第56話

『悪魔の機械猫現る』

(挿絵:レッド隊長)

尾布峠は走り屋達の間でも有名なコースである。
この峠を1時間以内で往復する事が出来る者は地域最速とも言われている。
そのような言われがある為か暴走族の長にそれを利用する族が多いのも事実。
今宵も、とある族のメンバー達がこの峠をバイクで走っていた。

その中で最も遅いバイクは徐々に引き離されていく焦りからか無理にスピードを上げて走行していた。
だが、峠で最も難関といわれる魔のカーブに差し掛かった頃、スピードを上げすぎたそのバイクは、
大きく傾きガードレールを飛び越え遥か下の茂みへと消えていった。








「ボス、やはり冬ですからしいたけ狩りというのは成立しないのでは無いかと思うのですが」
「何か食える物があればいいじゃないか。とにかく何か探そう」

オオカミ軍団一同はとある林に散らばって食糧難を乗り越える為に食料探索に明け暮れていた。
だが、冬の為ろくな物が取れずオオカミのほとんどは隠れてさぼっていた

「はぁ、タイガ様がいなくなって金銭面では苦労しないと思っていたんだがなぁ」
「もうその話はやめようぜ。タイガ様にはタイガ様の人生、いや虎生があるんだから」
「そうだなー……」

……ゴソゴソ……

「……なんか音がしないか?」
「ハハ。タイガ様だったりして」
「まさか」

……ゴソゴソ……

「……ボスじゃないのか?俺達の様子を見に来たとか」
「ちょっと見てくる」

物音が気になりオオカミ達は恐る恐る音のする方へ歩いていった。
そこへ近づくに連れなんだかガソリン臭がしてきた。

「……オイ、誰か倒れてるぞ」

その場所へ辿り着くと、ボコボコにへこんだバイクの側に少年が倒れていた。
オオカミが近寄って様子を見てみるがオオカミは首を振って戻ってきた

「ダメだな。虫の息だ。関わると面倒だし……放っておこうぜ」
「オイオイ、そりゃないだろ。連れて帰ってオオカミに改造するとかさ」
「瀕死の状態だぞ?改造したって…」
「とりあえず、連れて帰ろう。後は研究員に任せれば良いしな……」








「レッド隊長!復帰おめでとう~!!」

クラッカーから飛び出した金や銀の紙テープがレッドの頭上に絡みついた。
レッドは紙テープをなんとか笑顔のまま取り払おうとしている。

「いやー。レッド隊長が復帰したし我々としてもめでたい限りですよー」
「こっちでは2年ぶりに会うんだもんね~」
「ありがとう!ありがとうねみんな」

レッドはぐいーっとオレンジジュースを飲み干すと咳払いをして言った。

「……僕が復帰したからにはOFFレンの力もパワーアップするのではないかと思います!
オオカミ軍団も聞いたところによるとなんかタイガがいなくなって弱くなってきてるらしいし。
えー。そこで、レッド隊長は、オオカミ軍団年内壊滅宣言をいたします!」

レッドの余裕の宣言に隊員達は歓声を上げて「いいぞいいぞ」とはやし立てた。
レッドも少し照れてはいたが宣言のとおり内心、余裕を持っていた。

「レッドはやっぱ頼もしいなぁ」
「オオカミ軍団もこれで楽に倒せるかもね」
「だね~」

わいわいと賑わうパーティー会場の隊員達はまだ気づいていなかった。
新たな恐怖が近づいている事を…














「……な、なんだこりゃー!!!!!!」

オオカミ軍団の研究室から突然聞こえた大きな叫び声。
オオカミの物でもなければ当然タイガの物でもなかった。

「お。目を覚ましたか。よかったよかった無事成功したようだな」
「わぁっ!狼だ!!」

研究員が中に入ると大声の張本人は驚いて自分が寝ていた台から飛び降りて部屋の隅へと逃げた。

「……安心しろ。別にお前を取って食うわけじゃない」
「こ、ここは何処?オレはどうなったの?」
「ここは、悪の組織オオカミ軍団アジトの研究室。お前は瀕死の状態だったから俺達が改造した」
「か、改造!?」
「あぁ、サイボーグって奴だな。名前は……ん~メカキャットでいいな」
「な、なんだよそれ!オレにはエコってちゃんとした名前があるんだぞ!」

