第33話
『タイガ豹変 -勃発編-』
(挿絵:パープル隊員)
今日は街へお散歩のタイガくん。
ナンパもことごとく断られてしかたなくその辺をぶらぶらと歩いていました。
「暇だな~……ん?」
路地裏にひっそりと見える「堂」の文字。
「……隠れAVショップかな?」
その怪しげな雰囲気にひきつけられたタイガはどんどん奥に入っていきました。するとそこには……。
「……尾布骨董堂……?」
いかにも時代に流されてひっそりと物好きのみが通う駄菓子屋のように小さく。
ビルの陰で少し寒く、木造の建物は少し時代のにおいを感じる。外から見た感じとても若者さのない場所である。
「……すげーいけてねぇ~……でもまぁ……入ってみるかな暇だし」
なんとなく骨董屋に足を踏み入れると何だか別世界のような感じがした
暗くてじめじめしていてかび臭い。 棚のふもとにはコケやキノコがちょこんと生えている。
「えーと……何かよさげな物は……っと」
360度 掛け軸や皿や壷やらありきたりな物。 どれもイマイチだなとタイガは思った。
もっとこう……危ないアイテムとかイケナイ本とか期待していたのだがやっぱりあるわけが無い。
「このコケだらけの壷も高いのかな……?むー……」
「……その壷は200万だね」
「ぉわっ!」
突然ぬっと棚の影から現れた変なおやじ。多分ここの店主だろう。店主はタイガの顔をじっと見て。
「お客さん……良い眼をしてるね」
「え……オレ?」
「赤く透き通ってる良い眼だ」
「え、あ、あぁ……そうかな?」
「そんな君にはこの500万円の唐の時代の孔子が書いた掛け軸を格安で売ってやろう」
と、墨が滲んだ汚らしい掛け軸を広げていった。誰がそんなの買うかとタイガは思った。
「良い眼をしてる=見る目があるってことだよ 特別に499万円に割引でどうだ!」
「1万円だけかよ!っていうか孔子って絵師じゃねぇだろ!」
「フン。見る目がないなお前さんはやっぱり……まぁいいわい。 見る分には壊さないようにしてくれ」
「わかってるよ。誰が壊すか」
おやじはブツブツ文句を言いながら棚の奥へと帰っていったなんだあいつは……。
「ったく……えーと……何か面白そうな物は……ん?」
【中国聖獣】と書かれた大きな箱。
字体も何だか古めかしいし、箱も黒ずんでいて中をあけると龍やら朱雀やらの像が入っていた。
「青龍……白虎……朱雀……玄武ね。白虎は問題外として……あれ?もう一個あるぞ」
大きな金の玉を片手に持ち天に向かって吠えている虎の置物が入っていたタイガは見るなりこの銅像に心を奪われてしまった。
「……おぉすげぇ……かっこいい……」
「それは高いよ……」
「ぉわっ!またかよ!」
「あれ?そんな虎の置物なんて入っていたかな……?まぁいいわい。それは高いよ」
「いくらだ!なぁ!いくらなんだ!買ってやるから!」
何処から紛れ込んだか知らない銅像だがおもいっきり高く売ってやろうと考えた今の状態ならいくらでも出すだろうと店主は考えたからだ。
「そうだな……普通なら10億はくだらない……」
「じゅ……10億!? だ、ダメだ……こうなったらオオカミを売ってでも……」
悔しがっているタイガの方を叩きながら店主は三つ指を突き出して叫ぶ。
「とぉこぉろぉがぁぁぁ!!!!お買い得プライス!たった30万円に負けてやろう」
「ほ、ホントか!?」
「キノコの生えた骨董屋の主人は正直者で親切でハンサムなのだ……」
「あっ!ありがと!おじさん!オレ30万円なら持ってるよ!ちょうどあいつらの給料の半分!」
「……28……29……ハイ30万ね。まいどありー」
何の迷いも無く30万を手渡すとタイガは満面の笑みで置物を見た。
おじさんは銅像を発泡スチロールの箱の中に綺麗に入れてくれた。
「サンキュー!おじさん! 今日は良い買い物したぜー!」

……帰宅すると早速タイガは自分の部屋に虎の置物を飾った。
この置物を置いただけでこの部屋が豪華な宮殿の一室のようにも思える。
「……かっこいいなぁ……やっぱ。この角度が一番いいかな?」
