジはグリーンの真上を通過してフェンスの中央へと鈍い音と共にぶち当たった
「……グリーンやるじゃない」
「(オレンジ……南無……)」
フェンスにぶつかったオレンジに気づいて走り去るグリーンを草むらに潜んでいた一同が飛び掛った。
激しい抵抗で数名負傷したが最終的にクリームがあっという間に捕まえていた。
「……隊長。本部に帰っていただきますよ」
「なんですか!?なんなんですか!健全な少年少女になんてことをするんですか!」
「暴走族になる少年が健全なわけありません」
「ぁぅ……」
全員でグリーンを取り囲むとグリーンは観念したらしく黙ってうつむいた。
さっそく連れて帰ろうとした矢先シェンナがあることに気づいた。
「この人。隊長じゃないですよー。マフラーの色も違いますし」
「え?」

よく見るとグリーンと違ってなんだか表情も硬いし、マフラーの色もオレンジ色をしている。
「……あんた誰?」
「それはこっちが聞きたいよぉ!なんだよ!財布忘れたから取りに来ただけなのに」
「ん?ちょっと待ってくださいよなんだかこんな事が以前あったような……」
「そういえば……ハッ!あの時のグリーン200人!」
「なんですかそれー?」
シェンナやクリームの入ってくる前のことだから知らないのも当然。解りやすくブルーは2人に話す。
「かくかくしかじかで……そういうわけなんです」
「わー。10秒も立たずに理解できましたー!」
「……日本語って便利ね」
グリーンはその間にこっそり後ろに逃げる体制をとった。
しかしクリームがガトリングを目に装着してグリーンを見下ろしていた。
「これは読めてきましたね……。グリーンさん。本物のグリーン隊長はどこにいるんですか?」
「そ、それはそのぉ……私はそこで皿洗いのバイトをしているので特に……」
しらを切るグリーンを何としてもはかせる(正式には早く帰って寝たい)為イエローは強硬手段にうったえる事にした。
「じゃぁ、問題。グリーンが本部の他に最近寝泊りしているのはどーこだ?」
「は、はい!団長のプレハブ小屋ですっ!」
「じゃぁ第2問!そのプレハブ小屋はどこにあるでしょう?」
「はいっ!市役所の裏のビル建設予定地です!」
グリーンは手を上げたままハッと気が付いたらしく口を押さえたが時既に遅し。
「しまった!つい、日本国民の条件反射に乗ってしまった……!」
「グリーンのそういうところは同じですね……これは扱いやすい」
イエローはメモを取りながら言った。
「……で、グリーンはやっぱり暴走族と関係があるわけですね?」
「うぅ……その……」
「あるんですか!?ないんですか!?」
「あ、ありま……す」
観念したグリーンは黙ってOFFレンをその団長のテントへ案内してくれた。
その間グリーンは、グリーン隊長にまつわる話や、緑団の成り立ちなど。
どうやらここ最近グリーンは楽しんではいるもののどこか暗い影を落としていたようで団長にも何度かいざこざがあったらしい。
「……こ、ここです」
着くなりグリーンはそこらの土をてにこすりつけて顔や手につけ始め、ごろごろとそこら辺を転がり始める。
マフラーも外して土まみれにし、引きずったまま手に持った
「何してるんですか?」
「誘導尋問されたなんて言えませんからね。虐待を受けて聞き出されたことにするんです」
「そこまでするんですかぁ?」
「暴走族はそういうもんです」
「はぁ……」
プレハブ小屋の扉はノックをすると壊れそうなほどもろい作りになっていた。
まぁ、ずっと建てている訳ではないのだが、グリーンはその扉に向って体当たりをした。
「団長!す、すいません……OFFレンジャーに……ここの場所を」
団長らしきグリーンはガバッと毛布をめくりあげるとグリーンに寄りかかった。
「大丈夫か!?また同じ手は食わないぞ?」
