第47話

『片腕ロボの謎』

(挿絵:ピーターパン隊員)

僕の名前は柳沢龍太!小学4年生の男の子。ルックスは別にふつーだと思う。

「おい、龍太。サッカーやろうぜ」
「やろうよぉ」
「うん。やろうやろう♪」

今日は友達の信吾くんや晃くんと空き地でサッカーをする約束だったんだ。
最近、塾とか行っていたから久々の友達とのこーりゅーだからね♪

「お前、この前のテストどうだったんだー?」

急に信吾くんがそんな事を聞いてきた。勉強嫌いの信吾くんがこんな事を聞いてくるのは珍しい。

「んーとねー。80点かなー?」
「お前良くできるなー。そんなに勉強やってたら血液が因数分解になっちゃうぞ」
「いんすーぶんかいって……何?」
「にーちゃんが言ってたから良くわかんない」

晃くんは黙ったまま僕の隣を歩いていた。大人しい晃君だけど実は意外と女の子にもてたりする。
晃くんは今、TVでやってる流星戦隊コスモファイブが大好きで僕と良くその話をする。
晃くんはコスモロボの1号機~17号機まで持っていてさすがお金持ちだなーって思う。

「そういえば、晃君。この前の話で出たコスモロボ18~35号機もう買っちゃった?」
「買ったよー。でも、コスモスファイブってなんで関連商品が月に20個も出るんだろう?」
「敵が強いからじゃないかなー?」
「そっかー」

実の所は僕も良く解らない。でも、僕はコスモロボ1~5号機でできたDXコスモロボを持っているから満足。
いつかこのロボに乗って悪い奴らを倒したいなぁ……でもあれは作り話なんだよねぇ……。

「晃ん家は金持ちだなぁ……」

信吾くんが僕らの話を聞きながらそう言っていた。確かにお金持ちだ。僕も時々羨ましく感じる。

「まぁね。僕のお父さん会社の社長で、お母さんも人気女優だから庶民とは違うんだよねー」
「そっかー」

そんな事を何度か話しているとやっと空き地に着いた。ここはそんなに広くはないんだけどそこそこ遊ぶ事が出来るから大事な遊び場の一つだ。
だけど、今日は人が一杯いて、何か空き地の真ん中にでーんと大きな機械が置かれていた。

「にゃははー♪盗みに入った家でまさか土地の権利書があったなんてなー♪」
「ここをオオカミ軍団第2支部として活動して行きましょう。お手柄ですよタイガ様!」
「うんうん。そうだろそうだろ~♪オレも金だけ盗むわけじゃねーからな~。にゃははーw」

馬鹿笑いしている虎猫のお兄ちゃんが一人狼のお兄ちゃんたちと何か話していた。
僕達が入ろうかどうかか迷っていると信吾くんがずかずかと中に入って行った。

「早く来いよ~!」

と、信吾くんは手招きをするけど、年上の人たちだからちょっと怖い……。晃くんも同じだった。
迷っていると信吾くんが僕らの手を掴んでずんずん中に入っていった。

「あ~?何だお前らは、ここはオレ達オオカミ軍団の第2支部にするんだよ。どけよー」

虎猫のお兄ちゃんがこっちに気づいて怖い顔でこっちを見た。

挿絵

「俺達がここで遊ぶんだよー!お前らこそそこどけよー!」

信吾くんがお兄ちゃんたちに怒っている……。凄い。信吾君って行動力があるんだなぁ。
でも、このパターンだと殴られちゃったりするんだろうなぁ……。

「あ~?なんだこのガキ。オレ様に指を指すとはいい度胸じゃねぇかぁ……」
「お前だってガキじゃないかよー」

信吾くんが全然屈してない。凄いなぁ。将来警察官になるんだろうか……
でも、この度胸を買われて暴力団の人になるかもしれないなぁ。なんて僕は関係のない事ばかり考えていた。