早速雑巾で綺麗に拭く。……あそこのカビを貰ってきた気がしたから。
「……よし!これで完璧!」
タイガはその夜。 いつもの半分しかない給料をオオカミに配ると虎の置物を真横において眠りについた。
あちこちから「なんか少ない」という言葉がチラホラ聞こえたがあえて無視した。
そのころ。僕らのOFFレンジャーは何か知らないが悶えていた。
「あぁっ……だ、ダメ……そこは……うぅ……」
「ダメだね……ここ……ここだな……」
「だ、ダメだってば……あぁ……もう」
みんなで楽しく神経衰弱をやっていました。
ここの所神経衰弱がOFFレン内で大ブーム。衰弱しきって数名運ばれたがまだブームの火は衰えていない。
「いやぁ~……なんだか興奮するね。思わず声もやらしくなっちゃうよ」
「神経がほんとに衰弱しそうですよね」
コンコン。
「あぁっ……ダメ……そこには……うぅ……5が」
「ダメだね……こっちにも5があることを知っているんだ……」
「だ、ダメだって……あぁ……取られちゃった……」
「じゃ、もっかいオレね」
コンコン。
さっきから誰かが咳をしているのでも、キツネが鳴いている訳でもない。
誰かが玄関のドアをノックしているのだ。インターホン完備のこの本部で玄関をノックするのは珍しい。
「うるさいなぁ……さっきから2がわからなくなったじゃないかぁ……」
グリーンが玄関に出ると4人の猫さんが玄関の一列に並んでこっちを見ていた。
「……セールスはお断りですよ」
グリーンは一応その厳格な雰囲気にささやかに対抗した。それと同時になんだか神々しさを感じた……。
「OFFレンジャーさんですね?」
「……どなたですか……?」
「…………えっと……」
4人は顔を見合わせて困った素振りを見せた。まるで宇宙人が地球人に『宇宙人ですけど』って言っても信じないだろうなぁって顔だ。
「……あの。信じてくれないかもしれませんが」
「(きたっ!やっぱり宇宙人だ!)……はい!いらっしゃいませ!宇宙人さんですね!」
「いえ、聖獣です!」

聖獣さんとやらは即答をした。それと同時に1名づつ名刺を差し出した漢字だらけで読めなかったが中央の大きな文字だけは読めた。
「青龍……白虎……朱雀……玄武?」
「はい。名前くらいは聞いたことがありますでしょう?」
「まぁ……なんとなく……」
「ベイブレっすね!!」
ブルーの声でぞろぞろと他の隊員が玄関に集まってきていた。
しかし、グリーンには気になることが一つ。
「でも。みなさん 猫ですよね……?」
たしかに、皆は猫だ。白虎はともかく、青龍はドラゴンで、朱雀は鳥、玄武に至っては亀(クリームじゃないよ)のはずだ。
「いや、なんというか……本来の姿だと地下に入れないし驚かせちゃダメだよねーと」
「いや、その姿で聖獣ですといわれたほうが驚きます」
「まぁ、この姿のほうが活動もしやすいですし何より挿絵の方も書きやすいかなぁと」
さすが聖獣、挿絵の人のことも考えて……ってそういう事じゃない。
半信半疑でグリーンは彼らの姿をマジマジと見つめた。
青い猫さんは穏やかそうだが少し龍の面影が見える赤い猫さんはいかにも朱雀!って感じで羽がちょこんと背中についている
白い猫さんはキリっとしていてタイガやホランよりもかっこいいし、縞模様もずいぶんと手が込んでいる
薄緑の猫さんは亀らしく優しそう……。甲羅はやっぱり背負ってなかった。
「ホントに聖獣なんですか?」
「信じませんね?」
聖獣4人は手を合わせてなにやら目を閉じブツブツと何かを唱え始めた。しばらく見ていると目を開け、何かやり遂げたような笑顔で言った。
「ハイ!とりあえずオーストラリアを消しておきました」
一口メモ『(ここで某サスペンス劇場のテーマの冒頭を流しながら読むと臨場感抜群!)』
「う、すいません!そういう国交化の問題になるような発言はあまり……」
「ダメですか?じゃぁ、次は韓国でも……」
「いえ、韓国はそれは後々……OFFレンに絡んでくるんでご勘弁を……」