「い、いえ……今度はモノホンです……多分……いやきっと……絶対!」
どうやら今までにも同じ事をしたらしく団長の反応は結構ドライだった。
「す、すいません……団長……」
「……傷が浅いな」
「そ、そんな事は気にしなくていいんです……お、OFFレンジャーが……」
グリーンはOFFレンを見た。芝居に合わせろということなのかイエローは単刀直入に団長に向って言う。
「悪いけど……ちょっと痛めさせてもらったわ……私達は気が長い方ではないの」
「(上手いなぁ……悪女の芝居)」
「……で。グリーン隊長は何処?」
団長はベッドに座ってそばにあったタオルで顔を拭いた。
吹き終わるとキリッとした団長らしい顔つきで答えた。
「グリーンは今。買出しだ。ここにはいない」
「それは好都合。グリーン隊長を族から脱退させていただけないかしら?」
「直談判という奴だな……残念ながら無理な相談だ」
団長は腕組み始めた。イエローも負けじと腕を組む。
「……ただじゃ脱退させてくれ無いわけですね……?」
「いいや。俺達の族は加入脱退自由だ。しかし一番重視するのは当人の気持ちだな」
「グリーンは脱退したく無いってことですか?」
「……奴は今隊長として、1人の少年悩んでいるわけだ」
「……?」
良くわかっていないイエローの横からクリームが口を挟んだ。
「……つまり、自分が本当に隊長に相応しいかどうか……悩んでいるわけですね」
「そう1つに答えをまとめてしまうのもどうかな?人間の心理とは奥深い物だぞ」
「……それもそうですね」
「まぁ、一番いえることは、あいつは悩んでいる。グリーンがどう自分の答えを見つけるかだな」
同じグリーンとは思えない口調で団長は言った。
クリームは少し考えて抑揚をはっきりつけて返す。
「……わかりました。隊長には自分で答えを見つけさせましょう」
「いつになるかわから無いぞ?」
「……それまで私達は隊長のポストを開けておきます」
「もし、こっちを選んだ場合は……?」
「私達には、それ以上グリーンを縛る権利はありません。いかがでしょう……?」
団長悪く無い素振りを見せた。
「……そうだな。ではそういうことでグリーンは一時俺達が預かる」
何か言おうとしたイエローをクリームが止めて一同は部屋を後にした。しかし、クリームは何も言わず団長を見て微笑んだ。
団長もクリームが解っていてくれた事に喜んで微笑を返した
「ただいま帰りました」
すっかり族の生活にもなれたグリーンは買い物袋を抱えて団長の元へ帰って来た。
珍しく団長の部屋には他のグリーンが2,3名団長を囲んで話しをしていた。
「お、帰ったな。実は今晩急に出掛ける事になった」
「今日はどこへ?」
嬉しそうにグリーンは団長の前に座った。
「……今日は結構危険だぞ」
「パトカーから追われちゃうんですか?」
「いや、警察沙汰じゃない」
「……他の族をつぶしにでも?」
「いや、オレ達は他の族とは干渉しない」
「……では一体?」
団長は一呼吸置いてグリーンを指差した。
その一瞬金縛りに会ったかのように全身が痺れた気がした。
他のグリーンの視線もあったせいかもしれないが。
「……OFFレンジャーだよ。OFFレンが明後日俺達を潰しに来る。本格的に警察が援助を求めてきたらしい」
「……そうですか」
『OFFレン』というキーワードに少し反応したがそれを悟られないようにグリーンは目を泳がせていた。
「……俺達の作り上げてきたこの族がなくなるのは非常に辛い。そこである事を考えた」
「……あること……ですか?」
「今夜中にOFFレン本部に奇襲攻撃をかける。やられる前にやれはこの世界の言葉だ」
グリーンは買い物袋の中の品物を冷蔵庫にしまいながら気になる点をいくつか聞き始めた。