大声の張本人であるその少年は叫んだ。
研究員はサングラスを上げてほぉとあまり驚いてない風にしていた。

「……では、エコ。本日から君は我らオオカミ軍団の一員ということでヨロシク」
「よ、よろしくって……オレは!」
「お、コイツがメカキャットか?」
「ぎゃ!またオオカミが!!」

突然入ってきたボスオオカミに驚いてエコは壁に背中をピッタリ貼り付けていた。

「……名前はエコって言うらしいです」
「ほぉ。環境に優しそうな名前だな」
「……ちょっと!オレの置かれてる状況を説明してよ!!」

エコは再び大声で叫んだが語尾が震えていた。
研究員はため息をつくと恐怖心をあおらない様に優しい口調で説明を始めた

「君は、谷から下へ落ちたんだ。覚えてるね?」
「う、うん……族の長選びの第2トーナメントに参加してた……」
「落ちたときの衝撃により、君は瀕死の状態だったのを我々が見つけたんだ」
「そ、そういえば……痛かったような……」

壁にピタリと張り付いていた背中は徐々に丸くなっていた。

「そこで、君を助ける為に我々は君をサイボーグにした。OK?」
「な、なんでそれでオレがオオカミ軍団ってのに入んなきゃなんないわけ?」
「我々が改造してやったらに決まってるだろ?」
「……頼んでないのにぃ……」
「じゃぁ、死んでた方が良かったのか?」
「そ、それは……」

エコは黙り込んでしまったが研究員は話を続けた。

「君は族に入ってたんだろ?ここだと本格的に悪さが出来るぞ?」
「お……オレは別に悪いことをしたいから族に入ったわけじゃ……」
「何はともあれ、君はオオカミ軍団にいてもらう。どうしてもというなら脳改造ということになる」
「……わ、わかったよ……でもオレ……ケンカ弱いし頭もそんなに…」
「それは大丈夫だ」

研究員はエコの長い尻尾を掴んでその先っぽにある丸いスイッチを指差した

「何!?何!?」
「このスイッチを押すと頭上に組み込まれた悪魔回路によって君はIQ200の知能を得た人格へとチェンジする」
「????」
「性格まで悪魔的になってしまうがむしろ悪者はコレくらいのゆがんだ性格が理想的だな
ただ、悪魔回路の方は性格的に何仕出かすか解らないから数時間しか保てない」
以上だ。上手く駆使してオオカミ軍団の頭脳役を買って出て欲しい」

エコはイマイチ理解してないようだったが一番気になる事を聞いてみることにした。

「……ず、ずっとこのままオオカミ軍団にいなきゃなんないの……?」
「いや、ある程度の実績を上げれば、元の体に戻して開放してやっても良い」
「ホント!」
「あぁ、それは保障してやる。いいですよね?ボス」

ボスも黙って頷いていた。

「で、でも実績って……例えばどんな?」

エコは恐る恐る研究員に尋ねるとボスと研究員は顔を見合わせて笑った。
不思議そうな顔をしたエコに研究員は言った。

「そうだな……OFFレンジャーの壊滅……だな」










翌日。レッド隊長にいままでの出来事をおさらいさせるという名目で一同が会議室に集められていた。
膨大な資料を引っ張り出して朝から説明にてんやわんやなのだ。

「それでですねー。聖獣さんって人が来まして烏龍茶が好きなんです」
「またまた~。そんな話やってるのどっかのメールマガジンの小説くらいだよ」
「しかしホントなんですよコレが」

レッドに説明してもなかなか信じてくれない事件がたくさんあって、説明に時間がかかってしまう。

「……で、BC団ってのと戦いましてこれが結構苦戦しましてねー」
「生卵団かぁ……。そんな強そうには思えないなぁ」
「違いますよBC団ですって!生卵じゃありません」
「え、ちょ、生卵はどこにいったのさ!」
「知りませんよそんなの!」