『仕方ないな』といった感じで聖獣さん達はパチンと指を鳴らすと少し地面が揺れ、どうやら戻ったらしい雰囲気になった。
「信じていただけました?」
「……まぁわかりました」
こっちが理解を示すと聖獣は急ぐようにずかずかと本部に上がりこんでロビーのソファに座り始めた。
どうも腑に落ちない一同はぞろぞろとロビーに入りトランプを片付けその場に座り込んだ。聖獣に見下ろされているとは随分と不思議な感覚だ。
「あの、最近の人は聖獣にお茶も出さないんですか?」
朱雀さんがじっと女子隊員を見て不服そうに言う。
「す、すいません!聖獣が部屋に来たらお茶を出すように育てられていないもんで」
「……まったく。最近の親はなってないみたいね」
「なんかむかつくですー。あんた何様~?みたいな感じですー!」
シェンナが朱雀を指差す。すると朱雀がジロッとシェンナを睨んだ
それに少し怯えたシェンナの指は次第に横へと移動する。
「……ってオレンジが言ってますー」
「えぇっ!?」
オレンジはこの時少しシェンナを怨んだ。
「まぁまぁ、朱雀。私達もそんな無理強いは良くない」
「……そうね。青龍」
「オレンジもいくらムカついたからって言って良い事と悪い事が」
「えっ!?ち、違うよぉ!!」
「わかりました……私はオレンジがホントは優しい子だって知ってます」
青龍はそんな朱雀を、グリーンはオレンジをなだめた。
「ち、違うんだってばぁ……」
「ところで、用件はなんでしょう?」
オレンジの声をさえぎるようにシルバーが青龍に質問する聖獣たちは思い出したように話を元に戻した。
「あ、そうそう……蝶ネクタイをつけた虎猫をご存知ではありませんか?」
「……まさか片目に眼帯してました!?」
「いえ、そんな井出達ではありませんでしたが」
「そっか……」
思い当たる節をなくしてOFFレンは悩んだ。
その時、ナイスタイミングでピーターとピンクが良く冷えた麦茶を4つ聖獣の前に置いた。
「(ナイス!ナイスです!『Wピ』!!)」
しかし、聖獣はグラスの中の麦茶を覗き込んで。なんだか不思議そうに顔を見合わせた。
「あのー?これなんですか?」
「え、む、麦茶ですけど……?」
そういうと聖獣はグラスをすっと押して青龍が申し訳なさそうに言った。
「すいませんが……我々烏龍茶が大好きなんです。昔の人々は聖獣に烏龍茶を良くお供えしていたんですけど」
「あ、そ、そうなんですか……私達、聖獣に烏龍茶を出すよう育てられていないものでして」
「……そうですか」

そういうと急いでパープルが烏龍茶を冷蔵庫から取り出してグラスに注いだ。しかしそこでも聖獣は怪訝な顔をしてグラスを自分から遠ざける。
「あのー。できれば無添加の方が」
「へっ!?無添加!」
「添加物嫌いなんですよねー。聖獣はデリケートな物で」
ふぅと聖獣はため息を付いた何だか納得がいかないままグリーンはコンビニへ転送装置を使って出発した。
数分後。無添加烏龍茶(98円)を4つ買って聖獣に差し出した。4人はごくごくとそれをおいしそうに飲み、早速話し始めた。
「それでは……早速話しますけど……その虎猫がですね……」
「あぁ!タイガくんじゃないんですか!?」
「おぉそうだそうだ!!」
「すごい!すごいよぉ!」
聖獣は裁判官のように机を叩いて仕切り直しを始める。
「その……退化くんですか?」
「タイガです」
「……タイガくんが我々のいた骨董屋に来たわけです」
「骨董屋ですか?」
グリーンはもっと……シルクロードの何処かの洞窟の奥の宝石から……などと誇大な考えを抱いていたのだがあっけなく壊された。
「我々は骨董屋の聖獣の像に成りすまして普段を過ごしているわけです。もう700年余り」
「はぁ……そですか」
「日本にはオイルショックのどさくさに紛れてやってきました。30年ですか?」
30年。まだ隊員の誰も生まれていない年だ。
まぁ聖獣にとっては30年なんて1週間みたいな物なのだろう。
「で、もう一体。我々が悪さをしないように見張っていた 闇虎の奴を」
「闇虎?」
