第42話
『悪の組織も世代交代!?』
(挿絵:シェンナ隊員)
最近ずいぶんとだれて来たOFFレン本部のこの日常……。
「なんか最近ヒーローって感じしないよねぇ~」
「そうそう。ボックスさえあれば各武器なんて要らないし~」
そんな言葉が飛び交うまでになってしまったのは向こう側も同じこと。
「タイガ様~。OFFレン倒しにいきますか~?」
「うーん。めんどくさいからいいや~」
「そうですねぇ」
「ワハハハハハハハハハハハハハ」
すっかりこの1、2年でお互いの素性が全て暴露してしまっていた。
OFFレン側は所詮子供で考えが浅はかだし、敵側はボスが馬鹿だし部下もそれに従うしかなくまず油断しててOK。
互いが互いのアジトに自由に出入りできて全く警戒心という物が皆無。事実上、敵でもなんでもない。
終いには親睦を深めよう!……なんて事になるかもしれないところまで迫ってきている。
「……フン。これが正義と悪の闘いの間に広がっている緊張感だとは笑わせてくれる」
そんな2つの間を遠めに見ながら彼らは大阪の街に足を踏み入れた。大阪の街は再び新たな驚異を迎え入れてしまったのだ……。
「ぅぉっち!」
突如奇声を上げながらブルーはその場にうずくまった。
「どうしました。ブルー」
うずくまったまま小さく震えているブルーが気になってグリーンは声をかけた。
「TVをつけようとしたら、せ、静電気が……こう、バチッ……と」
「ハハハ。静電気ぐらいで大げさな」
グリーンが笑いながらTVのスイッチに手をかけた。
「ーーーーーーっ!?」
グリーンも笑顔を早速切り替えグリーンの真横でうずくまった。どうやらただならない静電気が彼らを襲ったようである。
「こここ……困りましたね。これじゃぁうかつにTVには近づけません」
「そそそそそそ……そうっすねぇ」
ブルーが立ち上がろうと側の電気ストーブに手をかけた。
「……んごぅぇゎ!?」
再びブルーは物凄い顔をして右手を押さえながらうずくまった。
グリーンもストーブに手をかけそうになっていたので触らないようにして立ち上がった。
「こ、これは一体……? いくら冬の風物詩、静電気だからといってこれはオカシイと思いませんか?」
「あ、ちょ、ちょっと……今の俺に振らないで下さい……」
「じゃぁ、イエロー。どう思いますか?」
イエローはしばし考え込んだが、どうも思い当たる節がないようだった。
「……これはやっぱりオオカミ軍団の仕業だと考えるのが筋だと思うなぁ」
イエローの隣にいたオレンジの発言が最も有力的なようだった。多分何を企んでいるかは知らないが行ってみるより他ない。
基本的に不思議現象が起こるのは敵の仕業というのは基本中の基本なのだが……。
「あ、俺の痺れが取れるまで少し待ってください……」
「うぎゃわぅぇぉぁ!?」
騒ぎを聞いてオオカミが駆けつけるとタイガが床の上でゴロゴロとのた打ち回っている姿が確認された。
誰かがいたわけでもなし、不審物があったわけでもなし、ただのた打ち回っている。そう、ここはオオカミ軍団タイガの部屋。
「えーと、どうしましたか?」
「ぱ、パソコンで……アダルト動画見てたら……左手が……うぅ」
少し涙目になりながらタイガは左手に異常がないか確かめていた。PCには未だ恥かしいムービーが流れている。
「せっかく……人が気持ちよくぬ……」
「ハイハイハイ……タイガ様。早くPC切りましょうね」
どうせ腕がつったか何かだったのだろうとオオカミ達はさほど気にしなかった。
「ぐぅっごぇ!?」
しかし、オオカミがPCに触れた途端バチッと火花が走ってオオカミはPCと反対方向に吹っ飛んでいった。
「な、なんだ今の火花は!?」
先ほどの火花が気になったのかオオカミの中から研究員が数名PCに近づいてなにやら機械を当て始めた
メーターをなんども確認してはノートPCに打ち込みなにやらの処理がすんだのかようやく結論が出たようだった。