そんな時、突然複数の足音が急いでこちらに近づいてきた。

「助けてくれー!!」

乱暴に開かれたドアからは慌てているオオカミが飛び出し机の下に一斉に隠れ始めた。
訳がわからないOFFレンはドアの方を見るも誰かが追いかけているような様子は無い。

「……どうしました?借金取りにでも追われてるんですか?」
「違う!エコが……エコが……!」
「エコ?」

オオカミ達は机の下で震えていた。はみ出したオオカミもかろうじて震えている。

「けけけ…研究員達が作ったサイボーグ猫で、そいつがオオカミ達を……!」
「はぁ?詳しく説明してもらわないとわかりませんよ」
「ココアでも出してあげたら?グリーン」
「あぁ、そうだな!ミルクココアにしろよ!」
「あなた方に注文される筋合いはありませんよ…全く」

グリーンは渋々、ココアを作り大体人数分をテーブルの上におくとその匂いに安心したのか、
予想以上のオオカミがぞろぞろと出てきた。その数約50人

「ちょ、なんでそんな多いんですか……10人くらいかと思ったのに……」
「あぁ、俺達もしもの時の為に圧縮して隠れられる技術をいつの間にか身につけちまったからな」
「……どっかのファイルですかあなた方は」

隊員総出でココアを作り、カップの無い分は洗面器や鉛筆立てを利用しなんとか人数分を作り終えた。
オオカミ達もホッと一息ついてすっかり狭い会議室の中でくつろいでいた。

「……あのーそろそろ話してくれませんか?」
「ん?俺の半生?」
「いやいや、その……なんで逃げてきたかとか」
「あー。そうだったそうだった…。実はな…」
「エコって言う新入りが入ったから紹介するってんで俺達集まったわけだよ」



「という訳で!新しくエコが仲間入りだ。ホラ、自己紹介しろ」
「…うぅ、オレこんな所入りたくてはいったんじゃないのに…」
「早く言え!」
「は、はいっ!…えと…え、エコです。よろしく」

なんか気弱そうで頼りない奴だな~とか俺達思ってたんだよ。
それで、研究員がこいつの能力について説明するって言うからさ…

「このスイッチを押せばIQ200の人格に切り替わる。やってみよう」

研究員が尻尾のスイッチを押したらさ、エコって奴の顔付きが変わってきてさ…

挿絵

「……悪エコって所だな。コイツには、軍団の頭脳役をやってもらうつもりだ」
「……フン。くだらん」

なんか態度もでかくなったんだよ。研究員は気づいてなかったみたいだけどな

「……じゃぁ、エコに何かOFFレンを倒す計画を考えてもらおうかな」
「……嫌だね」
「……オイオイお前…」
「貴様らのような下等な奴に使われるのは御免だ。…使われるのはお前らの方だ」

そんで、エコはなんか変なメカを出してきて、研究員に向けて発射したんだよ。
そしたら研究員が灰色になってるんだよ。でさ…研究員までエコにひざまづくんだよ

「……エコ様。何でもご命令を」
「フン。そこでじっとしてろ…まだオレにはやることがあるからな……」

エコが嫌~な笑い方でこっち向いてメカでオオカミを次々と自分の部下にしていったんだよ。
ボスまで部下にされちまってさぁ……俺達怖くて命辛々逃げてきたんだよ。



「……オオカミ軍団ってホント進歩ないですねぇ……」
「そう言うな!頼む!なんとかしてくれぇ!!」
「でも、?前のティグレスのときみたいに世界がかかってるわけじゃないし」
「……そ、そうだよなぁ……お前達ってそういうヤツラなんだよなぁ……」

オオカミ達は落胆してぞろぞろと退室する素振りを見せた。

「……もう良い。すまなかったな」
「これからどうなさるんですか?」
「……ほとぼりが冷めるまで他の組織に厄介になるよ。…じゃぁな」

オオカミ達がドアノブに手をかけた頃だった。
突然ドアが吹っ飛び向こうから灰色オオカミがわらわらと飛び出してきた。

「……こんな所にいたのか……」

オオカミの奥からやってきたのはメカニックな猫。彼がエコなのだろう。
OFFレンたちも身構えるがエコはこちらに気づいてくれていなかった。

「往生際の悪い奴だ……ナニ、すぐに終る…」

エコはこれまたメカニックな銃のような物をオオカミに向けて発射する。
一匹また一匹と灰色オオカミになっていく様子をさも楽しそうにエコは見ていた。

「……!」

しかし、彼の様子が急におかしくなった。
銃を構えていた腕がだらんとして、さっきまでの邪悪な顔がキョトンとしていた。

「……あ、あれ……?オレ一体……」

時間が来たのかエコは元に戻ってしまっていたらしい。
エコが目を落とすと自分の足元には自分の元でひざまずいているオオカミ達。

「わ……わーっ!なんだよー!!」

エコが思わずよろめいて手から離れた銃をそのまま踏みつけてしまった。
銃はそのショックでか黒い煙を出したかと思うと変な音を立てて爆発した。

「ぎゃっ!!」

エコはそのまま爆発に巻き込まれて黒コゲになった。
オオカミ達もメカが壊れた為か正気を取り戻してようだった。
エコはしばし呆然としていたがへなへなとその場に座り込んで泣き始めた。