「昔々、中国の邪悪な獣の1人です。他にも3匹いますが闇虎は人一倍目覚めがいいんです」
「そいつも……像にして我々が見張っていたのですが……」
「よりによって……タイガが買っていったと……」
「……はい」
聖獣は残念そうに下を向いた。
「でも、聖獣さんがいれば大丈夫ですよね?取り返せば」
明るくみんなで笑い飛ばすと聖獣達が深刻な顔で首を振った。
「……ダメなんですか?」
「あいつは……人に取り憑いて悪事を働くんです。特に悪人であれば悪人なほど取り憑かれやすいんです」
「では……タイガが」
青流は静かに首を縦に振った。
「闇虎が他の3匹まで目覚められたら大変です……!タイガくんとやらの場所を教えてください!」
「……我々が目を離した隙に買われなければこんな事をお願いしなくてもよかったのですが……」
「眼を放した隙に……ですか」
「えぇ、ちょうど神経衰弱で神経が衰弱していた時です……そんな時に……」
聖獣は部屋の隅のトランプの束を見た。
「お好きなんですね……トランプ」
「えぇ、することもないもので……そ、そんな事より!タイガくんの場所へ行ってください!」
「あれ?聖獣さん達は行かないんですか?」
そういうと4人は急に静まり返って烏龍茶をいっせいに飲み干し、
「……烏龍茶を飲んだので行けません」
と綺麗にハモって言い出した。
「……素直に行きたくないって言ってくださいよ」
「いや、 聖獣も結構デリケートでして、長く活動は出来ないんです」
「……?」
「この姿で長時間いるのは結構力を使うので……」
そういって4人はソファに深く座って眠り始めた。
「……わかりました。ではゆっくりおやすみになってください」
「あ、帰ってくるときに烏龍茶をお願いします」
「ハイハイ……」
「あ、無添加です」
「ハイハイ無添加ですね……」
ちょうど本部を出ようとしたとき時計がなった。
時計はすでに10時を差していて……結局明日に延期された。
「じゃぁ、みなさんも寝てください」
「グリーンはどうするんですか?」
「私は……烏龍茶を買ってこないといけないので……誰か代わりに……」
隊員は既に部屋に帰っていた。
日も空けたころ、タイガは布団の中に入ってすやすやと安眠していた。
「……ガオー」
「きゃ~♪タイガくんって可愛い♪」
「……ガオガオー」
「可愛いね~もうなでなでしてあげるねっ♪」
何人ものセミヌードの女性に囲まれてタイガ自身が甘えている夢。夢は人の願望を表すというがまさにその通り。
「なでなで……フフ……ん?」
その日は目覚めが悪かった。昨日横においておいた虎の置物が頭にこつんと当たったからだ。
「……むにゃむにゃ……せっかくいい夢見てたのによ~……」
なんだか起きだちのせいか体の調子が悪い……。
なんだか肌の褐色も悪く、黄色未も少し薄い気がした。
「タイガ様。朝食の用意が出来ましたけど」
オオカミの声がドアの外から聞こえる。まだ寝癖もついたままで半分夢うつつだ……。
「む~……食欲ねぇなぁ……」
いつも美味しい朝食が今日は何だか食べられない。
美味しそうなコーンスープも冷えて膜を張り始めた。パンとハムエッグも今回は何だか邪魔なだけ。
「はぁ……なんだかなぁ……」
朝食を食べるのをやめて鏡に向かう。蝶ネクタイをますっぐ水平につけて……。ヘアスプレーをつけてブラッシング。
「……ちょっと顔やつれたかな……?」
昨日までハリのあった肌が少しザラザラ……ダメだなぁ……
ちょっと敬遠してたパックを始めないといけないのだろうか。
「これじゃぁ……ホワイトちゃん達に……ま、いっか……今日相手する気しないし」
いつもの女性への欲もない。なんだか今日はとことんよくのない日だ。タイガは鏡にそっと手を当ててため息をつく。
「……はぁ……クスリでもやってみようかな~……」
「あなたって人はすぐにそういう方向に走っちゃうんだから困り者ですね」
オレの後ろで声が聞こえる。OFFレン達の声だ。
「……おまえらか……」
「無気力ですね。タイガ」
「うん……なんかいろんなことめんどくせぇんだぁ……」