「ふむ……。かなり多量の静電気が発生したようですね」
「せ、静電気!? なんだそれは!? 」
「……面倒くさいのでかなりはしょって話します。かくかくしかじか……とまぁこういうことです」
静電気の説明を聞くなり、タイガはベッドに飛び乗って毛布に身をくるめた。どうやら電気がバチッと来るのに恐れているようだ。
「そそそ、そんな恐ろしい物がこの地球上に存在しているのか!?」
「何を今更……まぁ。確かに不思議な現象にも思えますが」
「お、オレは、もうあのバチーって言うのは、経験したくない……」
タイガの顔はごくたまに見せるあの不安そうな顔だった。
「ですが、あそこまでの威力になるはずは……これはなにか作為的なものを感じます」
「さ、さくいー?」
「……要するに、誰かが仕掛けた罠かもしれないわけです」
「そうか!OFFレン男子だ!あいつらオレばっかり女子にもてるから僻んで、PCを触らせないようにして欲求不満にさせてストレス死させるつもりだな!?」
タイガは勝手にそう思ってはいたが、研究員はもちろんそうは思えなかった。
いくらOFFレンでも今までの出方から行ってこんな大掛かりな事をするとも思えない、ましてやこんな知的な作戦を思いつくはずがない。
「……オイ!研究員のオオカミ達!なんとかしろよ!オレは一日一回はエロいのと虎柄を見ないと気が済まないんだ!」
「タイガ様。これはもしかしたら我々の知らない誰かの仕業では……」
「な、何!?じゃぁ、ホランの奴だな!?」
「いや、もっと……別な奴だと思います、この機械の検査によると……」
検査機を持ち上げた途端、研究員は何かを感じたのか急に検査機を床に落とした。
「……ば、バカな……」
右手を押さえながら研究員の顔は驚いていた。どうやら彼にも静電気の魔の手が伸びていたようだった。
「先ほどまではなんともなかったはずだが……」
「空気が多量の静電気を帯びているのか……? だが、そんな科学的な……」
「何だ!?オレにもわかるように説明しろ!」
深刻なムードになるタイガの部屋。うかつに電化製品には触る事が出来ない。
触れば痛いだけではなく、最悪の場合発火する恐れがあったからだ。そこへ、オオカミが慎重に静電気が起こらないように部屋へ入ってきた。
「……タイガ様。OFFレンがやって来ましたが」
「え。じゃぁ、通すように言え♪ さてはオレに謝りに来たんだな。 女子は優しいからなぁ~」
イライラも何処へやら、タイガは満面の笑みで上機嫌になった。
「は、はぁ……」
オオカミが去ってしばらくするとOFFレン一同がバタバタと部屋の中に入ってきた。
その際に数名が静電気の被害にあったらしく痛そうに腕をさすっていた。
「やほやほー♪ ホワイトちゃん。今日も可愛いね~♪」
「……静電気どうにかしないと締めるぞマジで」
痛そうに手の甲を摩りながらホワイトは低い声で呟いた。
「にゃははーw その挨拶いけてるねー♪ 何々?学校で流行ってんのー?」
「タイガくんの仕業ってことはもう解ってるんですからねー。裁判起こしますよー!20年くらい長い奴をー!」
シェンナも頭をさすりながら多分……怒っていた。
「え、何が?」
「馬鹿みたいな静電気に襲われたんですよ。ブルーという尊い犠牲を出してしまったんですよこっちは」
「お、お前らもか!? オレも静電気のせいで……パソコンが」
タイガは誰も近づいてないパソコンを指差した。
どうやらこの事件は両者どちら側のたくらみでない事が明らかになった
いつ終るかわからない静電気の恐怖にOFFレンもオオカミ達もただ、恐れるしかなかった。
「……や、やっぱり研究員の言うとおり、何者かの仕業か?」
「まだ予想の範囲を出てはいないが……その線は確かだろう。超常現象で片付けるには不可解な事が多すぎる」
研究員の言葉にOFFレン側の表情も次第に強張り始めた。
今晩のTV番組がこのままでは見ることが出来ない不安を耐えるだけでも彼らには試練だったのだ。