「……このガキ……猫の分際でオレをガキ呼ばわりするとは……」

虎猫のお兄ちゃんの背景がゴゴゴゴゴゴってなっている。
どうしよう……僕も晃くんも怖くて信吾くんに協力できないよ……。

「なんだよー!お前も猫じゃないかよー!」
「んがっ!?…………」

虎猫のお兄ちゃんが急に静かになった。後ろの狼のお兄ちゃんたちが何だか慌てている。
信吾君はこんな状況でもへーぜんとしている。あぁ言うのを無神経っていうんだろうなぁきっと。

「おおおお……オレが……ねねねね……猫だとぉ?……ガルルルルル……」
「だって猫じゃん」
「こ、このクソガキ……ウガァァァァァァ!!!!」

暴れだした虎猫のお兄ちゃんを狼のお兄ちゃん達が急いで押さえつけていた。
最近の若者は切れやすいって本当だったんだ……。

「タイガ様!相手は子供じゃないですかー!」
「ウガァァァァァァ!!!こいつを引き裂いてやるー!はなせぇぇぇぇ!!!」

虎猫のお兄ちゃん達が止めている狼のお兄ちゃん達を引っ掻いたり噛み付いたりしている。
そうかぁ。これが少年犯罪なんだなぁ。ちょっとお利巧になったかも。
……ってそんな場合じゃないよ。虎猫のお兄ちゃんが暴れて狼のお兄ちゃん達がピンチだ!

「信吾くん!今のうちに逃げてー!」

やっと声を出せたけど、虎猫のお兄ちゃんの声でよく聞こえてないみたいだ……。うぅ……どうしよう。

「タイガ様!落ち着いてください!」
「ガオーーーーッ!!!ウガァァァァーッ!! 」
「仕方ない……。オレ達の計画を知ってしまったし。さらってオオカミにして……コキ使うか」
「タイガ様。それでなんとか手を打ってくれません?」

虎猫のお兄ちゃんの暴れ具合がだんだん小さくなっていった。なんだかぜぇぜぇ言ってたけどしぶしぶうんうんと頭を縦に振ってた。
すると狼のお兄ちゃん達が慎吾くんに近づいてきてガシッと腕を掴んだ。

「やめろー!離せよー!」

狼のお兄ちゃん達が信吾くんに何か変な物を飲ませ始めると信吾くんが急に大人しくなった。
かと思えば狼のお兄ちゃん達が今度は僕の方に向ってきた。

「さぁ、君たちも大人しくしてくれ……俺達もつらいんだよいろいろと」

僕は怖くなって後ずさりをした。だけど後ろにも狼のお兄ちゃん達が立っていた。真っ赤なサングラスから鋭い目がギロッとこっちを向いた。

「助けてー!」

晃くんの声がした。だけど狼のお兄ちゃん達に囲まれて何も見えない。
その声も急にパタッとなくなっていった。あの変な物をのまされたのかも。

「タイガ様結構わがままなんだよなぁ……可哀相だがキミが最後だ」

狼のお兄ちゃん達が僕の腕を掴んだ。痛い……。僕、殺されるかもしれない!そう思うと僕は怖くなって暴れていた。

「ぐっ!?」

その時何か足に物凄いいい感じの足応えがあった。
あまり口ではいえないけど結構痛いところにストレートに僕のキックが決まっていたらしい。

「……こ、こいつ……本気でやりやが……って……」

バタッと狼のお兄ちゃんが倒れて、僕の腕を掴んだ手がパッと外れた。
チャンスだ!僕はいちもくさんに空き地から逃げていった。途中まで狼のお兄ちゃん達が追いかけてきたけどついには見えなくなった。
逃げる途中、僕は見てしまった。信吾君や晃くんの体が狼のようになっていくのを。
きっと、あいつらはコスモファイブの敵のバルザック星人みたいな悪い奴だ。二人はあいつらの仲間にされてしまったんだ!
どうしよう……僕独りぼっちになっちゃった。もう、外には出られないよ……。