グリーンの中での『最悪の場合』を心の準備もなしに聞きたくはなかったのだ。
「本部は厳重で夜は侵入できない場合が……」
「それはお前が良く知っている事なのだろう?」
「そ、それでは……奇襲攻撃とはどのように……?」
「寝込みを襲う。……といえば解りやすいか?」
一番聞きたい質問にグリーンは移った
「……最終的に隊員は……」
グリーンのこの言葉を予測していたかのように団長は不敵な笑みを浮かべていった。
「……場合によっては殺すのも一つの手だな。暴走行為だけだからといっても俺達は『族』なんだ」
グリーンは手を止めた。
そんなグリーンに団長は話を続ける。
「……お前はもう、OFFレンとは決別したんだろ? はっきり決別できるいい機会じゃないか」
「……そ、そうですね」
「今夜早速準備だ。……あと早く冷蔵庫の扉は閉じた方が良いな」
グリーンは黙って頷いた。
夜は嫌というほど早く来る。特にこういう日に限って……。グリーンはハチマキを締めた。いつもよりしおれて見える。
黄色のメイクをしようとする。手が震える。これをしたら完全に緑団の一員。
目を瞑って勢い良く線を描いた。目を開けると……鏡の中の自分の目は覚悟が出来ていたようだった。
空き地ではすでに意気込んでいるグリーンたちの姿が見えていた。金属バットを持っているグリーンなども居た。
団長は静かにゆっくりと今夜の作戦を話していた。
「今夜……奇襲攻撃に当たって、全員の健闘祈る」
「オー!!」
グリーン1人だけ何も言わなかった。
「ちょうどいい事に元隊長もいる……内部の事はバッチリだ。いいな?」
「は、はい」
急に離しかけられてグリーンは戸惑ったが、声を出してなんだか楽になった。
「(私は……みんなと共にする事に決めたんです)」
その日のバイクの音は何故か違って聞こえた。
周りの景色もいつもより暗く淀んでいて恐怖を感じた。
「……怖いか?」
「……別に」
「……人をボコボコに殴れるか?」
「……団長。もう私……オレは前までのグリーンじゃないんです」
団長の腰を掴む力が少し強くなった。
「……お前がそう思う以上。俺達も簡単に人を殴れるようになる。俺達はコピー。お前がマスターだ」
「…………」
「OFFレンは今何をしている?」
「……多分まだロビーにいると思います」
──しばしの沈黙。
「まず、誰を殴る?……いや、誰を殺すと思う?」
「……即答するべき質問とは思えないですね」
「……そうだな」
急にバイクがブレーキの甲高い音を立てて止まった。
上を見上げると聳え立つ通天閣。グリーンはバイクを降りて地下へと向った。
ロビーには全員揃っていた。クリームの提案で今夜、隊長を決めようと全員集まってくれた。
「グリーン隊長は……?」
「……もういいじゃないですか」
みんなはグリーンの部屋にあった写真立てを見た。
「レッドがいれば……」
「もうやめましょうよ……」
沈黙を最初に破ったのはドアが倒れる音だった。
倒れたと共にグリーンたちが一斉にOFFレンジャーを取り囲んで取り押さえた。
一瞬の事だった。最初に言葉を喋ったシェンナでもすでに取り押さえられてから数秒たっていたのだ。
「なんですかー!?」
「緑団!?何をする気だ!」
団長が取り押さえられたOFFレンの前に現れた。
後ろには下を向いているグリーンが立っていた。
「グリーン!どうしたんだ!?」
「馬鹿な真似はやめてください!!」
OFFレンの叫びをさえぎるかのように団長は言う。
「今日で貴様達の最後だ。我々緑団の活動に君たちは邪魔なのだ」
「……」
「では、早速始末させていただこうかな。運がよければ生きている君たちにも会えるだろうな」
グリーンと共に他の団員たちも様々な物を持ってOFFレンを見た。団長の命令でいつでも行動に移せるようになった。