「なんとかして原因を調べられないんですか?」
グリーンの言葉にオオカミ達からは何も帰ってこなかった。
目に見えない恐怖という悪質な罠だけに、その原因を特定するのも容易ではない。ましてや、その関係者となると……。
「……待てよ。月刊『悪者の友』を見れば何か解るかもしれないぞ」
静まり返ったタイガの部屋にいたオオカミの誰かが言った。
その途端。「それだ!」と次々にオオカミの群集は騒ぎ始める。
「……悪者の友?」
「お前らは正義側だから知らないと思うけど、悪の団体に毎月送られてくる月刊誌の事だ」

タイガは側の本棚から最新号と思われる『悪者の友』をグリーンに差し出した。ずいぶんと読み込まれているようでページの所々に折れや手垢があった。
「オレ達オオカミ軍団も一応、載った事があるんだぜ♪ 巻頭カラーでな」
「はぁ……」
さすが、悪者の友というだけあって内容が物凄く濃く、ディープな代物だった。
最近誕生した悪の組織の情報や伝説的な悪の組織を懐かしむ記事、悪事の手口紹介、果ては投稿コーナーまで存在していた。
また、アンケートコーナーまであり今号のお題『評判の悪い悪の組織は?』の第一位『O軍団』と悲惨な結果となっている。
「オレの必読書なんだぜ~♪悪者にはたまらないつくりでさ~もうワクワクするんだよな♪」
嬉しそうに悪者の友を手にするタイガ、どうやら自分の軍団が最悪の評判だと気づいていないようだった。
「……それで、どのページを見ればいいんですか?」
「え?た、多分……悪の組織お引越し情報じゃないか?」
『悪の組織も定住ばかりしてられない!』という迷文句と共にお引越し情報のページがそこにあった。
今月だけで移動する悪の組織は12団体。そのほとんどがやはりというか関東を中心にし移動しており残りの団体も九州地方ばかりだった。
「関西方面には悪の組織は来てないようですが……?」
「何ぃ!悪者の友に載ってないなんて……」
よほど、この雑誌が好きで信頼していたのかタイガは初めて頼りなさを感じていたようだった。
もっと良く調べようとグリーンはページを次々にめくっていった。
今月で解散する団体やら、戦闘員募集の広告のページが長々と続き再び本誌は間のカラーページに戻ってきた。
「あ、この新結成団体紹介はどうでしょう?今月は……一つだけですね。本拠地は……不明」
「な、なんて奴らだ!?」
「えーと……」
タイガの部屋に緊張が走る。まさかここまでいろんな部屋の空気が体験できる部屋だとは誰しも思わなかった。
そして、グリーンは一番重要な団体詳細部分が綺麗に破かれたページを見せた。
「…………破れてて読めません」
「何ぃぃぃぃーーーーーっ!!!!」
一同の目はタイガに向けられた。
タイガは何故破れていたのかわざとらしく腕組みをしながら考えていた。
「……お! ティッシュがなかったからそれ使っちゃったぜ~♪」
「た、タイガ様……困りますよ。花粉症じゃあるまいし最近使用量多いですよ……頼みますから自粛してください」
「そんなことよりも、とりあえずそいつらが怪しんだな?」
「……話を聞いてください」
破れていては何物か確認する事も出来ない。おまけに各団体に一冊のみの支給なので2冊目はないらしい。
バックナンバーの申し込みも出来るが何分発送先が悪の団体のため、正義側の攻撃による紛失等を理由にまず発行1週間以内で在庫がなくなってしまうとのこと。
編集部に問い合わせたいものの、時間はとっくに過ぎている。どうしようもなかった。
「……フム。困りましたねぇ」
「じゃぁ、保留で」
「いやいや……それはちょっと」
OFFレン側もどうしようもなかった。そもそも、悪者の友なんてある意味いかがわしい雑誌など正義の味方に用はないのだ
しかし、タイガの部屋の狭い事狭い事。さきほどまでPCの周りを空けていたスペースが埋まった為に中の人数も倍になっている。