次の日。学校で二人が行方不明になった事を先生がクラスのみんなに言っていたけど僕はとっくに知っていた。

「……二人はきっと帰ってきます。だからみんなも心配しないでね」

違う。もうあの二人はきっと帰ってこない……。僕はその場にいたんだから良く解る。

「死んでたりして……」

なんていう子がいて、先生が怒ったけど。間違ってない。二人はもう死んだようなもんだから。
学校が終って、僕は先生に昨日の事を話そうとしたけどやめておいた。
言っても信じてくれないだろうし、それに、コスモファイブでも先生に変装した敵だっていたから。だから言わない方が僕が危険な目に会うことはない。

家に帰ると、お母さんが買い物から帰ってきていた。
普通こんなに遅くなる事はないからきっとどこかで立ち話でもしていたんだろうと僕は思った。

「信吾くんと晃くん……行方不明になったんだって?」

階段をあがっているとお母さんが僕にそう言った。
びっくりしたから足に力が入ってギィと階段がきしんだ。

「うん……そうみたい」

僕は、そう言って急いで階段を駆け上った。お母さんがほかに何か言ってたみたいだけど階段を急いで登ってたから聞こえなかった。

下手すればお母さんに昨日の事を言ってしまうかもしれない。
お母さんはおしゃべりだから、きっと町中の人に言いふらしてあいつらにも話してしまうかも。

「……はぁ」

思い切り僕はため息をついた。なんだかあの時からずーっと息を止めていたみたいだ。
僕は本棚の上にあったコスモロボを手に取った。このロボに乗れればあいつらを倒しにいけるかもしれないのに……。
ロケットパンチであいつらの基地を潰して、流星剣でボスを真っ二つ!……でも、そんなことはできない。ロケットパンチは当たっても痛くないし。
流星剣なんてビニールで出来ているからグニャッと簡単に曲がってしまう。

「龍太ー!買い物に行ってきてー!お母さん買い忘れしちゃったのよー」

下からお母さんの声が聞こえた。僕は部屋のドアから顔だけ出して嫌だって言った。
でも、お母さんは階段を登ってきて僕に買い物かごを渡した。絶対行かないと駄目だって。

「お釣りで好きなもの買って来ていいから。言ってちょうだい」

お釣りといったって800円のを1000円で買うだけじゃないか。
一万円で800円の物を買うんだったら進んで行くかもしれない。200円のために僕は危険なことをしたくない。
でも、僕はお母さんには勝てなかった。家の外でとぼとぼと買い物かごを下げてスーパーへ向った。

「ガチャガチャ」と買い物籠の中でコスモロボが音を立てた。
もしもの時の為にってことでこっそり中に入れておいた。でも、やっぱりちょっと怖い。
太陽も赤くなってきたし。犬の吠える声だって聞こえてくる。全員が僕の敵みたいに感じる。

「おっ」
「あっ!」

角を曲がった所であの時の虎猫のお兄ちゃんと眼があった。僕運が悪いな……。
虎猫のお兄ちゃんはそのまま通り過ぎていったからホッとしたけど。再びこっちに戻ってきた。じろじろと虎猫のお兄ちゃんは僕の顔を覗き込んでいる。

「……なぁ……お前以前どっかでオレと会わなかったか……?」
「えっ……僕は……はじめて見るけど……」

僕の足はいつの間にか震えていた。僕は初めてあったって言ってるのに虎猫のお兄ちゃんはまだ見ている。
お兄ちゃんの真っ赤な目が僕の頭や目に言ったり来たりしている。

「……あっ!お前は……あの時のクソガキの仲間! あの二人がお前が狼にならないんで寂しがってるぞ~?」

虎猫のお兄ちゃんについに僕のことがばれちゃった……。
でも、虎猫のお兄ちゃんはあまり怒った感じじゃなくニヤニヤしながら僕の肩をぽんと叩いた。

「ご、ごめんなさいっ……!」
「……まぁ。まぁ。オレの質問にちゃんと答えたら助けてやってもいいぜ♪」

虎猫のお兄ちゃんは親指で自分を指差しながら嬉しそうに言った。

「……オレって、何に見える?」
「えーとえーと……男の人……」
「違う違う♪動物で言ったら!……ほら~あるだろ~?」

動物……。象でもないし……キリンにも見えない……色は似てるけど。
となるとやっぱり……。

「えーと……虎……」
「おぉ~!?」

虎猫のお兄ちゃんが嬉しそうな顔をしている。間違いない。僕の考えに間違いはないみたいだ!