グリーンは覚悟を決めて目を閉じながらバットを握り締めた。
「……レッド」
おもわずグリーンは呟いた。
その時パリッと何かを踏みつけた。小さな木片にも見えたがよく見ると写真立てだった
さっきの騒ぎでガラスが割れてしまっているがレッドの顔はグリーンを見ていた
「……」
その時、団長は静かにバットを振り上げた。
「……さよなら。OFFレンジャー」
「まってください!!!」
振り下ろそうとしたバットがふと止まった。グリーンは両手を広げて隊員たちの前に立ちはだった。
「……待ってください!そこまでしなくてもいいのではないですか!?」
「……これが一番言い方法だ」
「でも……でも、私はこれが一番言い方法だとは思いません!」
「……どけ」
「い、嫌です! 団長は言いました!私がそう思えばみんなも同じだって! 私は嫌だと思います!みんなも嫌なはずなんです!」
団長達の顔はグリーンを睨んでいた。
「仕方ない……せっかくだがお前も道連れだな」
「そ、そうはさせません!」
「隊長♪これ使ってくださいー♪」
シェンナがグリーンの小型PCを投げた。グリーンは急いで腕につけると早速頬のメイクをこすった。
「みなさん。再び隊長復活ですよ!」
「大丈夫ですか?隊長!」
「おかえりなさいですー♪」
「復帰したからには資料まとめていただきますよ!」
グリーンは頷くと大声で叫んだ。
「いきますよ!みなさん!OFFレンボックスーー!!!」
「待ってましたぁ!」
ブルーがボックスを放り投げて次々と回し始める。
グリーンは緑団たちを睨むと高く飛び上がった。

「いきますよ!……マジック!古風な洗濯が好きな主婦達!」
箱が団長の足元に直撃した瞬間、煙と共に10人ほどのエプロンをつけ買い物籠を下げた主婦達が立っていた。
「何っ!?」
団長が事態を把握できていないうちにグリーンはグリーンたちを指差した。
「主婦の皆さん!この汚れ切っているグリーン達の心を洗濯して真っ白にしちゃってください!」
「はい」
主婦達はさっそく石鹸と洗濯板を片手にグリーンたちを1人ずつ捕まえて石鹸をこすり付けていく。
「まったく、こんなに汚して……」
「あれほど汚さないように言ったでしょ!?」
「はいはい。1人完了」
様々な独り言が飛び交う中、グリーン達はぴかぴか光りだすほど綺麗になっていた。主婦たちは満足そうに汗をぬぐいながら洗濯板を床に置いた。
「みなさん。ありがとうございます」
「いえいえ」
主婦たちが消えた瞬間。鮮やかな色をした毛並みの団長に向ってグリーンは言った。
「……ごめんなさい」
団長はフッと笑って頭を下げたグリーンの頭をポンポンと叩いた。
「……馬鹿だな。やっぱりOFFレンが良いんじゃないか」
「……え?」
「全部芝居だ芝居。作戦だったわけだ。お前の本心を探るためのな」
「そういうことです。隊長」
グリーンは後ろを振り返るとクリームが立っていた。
どうりで取り押さえられていたはずの隊員たちが動いていて、部屋においておいたはずのPCが何故かシェンナが持っていたわけだ。
急に力が抜けたグリーンはその場にへなへなと座り込んだ。
「……ど、どうりで……」
「台詞は臭かったが。まぁ、よくやったぞ。クリームもやっぱりこっちの考えを読んでたか」
「……小説では良くある話ですよ」
「それにしても、ずいぶんと綺麗になったな俺達も」
同じグリーンに言われて少し照れくさかったが、グリーンは立ち上がって団長に言った。
「……やっぱり。考えすぎたようですね」
「わかったようだな?」
「……皆が隊長だと認めてくれてないと思っていたのなら隊長と認めるように努力しないといけませんよね」
「ん。それがお前の答えだな」
団長とグリーンは握手をした。嬉しそうにしているグリーンを見て団長は続けた。