「ん?ちょっと待ってくださいよ。なんか違和感が……」
《PCの周りを空けていたスペースが埋まった為に中の人数も倍になっている》。
「……なんですかー?」
「しっ……黙って」
《PCの周りを空けていたスペースが埋まった》
「……んぁっ!オレのパソコンがない!」
何度も地文を読み直したおかげかようやくタイガの部屋にあったPCがなくなっていることに気づいた。
誰かが運んだにしても静電気が発生するわけだから誰かが気づくはず。
「ヤーバーイー!あれにはオレの極秘ファイルがぁぁ!!」
「誰かタイガ様のPCを持ち出した奴を見なかったか?」
オオカミ達は互いの顔を見合わせたりPCのあった所を詮索し始めたが何も見つかるはずはなかった。
タイガはただ、よほど人に見られたくない物があるのか焦燥に駆られ、OFFレンはよくわからず呆然と立ち尽くしていた。
「シェンナ知ってますよーオオカミの気ぐるみを被った変な猫さんが担いでいきましたー」
急にシェンナが入り口の方を指差しながら遅すぎた真実を発表してきた。
「何ぃ!?シェンナ!何故それを俺達に教えなかった!」
「シェンナ知らないおじさんに喋っちゃいけないんですよー!シェンナ偉いですねー」
シェンナに対する怒りを抑えつつ研究員、OFFレン、あとタイガは部屋を飛び出し何処にいるか解らないその犯人を追いかける事にした。
だが、当然見つかるはずもない。しかし、大阪の街を探索しているうちに奇妙な事に気が付いた
電化製品が大量に何者かの手によって盗まれているという事だった。どうやら静電気のせいで触る事もままならなくなっていた最中に盗まれたらしい。
「むー。どうやらやはり例の新組織の仕業かもしれませんね」
「お、オレの……裏ファイルが……パスワード盗み出して苦労して手に入れたファイルが……」
「タイガくんも落ち着いたらどうですかー? シェンナなんて平然としてますよー」
「そうそう……。あの人も見てくださいよDVDプレーヤー盗まれてるのに気づいてないんですから」
グリーンの目線の先にDVDプレーヤーを担いで走り去っていく灰色の猫がいた。
ご丁寧にそこそこ人ごみの中では目立つ色だったので追いかける事が出来た。
「きっとアイツが犯人だ!」
「待ってください」
タイガが灰色の猫に飛び掛ろうとするのを研究員は急いで押さえ込んだ。
「はーなーせーぇ!」
「早まってはいけません。見た感じあれは、部下でしょう。的の居場所を突き止めるチャンスです」
「そうですよ。何かあれば我々がなんとかしますから。必ず最後に正義は勝つんです」
そうこうしているうちに灰色の猫は人気の無い路地へと消えていった。
すぐさまOFFレン達が路地を走っていくとぽっかりと開いた変な空き地に到着した。
そばには鉄塔が立ってあり数名の灰色の猫がマンホールの中へと電化製品を詰め込んでいた。
「やはり、あれは戦闘員……。特撮番組ぽくなってますね」
緊張か、はたまた興奮のためかグリーンの気遣いが少し荒くなっていた。
「オレのパソコン~……」
「しっ……他に誰かいるみたいですよ」
灰色猫達が電化製品を運び終えると一列に整列を始めた。するとその向こうからマントに身を包んだ紺色の猫がゆっくりと近づいてきていた。
「……よし。灰色猫達よくやったな」
「ハッ!光栄です」
「───だが」
突然灰色猫達の中の一人の頭上に稲妻が発生し、灰色猫の真上に落ちた。
灰色猫は叫び声一つも上げずに稲妻の衝撃を受け稲妻と共に消え去っていった。
「……愚か者が、後をつけられていたとも気づかぬとは……所詮は機械仕掛けのガラクタか」
首領らしき紺色の猫はこちらをジロッと睨んだ。
どうやら既に気づかれていたようだった。OFFレン達は隙を見せないように彼らに近づいていった。
研究員は飛び掛ろうとしているタイガを押さえるのに必死だったがそこは根性で頑張ってもらおう。