「……と……虎猫?」

虎猫のお兄ちゃんの顔が急に怖くなる……。変だなぁ……言い間違えたのかな?聞こえなかったのかな?
聞き間違えていたら困るから、もう一度はっきりと言ってみよう。

「虎猫に見える!」

だから僕はもう一度はっきり言った。すると虎猫のお兄ちゃんは前みたいに怖い顔になった。

「こここここ……このクソガキー!!お前もオオカミにしてやるーー!!」
「わーごめんなさーい!!」

僕は必死になって逃げた。でもお兄ちゃんはさすがに早い。かなり遠くまで来た時曲がり角の所で僕は虎猫のお兄ちゃんに捕まってしまった。
僕もオオカミにされちゃうって言っていたから何が何でも逃げるつもりだったけど地面に押さえつけられちゃったからキックも使えない。

「どいつもこいつも!オレ様を猫呼ばわりしやがって!狼にする前にお仕置きしてやるぜ!」

僕の上にお兄ちゃんが圧し掛かって身動きが取れなくなっていた。じたばたしても無駄だと思ってついに僕はあきらめる事になってしまった……。

「さて、どうやって懲らしめてやろうか……。こいつ男だからホランにでも渡すかな……」

虎猫のお兄ちゃんの鋭くて赤い目が僕の顔を睨む。僕はその怖さで声が出なくなりそうだった。

「……」
「急に静かになったなぁ。よしよし。とりあえずお前は殴ることにしたぜ!」

お兄ちゃんはゆっくりと握りこぶしを上に上げた。
きっと痛いんだろうなぁなんて思っているうちに殴られるんだ……。僕はグッと歯を食いしばった……。

『バキッ!!』

痛くない痛くない……痛く……あれ?ホントに痛くないぞ。
僕が恐る恐る目を開けると急に僕の体が軽くなっていた。虎猫のお兄ちゃんの姿が見えない。

「まったく……久々にタイガを見かけたかと思ったらこんな所で子供いじめですか」

虎猫のお兄ちゃんでもない別なおにいちゃんの声が聞こえてきた。
よく見ると虎猫のお兄ちゃんは大きなたんこぶを作って僕のずっと後ろに目を回して倒れていた。

「キミ。大丈夫ですか?」

起き上がろうとしていた僕に手を差し伸べてくれていたのは緑色の猫のお兄ちゃんだった。僕は大きくうんと頷いた。

「タイガに会ったら猫とは言わない方がいいですよ。自分を虎だと思い込んでいるんで厄介なんです」
「は、はい……」

挿絵

「ハイ、これキミのでしょ?」

と、緑のお兄ちゃんの他に、紫色のお姉ちゃんが落としてた買い物かごを拾い上げて僕に渡してくれた。

「お、お兄ちゃん達強いんだねー!」
「えぇ、そうですよ。一応、私達は正義の味方ですからね」

緑色のお兄ちゃんが僕の頭をぽんと叩いて笑った。正義の味方……。もしかしてあいつらを倒してくれるかもしれないと僕は思った。

「ま、待って!僕、あの虎のお兄ちゃん達に友達をゆーかいされたんだ!」

帰ろうとしていたお兄ちゃん達を僕は大声で呼び止めた。
緑のお兄ちゃんが真っ先に反応して僕のところにやってきてくれた。

「本当ですか?」
「う、うん。昨日……友達の信吾くんと晃くんがオオカミにされちゃって……」

話しているうちに僕が泣いているのに気が付いた。
やっと人に言えたのと、ちゃんと僕の話を聞いてくれている人がいてくれて嬉しかった。

「なるほど……まったく。こんな小さな子にまで迷惑をかけるとは……」
「大丈夫ですよー!シェンナも協力しますからねー!」

僕より年下っぽい子が僕を慰めてくれた。多分幼稚園なのにしっかりして偉いなぁ。

「……わかりました。ですが今日はもう遅いですからまた明日ここに来てください」

そう言って緑のお兄ちゃんは小さなメモを僕に渡した。そういえば僕も買い物の途中。
急いで帰らなきゃ……。僕はメモを大事に手の中に握った。