「も~やだー!なんでオレがこんな目にぃ……」

ワンワン泣き出したエコに変な感じがしつつレッドが恐る恐る声をかけた。

「……あ、あのー……?」
「な、なんだよ……」
「な、泣かないでさ。ホラ、元気だそうよ?」
「……う、うぅ……」

レッドの言葉を聞きエコは泣き止んだかと思ったが、

「あんたらにオレの気持ちが解ってたまるかぁぁ!!」

……また泣き出した。

「(なんか調子狂うな…)君、悪者なんでしょ……?これくらい日常茶飯事…」
「好きで悪者になったんじゃないよぉ~!」
「暴走族のメンバーだったくせに……」

正気に戻ったオオカミ達が呟くとOFFレンたちも「じゃぁ仕方ないな」という顔をした。

「誰もオレの事情なんて知らないくせに~!!」

しかし、エコは泣きじゃくりながらまた叫んだ。

「……レッド。どうやら事情聞いて欲しいみたい」
「欲しいみたい」
「……仕方ないなぁ。じゃぁ、事情聞かせてよ」

エコは泣いていたせいか時々詰まりながらも話し始めた。

「お、オレの親は……凄いマイペース人間なんだ……」



小さい頃、パパと森へキノコ狩りに行って道に迷った時……。

「パパぁ~……お腹すいたよ~……」
「ハッハッハ。心配ない心配ない」
「もうずっと同じ所ぐるぐる回ってて……きっとエコたち迷ったんだよぉ」
「ハッハッハ。エコ。どっかへ真っ直ぐ進めばどっかには出られるさ。これは迷ったとは言わないぞ」
「……うぅ」

そこら辺の茂みからはゴソゴソと何か獣が動く音がしていて怖かった。
なのにパパは……

「パ、パパー!なんかいるよぉー!」
「何、そうか。きっとエコと友達になりたいんじゃないかな?呼んであげなさい」
「や、やだー!そんな友達いらないっ!」
「全く強情だなエコは……。よし!パパが仲直りさせてあげよう」
「ちっ!違うよパパ!友達じゃないんだってばー!」

パパはそのまま茂みに入って行って二度と帰ってこなかった……。
きっと獣に食べられたと思ってオレは怖くなって走って逃げた……
体中傷だらけで家に帰った時、何故か家からパパの声が聞こえてきた。

「ママ。今日エコと森へ行ってきたよ」
「まぁ、パパ、エコお帰りなさい。遅かったわねー。ご飯出来てますよ」
「さぁ、エコ食べようか」

窓から覗くと何故かパパとママの間にフラミンゴがオレの椅子に座ってカレー食べてた。

「あら、パパ?なんかこの子口が長いと思ったらこれエコじゃないですよ」
「えっ?どれどれ……ハッハッハ!似てるから間違えてしまったみたいだな」
「もうパパったら……」

それから、何年間もオレは間違えて電子レンジに入れられたり、
売られそうになったり、しまいにはから揚げにされそうになったり……
そんなオレでも、愛されて生まれたには違いないから我慢してた。
だからオレ、ママに聞いてみたんだ……

「ねぇ、ママ~。どうしてエコを産んだの?」
「ん~。中絶室と分娩室をうっかり間違えちゃって産んじゃったのよ☆」
「ガーン!!」



「こんな人生送ってたら……グレたくなるのも当然だろっ!!」

エコはまた泣き始めていた。だからこんなに泣き虫になってしまったのだろうか。

「おまけに、死にそうになるわ……サイボーグにされるわ……うぅ……」
「……まぁ、OFFレンキャラでは珍しく不遇なキャラですねぇ」
「元に戻りたいよぉ~!パパぁ~!ママぁ~!」