「貴様達が……OFFレンジャーだな。会えて光栄だ……と行きたいところだがそういうわけにも行かないな」
よく見ると紺色の猫は顔には変な模様、冷たい色の瞳、首には鎖とベタな格好をしているいかにもな悪役姿だった。
「このやろー!オレのパソコン返せぇぇ!!」
「そっちはオオカミ軍団の一味か。悪者の友の記事楽しく見せてもらっているぞ……。少しは真面目に悪事を働いたらどうだ」
「何ー!?おまえは誰だ!?名を名乗りやがれー!」
紺色の猫はバサッとマントをひるがえし名乗り始めた。
「俺の名はウィック……ブラックキャット団最高幹部……」

「ブラックキャット団だと!? 目的は何だ!?」
ここで、お決まりの台詞がまさかタイガから発せられるとはOFFレン達は想いもよらなかった。
「目的……?俺はただブラックキャット様の仰せの通りに従うのみ。それだけだ」
「あなたがこの静電気を発生させている犯人ですね!?許しませんよ!」
グリーンも負けじとボックスを手に持って凄んでみる。
が、ウィックは嫌な笑みを浮かべながら先ほどから動じない。
「俺を倒す気か……面白いだが貴様達の相手は俺ではない……出でよ!雷猫」
突然、OFFレンの目の前に稲妻が落ちた。すると稲妻が落ちた際の砂煙の向こうから何かがOFFレンに向って歩いてきたのが解った。
「……我がブラックキャット団が誇る改造猫……。その名も雷猫だ」
「かみなりねこ……?」
青い色の体に雷をイメージさせる稲妻模様、鋭い瞳はじっとこちらを睨みつけている。
その体からは時折バチバチと何か放電しているような様子も伺うことが出来た。
「俺はこの能力で常に空気中に電気を放電し、静電気を発生しやすくさせて電子機器に触れなくさせて、この街の住民から快適な生活を奪っている所だ。邪魔はさせん」
「……ということだ。雷猫あいつらはお前達に任せたぞ」
「ハッ!」
雷猫から聞こえる電気の音がより一層強くなった。
「俺は灰色猫たちと電化製品を持ち出す……。手加減は無用だ」
「は?ウィック様……電化製品を何故運ぶのですか?」
「……せっかく集めたからな。全て俺の所有物にする。……ブラックキャット様には教えるな」
そういうとウィックと戦闘員らは、マンホールの中に入っていった。雷猫は不思議そうな顔をしていたが、こちらに気づいて再び気を取り直した。
「と、とにかく……ここからは俺が相手だ!」
「ブラックキャット団とは何者だ!?」
とっさにタイガが雷猫に問いかけた。
PCが既に持ち去られているのに全く気づいていない。
「質問している暇はない!……だが冥土の土産に教えてやろう」
雷猫はお決まりの流れに乗るとさっそく質問に答え始めた。
「略してBC団……ブラックキャット様が率いる悪の組織だ。目的はもちろんこの国の征服だ」
「ほぉ……。じゃ、じゃぁなんでオレ達がいるのにわざわざ来たんだ!?他にもいいところがあるだろっ!」
「何処か良い拠点は無いかと考えてな……大阪を発見したのだ。敵も味方もろくでもない奴ばかり……こんな楽に征服できる所もない」
OFFレンとオオカミの顔がムッとする。タイガは良くわからなかったのか真顔を保っている。
「もういいだろう……そろそろいくぞ!」
「ままま……待ってください。改造猫とは一体……?」
雷猫が攻撃態勢に入ろうとした瞬間今度はグリーンが待ったの合図をして問いかけたすると再び雷猫は攻撃態勢を解き。
「……フン。そんな事はどうでもいい……だが、冥土の土産に教えてやろう」
と、再び流れに乗り出した。
「改造猫とは改造人間同様、一般人を特殊改造、脳改造を施しBC団の戦士に仕立て上げているのだ」
「では、あなたは……」
「もちろん……元は普通の市民だったが……そんな事は関係ない!今の俺はBC団に忠誠を誓ったのだ」
答え終わると早速雷猫は指先から雷をグリーンめがけて発射した。
グリーンは間一髪でそれを避けるがこのままでは当たるのも時間の問題だった。