「それでは、私達はこれで!」
「ま、待って!お兄ちゃん達は一体……?」

たくさんにお兄ちゃん達がくるりと振り返って言った。

「私達は、ぐるぐる戦隊!OFFレンジャー!!」
「お、おふれんじゃー……」

夕陽の中にお兄ちゃん達が消えていったような気がした。
僕を助けてくれる正義のヒーローが……やっと現れてくれたんだと僕は嬉しくて手の中のメモがくしゃくしゃになってしまった。







次の日、僕はメモに書いてある住所を探して通天閣にやって来た。もちろんコスモロボも一リュックの中に一緒にいる。
元々東京から引っ越してきたから東京タワーと同じような物だと思っていたけど良くみると全然違っている。
メモには通天閣の地下とあるけど……どこから地下へ行くのか解らなかった
せっかくだから、そこにいる人に聞いてみよう。なるべくやさしそうな人……。

「あのぉ。OFFレンジャー指令本部って何処から行くんですか?」
「ん?OFFレンジャー?君もOFFレンに用なのかい?」
「あっ……!!」

一瞬虎猫のお兄ちゃんかと思ったけどよく見たら白い。でもよくよく見るとちょっと目が鋭くて怖いかな……。

「どうかしたのかい?顔に何か付いてるのか……?まぁ、模様は描いてあるが……」
「い、いいえ……なんでもないです」
「……そうか。オレもOFFレンの所に行く所だから一緒に来るかい?」
「は、はい!」

あの変な虎猫兄ちゃんと違ってこっちの白い虎猫のお兄さんはずいぶんと優しい。
でも、なんだか地下への階段を下りるときにブツブツと嬉しそうに独り言を言っていてちょっと変な所もあった。

「ここだ。OFFレンジャーの基地は」

やっと基地の前に到着したけどなんかマンションとかにある扉と同じでなんか基地っぽくない。
コスモファイブとかだと「しもんしょーごー」とか「ICカード」とか機能が付いてるんだけどな……。
でも、「脳あるタカは爪を隠す」って言うしね。あれ?でも脳みその無いタカって……いるのかな?

「どうした?早く入れよ」

僕が変な事を考えているうちにすでに白い虎猫のお兄ちゃんが中に入って行った。
鍵が開けっ放しだなんて……なんか本当にヒーローなのか少し疑わしくなってきたぞ……むむむ。

「こっちがOFFレンの会議室だ。ついてこい」

中に入ってみると意外と中は綺麗だ。でもどうやってこんなものを地下に……?まぁ、その辺はいずれわかるのかもしれないけど。

「やぁ、いらっしゃい……ホランもいるんですか」
「グリーン♪久しぶりだね……会いたかったよ……」

会議室にいろんな人たちが座っていた。多分この人たちがOFFレンジャーの人たちなんだな。
早速僕は緑色のお兄さんにいわれて側にある椅子に座った。

「それでは、事件の概要を詳しく教えてくださいな」
「がいよう……?」
「まぁ、そのお友達が捕まった時のことを詳しく話してください」
「はい……」

僕は覚えている限りのことを詳しくみんなに話した。お母さんや先生と違って真剣にうんうんと聞いてくれているのが僕にはすっごく嬉しかった。

「……それでは、そのタイガのいる空き地へ行ってみましょう」
「で、でも……」

心配そうにしている僕の頭を隣にいたピンク色のお姉さんが優しく撫でてくれた。

「大丈夫ですよ。まかせてください」
「う、うん……」










「順調順調!ここでオレ様秘蔵のAVを保管するんだー♪にゃははーw」

僕がOFFレンの人たちを空き地に案内すると虎猫のお兄ちゃんがまた高笑いをしながらオオカミの人たちとまた何かをしていた。
以前あった機械がさらに大きくなってプレハブ小屋みたいなものまで出来ていた。