泣き止まないエコを見てオオカミ達もなんだか申し訳ない気分になってきた。

「……う~ん……戻してやりたいのは山々だが費用結構かかってるしなぁ……」
「せめて、この状態で家に帰せばいいんじゃないんでしょうか?」
「そうっすね。息子とフラミンゴ間違えるような親っすから。サイボーグでも気にならないでしょう」
「どうする?エコ。僕らが家まで連れて行ってあげるけど」

エコはなんとか泣き止んでコクリと頷いた。








転送装置でやってきたエコの家はどっかの小高い丘の上にある白い家だった。
辺りにはほかに家らしい家は何も無くまさに自然に囲まれている家だった

「……さぁ、付いたよ」
「う……でも。オレがいなくなってパパやママ……忘れてるんじゃないかな」
「それはないんじゃないんじゃ……一応何十年も暮らした家族なんだし」
「そ、そうだね……」

恐る恐る家の方へと向うエコの後をOFFレンが後をついていった。
エコは玄関の前に立ったがなかなか中には入ろうとしなかった

「だ、大丈夫かなぁ……」

不安そうに振り返るエコにレッドは大丈夫大丈夫とジェスチャーをしたが、
エコはイマイチ勇気が出ないようだった。
その時、窓の方からエコの両親らしき声が聞こえてきた。

『パパ……エコがいないわ』
『何!大変だ!何処に行ったんだ!?』
『私達の大事な子供なのに……あぁエコ……心配だわ』
『エコーー!!!』

その声に後押しされたのかエコの顔がパァァと明るくなって家の中へと飛び込んでいった。

「ぱ、パパー!ママー!オレはここだよぉー!!」
『おぉー!エコ!』
『まぁ、エコ!良かったここにいたのね』

家の中から聞こえる和気藹々とした声にOFFレン一同もホッと胸をなでおろした。

『ち、違うよママー!それオレじゃないよ~!!』

しかし、時折両親の暖かい言葉にエコの悲痛な叫びが混じり始めた。
何事かとOFFレンが家の中に駆け込むと、泣き崩れているエコと和気藹々とした両親がいた。
両親の手にはシンバルを慣らしているおさるのオモチャが載せられていてそれに嬉しそうに話しかけていた。

「パパ、エコったら嬉しそうにシンバル鳴らしているみたいね」
「そうだなぁ」
「違うって言ってるのに~!!!パパぁー!ママぁー!」

あんまりシツコクエコが叫んでいるので両親も気になったのかエコのほうにやっと気が付いた。

「あら、どなた?」
「え、エコだよ……」
「そんなわけないだろ!エコはそんな機械みたいな体をしているわけが!」
「もしかして……最近流行の振り込め詐欺って奴じゃないかしら?」
「何!?やっぱりそうか……コラ!親が子供を間違えるはずがないだろう!」

両親の手の上ではおさるがシンバルをしゃんしゃかしゃんしゃか鳴らしている。

「オレはここなのにぃ……」
「ママ、追い出してやろう」
「そうね。さ、エコはあっち行ってエコの好きなえびピラフでも食べましょう」
「えびピラフ!?ま、ママぁ~!オレも食べたいよー!」
「えぇい。往生際の悪い奴だ。出て行きなさい」

ポカンと一発げんこつを食らわされてエコは家から放り出された。
エコはすかさず窓に飛びついて中を覗くと、ピラフを玩具に食べさせている母親の姿があった。

「う……う…………うわぁ~~~~~ん!!!!」

生まれたての赤ん坊のようにエコは火がついたように泣き出した。
OFFレンもあまりにも可哀相な状況にかける言葉もない状況だった

「……と、とりあえずオオカミに頼んで元に戻してもらうしかないかもね」

苦しそうになんとかレッドがエコに声をかけるとエコはよろよろと立ち上がった。

「も、もういい……」
「?」
「こ、こうなったらとことんグレてやるーーー!グレてやるぞぉーー!!!」

ひとしきりエコが叫ぶとそのまま何処かへと走り去って行った。
耳を澄ますと少しだけエコの声がまだ聞こえていた。
転送装置で来たと言うのに一体、帰りはどうするのだろうか。

「……なんかまたいろいろ起こりそうな気がしますね……」

不安そうな顔のグリーンの横でレッドは聞いた。

「そうなの?」