「ちょ、ちょっとすいません……。あなたはどの様な経緯でその……BC団に?」
再びグリーンが待ったの合図をして雷猫に質問しようとした。
しかし、さすがに仏の顔も三度までとは言うものの相手は悪の組織。何度も親切に答えてくれるはずはない。
「……残念だが俺はそこまで親切な奴ではない……しかし、どうせ最後だ。冥土の土産に教えてやろう」
「あ、ありがとうございます」
「……俺は普通の青年だった。しかしある日ウィック様により俺はBC団へと連れて来られた……」
雷猫は自分の経緯を語り始めたが、どうも聞いた感じだと少し時間がかかるようだった。
これは絶好のチャンス。早速OFFレンボックスを投げつけたい所だがこちらをじっと見て話しているので下手をすればこのチャンスを台無しにしてしまう。
ということで、グリーンは話を聞いているふりをしながら何を出すか隊員たちと相談する事にした。
「……そして俺を改造し電気を自由に操れる雷猫へと生まれ変わらせてくれたのだ。最初は……」
雷猫の話はまだまだ続いていた。
「(それにしても話すのが好きな奴ですねぇ……)」
「(しかし、オオカミやタイガとは桁違いの能力を持ってるみたいですよ)」
「(何々~?オレの事呼んだ~♪)」
「(下手に投げても電撃で落とされる可能性がありますからね)」
会議(?)は約10分にも及んだが依然雷猫の話は終らなかった。
軽く聞いた感じだと特訓がどうこうと話していたが別に聞かなくても差し支えはもちろんない話だった。早速、ボックスを打ち込ませていただいた。
「……だから、俺は悪に目覚め、こうしてBC団の一員としてなったわけだ」
「OFFレンボックス!いきますよ!」
ボックスを雷猫の足元に打ち込むと早速ボックスの中から地面から延びた長いひも状の物が姿を現した。
「フン……。何をしようとしていたのかは知らないが冥土の土産は十分もたせてやった!こっちもいくぞ!」
「待ってください!……えーと……そのウィックとか言う猫について教えてくれませんか?」
「何!?……まぁいいだろう冥土の土産は多い方が良い……。ウィック様はだな……」
何故か嬉しそうに放し始めた雷猫。多分元は話好きな猫だったのだろうと思われる
しかし、だんだん真横のアースがどんどん電気を吸い取っていったのに彼は気づかなかった
「ウィック様の顔の模様は、我がBC段では最高幹部の証で……またブラックキャット様が最も信頼を寄せる……」
しだいに、雷猫の周りに飛び散る火花の勢いがだんだん弱まっていった。そして、数分間話し続けると既に雷猫の疲労は頂点に達していた。
「そして……ぐ、な、何故だ……体に力が入らない……」
雷猫からはなにやら汗が流れて、その汗すら弱々しく流れていった。
「お話は終わりですか……?」
「……ま、まだ……話は終っていないぞ……ぐぅぅぅ」
ガクッと雷猫は膝を突いた。
そしてキッとこちらを睨んで消え入りそうな声で呟いた。
「……こ、これで勝ったつもり……か。俺のほかにもまだ改造猫は存在する……せいぜい俺の話を冥土の土産に持っていくが良い……」
雷猫の目から正気が消えていく。
「ぶ、ブラックキャット団……万歳!!!!!」
突然雷猫が倒れた。
すると物凄い爆発がその場に起こった。ここまで王道を貫かれると嬉しいような哀しいような複雑な心境だ。
しかし、何はともあれ、一応は正義の味方らしい事が出来て少し満足しているOFFレンジャーであった。
「……ブラックキャット団か……」
「単発キャラじゃないんですねー……」
「……雷猫め。しくじったか馬鹿な奴だ」
ブラックキャット団本部。ウィックはモニターを見つめながら吐き捨てるように言った。
「……まぁいい。次の作戦はもう既に考えてある」
……というわけでいつもと違う雰囲気で次回へ続くこの物語であった。
「ハッ!オレのPC!?」
……タイガの絶望感も引き継いだまま次回へ続く!