「……また馬鹿みたいなことやってますね……」
「じゃぁ、いつものようにこらしめてみますか」

緑のお兄ちゃん達が空き地の中にズカズカと入っていく。
僕はさすがに怖いからそばの物陰に隠れてみている。

「コラッ!タイガ!子供を誘拐したそうですね!」
「タイガくん最低ですー」

虎猫のお兄ちゃんが怒られているけど緑のお兄ちゃんたちに何もしてこない。結構OFFレンジャーって強いのかな……?

「何のことだー?オレはそんなこと知らないぜ~」
「しらばっくれてもダメですよ!証人がいるんですから!」
「……あのガキがチクりやがったな……何処にいるんだ?」

虎猫のお兄ちゃんがキョロキョロと辺りを見回し始めたから、僕もつい頭を引っ込めてしまう。

「そんな事は関係ないでしょう!タイガ、何を企んでいるのか知りませんがその変な機械と子供たちを返しなさい!」
「……ヤだね~!誰がお前達の言う事なんか聞くもんか!ここはオレの土地なんだぞー!!」

ピラピラと虎猫のお言いちゃんが紙を取り出してOFFレンのお兄ちゃん達に見せている。
何か攻撃するのかと思ったけど特に何かが出てくるわけでもなかった。僕の臆病な所を治さなければなぁ……。

「な……なんですかそれは……」
「この土地の権利書だ!だからここはオレの土地なんだ♪ お前ら女子を置いて出てけよー!」
「……どうせ盗んだんでしょう?」
「ち、違う!んなわけねーだろ~?」

虎猫のお兄ちゃんが慌てている。こっからじゃよくわからないけどひょっとしてOFFレンジャーが勝っているのかな……?

「……権利者の名前が杉浦とか言う方になってますが?」
「そ、それは……と、とにかく出て行け!出て行け!今回ばかりはオレのAVルーム実現の為に譲らないぞ!」
「タイガ様……我々が建てているのはそんな物では……」
「う、うるさい!!出て行かないなら……オイ!出て来い」

オオカミのお兄ちゃんの中からずいぶん小さいオオカミが二人出てきた。
あれは……間違いない。信吾くんと晃くんだ!!

「信吾くん!晃くん!!」

僕は気が付いたら叫んでいた。しまった!虎猫のお兄ちゃんにもオオカミの兄ちゃんたちにも見つかってしまった。
虎猫のお兄ちゃんのほうはさっきよりも怖い顔で僕を見るようになった。

「……そんなところに隠れてやがったんだな~?このクソガキ……よくもオレを馬鹿にしたな~?」
「ご、ごめんなさいっ!!」
「やめなさい、タイガ!」

虎猫のお兄ちゃんをOFFレンのお兄ちゃん達が止めてくれるけど僕は怖くて腰が抜けてしまった。
本当に腰が抜けたように動けなくなるんだ……びっくりしたなぁ……。
でも、そんな悠長な事を言ってられない……。小さいオオカミ2匹がこちらに近づいて来るのだから。

「オイ、お前ら!そいつを徹底的にボコボコにしてやれ!!オレを猫呼ばわりした罪はでかいぜ!!」
「解りました……タイガ様」

完全にあいつらに操られている信吾くんと晃くん……。真っ赤なサングラスの奥の目が怖い……。

「し、慎吾くん……晃くん……」

僕は目をしっかりつむった。痛くない痛くない……。

『ガシッ!!!』

痛くない痛くない痛くな……あれ、またまた痛くないぞ……?
良く目を開けると二人のオオカミが気絶して倒れている。目の前に青色のお兄ちゃんがなんか丸い物を持って僕をかばってくれていた。