「じゃぁ女子達をくどく気はないわけ?」
「あぁ……」
「この朝食食べちゃっていいわけ?」
「あぁ……」
「じゃぁ、この虎の置物も壊していいんだね?」
「あぁ……」
「じゃぁ、早速」
グリーンが虎の置物を掴んで部屋を出ようとした。
するとタイガがすばやい動きでグリーンを取り押さえ爪をちらつかせる。

「……バカかお前ら。誰だろうがこの虎の置物だけは渡させないからな」
「で、でも……ね?その置物古臭いし……あ、殺人事件の証拠品なんだ!」
「この虎が凶器なんだよ!危ないでしょ?」
「嘘をつけ……?」
「あぁ、いやそのぉ……それ変な霊が取り付いていて危ないんだ」
「殺されるよ!」
「ふ~ん……」
タイガは虎の置物を自分のベッドの上に放り投げた。
「じゃぁ、除霊でもすればいいんだろ?」
嫌味な表情で必死に説得をするグリーンの頭をポンポンと叩いた。
「あぁ、そのぉ……うぅ……」
「もう、グリーン頼りないんだからっ!」
ホワイトがいつまでたってもうじうじしているグリーンを肘で小突く。
「す、すみません……」
「タイガくん!いいから渡して!っていうか壊して!」
「……いくらホワイトちゃんの頼みでもそれは嫌だ……」
「じゃぁ壊したらデートでも何でもしてあげるから!早く壊して!」
タイガは頭をコリコリとかいてベッドに再びもぐりこんだ。
「今日はそんな気無いんだ。もうオレ寝るから……でてってくれよ」
「でも!早く壊さないと!」
「ホワイトちゃん。 あんまりしつこいと……オレも怒るよ?」
「っ……」
さっきまで強気だったホワイトが言葉を詰まらせた。
布団の中から少しだけ出したタイガの目が少しだけ怖かった。
「もう、いいだろ……お前達かえれよ。今日は」
「帰るわけには!いかないぞ!」
「……オオカミ。OFFレンがお帰りだ」
その時オオカミが入ってきて全員を部屋の外に連れて行く
OFFレンは抵抗したがかなわなかった。仕方なく一旦帰ろうとしたとき、オオカミが数名小さいな声で話しかけてきた
なんだか心なしか顔色が青ざめて見える。
「……お前らもあの置物……」
「オオカミも何かあったの?」
「……あぁ。先日タイガ様の部屋を掃除中にオオカミ383号が変な幽霊を見たそうだ」
「幽霊?」
「動物霊だったみたいだぞ」
「虎の霊じゃない?」
「それを連絡した383号はタイガ様に遠くの町に飛ばされたよ。可愛そうに……」
オオカミは肩を落として部屋に戻っていった。OFFレンは顔を見合わせてタイガの扉を外から見るしかなかった。
その晩。聖獣さんたちに今日の事を報告した。
「……そうですか」
「青龍……まだ大丈夫だとは思うけど心配ね」
「オレが思うに……。もうそろそろだと思うぞ。なぁ?玄武」
「そうだな白虎。あいつはもう徐々に憑いてるな」
「だから元気なかったんだ。タイガくん……」
青龍さんが突然立ち上がった。
「……仕方ありません。我々がなんとか闇虎をどうにかするしかありませんね」
「青龍……。本気かお前」
「白虎。早くしないと世界が危険なんだぞ」
「そうだぞ、白虎。いくらあいつが強大でも……早いほうがいいだろ」
聖獣たちが深刻に話し合うOFFレンジャーはそれを見て興奮した。
「せ、世界だって!」
「僕ら世界規模の戦いはしたことないよ!」
「もうちょっとシリアスに決めないと」
「ギャグ入ったままですからね!」
「えぇと……えぇと……」
「とりあえずBGM変えてきますっ!」
そんなOFFレンをよそに聖獣さんたちが計画を話していた。
「で、あいつの憑依がどれくらいかにかかるな」
「タイガくんとやらはよほど気に入っているだろうからな……不安だ」
「我々がいくしかないか……」
「そうだな……OFFレンジャーさんたちに迷惑をかけるわけにも行かないしな」
「その前に……烏龍茶を買ってきてもらうか。喉渇いたし」
「だな。もちろん無添加で」
聖獣の周りにはたくさんの烏龍茶の缶が巻き散らかされていた。4人は最後の一本を美味しそうに飲みそれがまた缶の山を作った。