「じゃぁ、俺達も緑団を辞める」
「そ、そんな勿体無い!」
「いや、またお前に迷惑をかけるわけにも行かないからな。どこか別な土地で働く事にするよ。
「そ、それなら、是非オレの会社に!!!」
突然ホランが周りの障害物を押しのけて入ってきた。
遅れて息を切らせながらタイガも入ってくる。
「ああ……グリーンがこんなに……夢みたいだぁ……」
ホランは周りを見渡して深いため息をついた。
「何だこいつは……」
「団長。あんま気にしないでください……ちょっとあっちの気が強い方でして……」
「あぁ……俺もそんな気がしてた」
ホランは名詞、会社案内、給料明細などなど様々な資料を床に広げて熱心にうちの社に来ないかと言い出した。
断ろうとすると涙目になってすがって来る。
「あぁ……200人もグリーンがいれば……」
《ホランの妄想》
小鳥の囀る社長室。豪華なベッドの上でホランは眠っているすると、4,5人のグリーンが部屋の中に入ってくる。
「ホラン。朝ですよー。起きてくださいよ~」
「も、もうちょっと……」
嬉しそうにホランは寝返りを打つ。
呆れたグリーンたちがホランの顔を覗き込むようにして言う。
「仕方ないですねぇ……ちゅーして起こしてやりますよ~w」
「わわ……200人からされるなんて夢みたいだぁ……♪」
そう言いながらホランは布団の中にもぐりこむ。
5人のグリーンがいっせいにホランの布団を取り上げる。
「意地悪だなぁ……グリーンは♪」
「さぁ早くホラン。模様を描いてくださいよ」
「グリーンが描いて♪」
「仕方ないですね~」
グリーンはドウランを取り出してホランの肌に黒い模様を描いていく。
「ホランはやっぱり縞があるほうがカッコいいですねぇ」
「うん♪ グリーンがそういってくれるなら……オレもそう思う」
「私も白虎になりたいです~そうするとおそろいになるんですよぉ」
「じゃぁ……今晩俺の部屋にきなよ……www」
「一緒に寝たいです」
「う……うん♪」
「良い……凄く良い……」
様々な妄想を抱きながらホランは夢心地だった。
「……ヘンタイめ」
「黙れタイガ。オレの幸せを邪魔するな」
グリーンはどうするのかと団長の顔を窺った。
「……悪いがホランさん」
「ほ、ホランって呼んで……」
「なに顔赤らめてるんだよっ!」
タイガからツッコミが入る。
「ホラン……悪いけど俺達はもっと別な事がしたい」
「そ、そんな!お、オレの会社に来れば……安泰なのに!悪いようにはしないよ……」
「ちょ、ちょっとその会社は危なそうだから……それに実はもう決めてあるんだ」
「では、どちらに?」
グリーンは団長に言った。
「ボランティアでもしようかなと思うんだ。こんなにいるんだし200人もいればほとんど安全だ」
「じゃぁ、何処かへ行っちゃうわけですか?」
「ん。とりあえず5人づつ分かれて40箇所へ行く。……当分会うことは無いだろうなぁ」
すでに他のグリーンも納得していたようだった。
グリーンも黙って微笑んだ。
「……じゃぁ、隊長。がんばれよ^^」
「……は、はい!みなさんも……」
「あぁ、がんばる! レッドによろしくな」
団長はグリーンの足元の写真立てを取ってグリーンに手渡したしかしグリーンは首を振る。
「……レッドの事はもういいんです。私はもう、レッドには頼りません」
「……そうか」
去っていくグリーン達を見送りながら全員は上へ出た。既に朝日が差し込んできて一日の始まりを告げようとしていた。
グリーンたちの後姿に隊長は手を振り続けながらグリーンは思った。
「(みなさん。私、がんばってみますよ……)」
ほぼグリーンたちが見えなくなった所でシェンナがふと呟いた
「……でも、結局は年下なんですよねー」
クリームがシェンナの頭をぐっと押さえつけた。