「怪我はないみたいっすね!」
「あ、ありがとう……青色のお兄ちゃん……」

青色のお兄ちゃんはニコッと笑った。優しそうな笑顔にさっきまでの怖さは吹き飛んでしまった。
でも、その間にOFFレンジャーの方はなんかガヤガヤと騒いでいる……。

「オレはAVルームが欲しいんだっ!お前らみたいな子供にオレの気持ちがわかってたまるかっ!」
「ただスケベなだけでしょう……」

挿絵

「なんだとー!!!!もう怒ったからな!!オイ、オオカミ!マシン機動だ!!」
「しかし……」
「いいから機動だーーーー!!!!!早くしろーーーーーー!!!!」

離れていても耳がガンガンする位虎猫のお兄ちゃんは叫んでいた。
なんだか嫌な予感がする……あの変な煙が出ているあの機械……。

「タイガ様、起動致しました」
「よし!」

虎猫のお兄ちゃんがマシンの後ろに回って変なレバーを掴んでいた。
あれは間違いない!コスモファイブ第28話『奇怪な機械に会う機会』に出てきた巨大兵器だ!
まずい、コスモファイブもあの機会に苦戦していたんだ。OFFレンジャーのお兄ちゃん達も……。

「今度ばかりはいい加減怒ったからな!このマシーンでお前らを倒してやる!!」
「女子隊員も巻き込むんですか……?」
「そんなわけないじゃ~ん♪女子達には効果がないから♪安心してねー♪」

虎猫のお兄ちゃんがレバーを引こうとしている……
僕が助けなきゃ!で、でもオオカミのお兄ちゃん達がOFFレンジャーたちを囲んでいるし……。






僕は、倒れているオオカミの信吾くんと晃くんを見た。
僕だってコスモファイブになりたいって昔から思ってた。僕のリュックにはコスモロボが入っている。
コスモロボとなら、一緒に闘えるかも知れないと思った。

「んじゃ、スイッチオン~♪」

僕は一目散に走り出して虎猫のお兄ちゃんにおもいきり体当たりした。
でも、虎猫のお兄ちゃんは僕を突き飛ばした。するとOFFレンジャーのお兄ちゃん達の方に転がった。

虎猫のお兄ちゃんがガチャッとスイッチを入れた。銃口みたいな所がピカッと光った。
コスモロボ!!っと心の中で叫んで僕はコスモロボを掴んだ。

「これで終わりだー!!」

コスモロボのロケットパンチがバシュッと飛び出した。銀色に光ったコスモロボのロケットパンチがスポッと機械の中に入って行った。
その瞬間機械が光った。物凄い音がした。光がどんどん広がっていった……。







「龍太……龍太?」

僕は目を覚ました。信吾くんと晃くんが僕を心配そうに見ていた。
慌てて僕は辺りを見回した。あの変な機械も虎猫やオオカミのお兄ちゃんもOFFレンンジャーもいなかった。

「オイ……どうしたんだ?」
「も、戻ったんだ……よかったぁ……」
「はぁ……?」

信吾くんも晃くんも変な顔をしていたけど僕は嬉しくてちょっと泣きそうになった。

少し傷が付いているコスモロボも僕の手の中にあった。

あれから、信吾くんも晃くんも今までの事は覚えてないみたいだった。

僕は言おうとしたけど信じてくれないだろうから黙る事にした。

あれから時々空き地に行ってみたけど虎猫のお兄ちゃんに会うことはなかった。

ひょっとして夢だったのだろうか?なんて時々考える時がある。

僕がコスモファイブに憧れていたからそんな夢を見たんじゃないかと思ったけど。

僕はどっちでもいいかなと思ってる。

だけど僕のコスモロボは今、片腕しかない。