第60話
『あなたの心にネコビーム』
(挿絵:ホワイト隊員)
──それは、いつもと変わらぬ夜だった…。
「はぁ…。人探しも楽じゃない…」
既に時は深夜1時を回った頃、薄暗い路地を歩く一人の男性。
顔つきから若い印象を受けるが春に似合わぬ黒いコートがその印象を隠している。
「そこのお前!」
「…いっそ身を固めるか。うん。それしかないな!」
「コラー!オレ様の話を聞くニャー!」
「ん?なんだ?」
男性の背後から現れた謎の黒い影。男性が変な物を見るような目でその影を見た。
その影の正体はニヤリと笑い男に近づいていった──。
「おっ!オレンジ…大判焼きを買ってきてください!!」
突然オレンジの部屋にイエローが慌てて飛び込んできた。
オレンジの肩を掴んでガクガクと揺さぶりながらイエローは本当に慌てていた。
「なっ!なんなの~!急に~!」
「今、解剖中で、腸をいじってトースターにしている最中なんです!」
「そ、それで?」
「大判焼き焼こうと思っているので買ってきてください!!3つ!小倉あん!!」
「わわわ…わかったってばぁぁぁ!!首がぁぁぁ!!」
イエローは手を離すとオレンジはドシッと床にしりもちをついた。
「じゃっ!お願いしますね♪」
ご機嫌そうに帰っていくイエロー。だが、お金を渡してもらっていない。
「…ボクが買ってこいって事かぁ…」

商店街を少し行けば屋台なんてざらにある。それが大阪の醍醐味だ。
焼きビーフンの屋台を探せと言われれば困るが、大判焼きはメジャーな分探しやすい。
「すいませーん。大判焼きくださーい」
「味は?」
「小倉あんー」
ほかほかの大判焼きを抱えながらオレンジは屋台を後にする。
ついでに1個自分用にも買う。これで少しは来た甲斐が出来るというもの。
「あー。疲れた…。まぁ、解剖されてるよりかはましだけど」
橋の上に腰掛けて休憩するオレンジ。
お腹もすいたし、自分用の大判焼きを袋から取り出して口に入れようとする。
「いただきまー…」
オレンジの下の歯が大判焼きを噛み砕こうとした瞬間。
人ごみの中から飛び出した誰かがオレンジにぶつかった。
「あっ!!」
大判焼きは綺麗な弧を描き橋の下に流れる川へと落ちていった。
もし、オリンピックに大判焼き投げがあれば間違いなく金メダルを取れているだろう。
「ぎゃぁぁ!!ボクの大判焼きがーーー!!!」
「ハッ!ごめんなさい…ちょっと朝から何も食べてなくて…」
オレンジにぶつかったのは一人の女性。
キリッとした顔つきからどことなく気の強そうな印象を受ける。
「ボクも朝ご飯食べてないよ…」
「そうじゃなくって…ちょっとこの大判焼き貰うわね」
「あぁっ!」
オレンジの意見を聞かずにもくもくと大判焼きを食べ始める女性。
よほどお腹がすいていたのかたった2口で大判焼きが無くなっていく…。
「あー!美味しかった!急いで食べちゃったから味解んない。何味だったの?」
「…小倉」
「ゆうこりん?」
「…小倉あん」
「あー小倉あんねぇ…。私、小倉あん嫌いなの」
「もー!!なんなのさー!また買わなきゃイエローに怒られるー!」
するとその女性は突然涙目のオレンジの頬をパンと叩くといきなり怒り出した
「…あなたねぇ!お腹の空いていた人がいたら食べ物を分けてあげるのが礼儀ってもんでしょう」
「で、でも…そんな死にそうなほど…」
「悔しかったら『も、もう食べられない!許して!』って言わせるくらい大判焼きを買い占めなさい」
「そんなムチャクチャなぁ…」
ゲンナリしてしまったオレンジを不憫に思ったのか女性はポンポンと頭を叩いた。
「仕方ない!私の職場で働かせてあげる。そのお金で大判焼き買いなさい」
「元はといえばボクのお金じゃん…」
「働かざる物食うべからずって言うでしょ。私に会えてよかったわね」
「しかも、なんか根本的な所から間違ってるよ…」
オレンジの手を引いて女性はもくもくと歩き出した。
すっかり元気になったとその元気を吸い取られたような気分のオレンジ。
「…さっ!着いた!」
「?」
ついたのは小さなビル。入り口の側には『DX探偵事務所』と書いてある。
「たっ、探偵なの!?」
「うん。私はここの従業員なの。探偵って結構面白いのよ。さぁさぁ入って」
警察密着24時などの番組を見てなんとなくあぁいう事件はスリルがあって面白い。
オレンジも少しだけ興味がわいていつのまにか空腹のことは忘れてしまった。
「ハイ!これが事務所の中!」
事務所の中はガランとしていた。机が2つ真ん中にポツン。少し大きい本棚が右端にポツ
ン。
想像していたのと違ってなんだか廃墟のオフィスに入った感じだ。
「……従業員はね。以前は12人くらいいたんだけど…最近の不景気で辞めちゃってね。
でも!今は社長と私である大きな事件を追ってるの!」
「社長…いないよ?」
「…社長はね。その事件に巻き込まれてしまったの」
女性は奥にある扉を開け、オレンジに見せた
「にゃ~ん…。ごろごろ…」
男性が部屋の中で猫になっていた。
「先日、この姿で社長は発見されたの…」
「だ、誰がこんな事を?」
「だから私はそれを追ってるの。実は、ここ最近一般人が猫にされる事例が増えてきているの」
女性は本棚の下に入っている黒いファイルをとって開いて見せた。
なんだかいっぱい書類が挟まっていてよくわからない…
「…なんとしても犯人を見つけ出して元に戻させないと」
「はぁ…」
「彼、私のフィアンセなの…。今年の6月に結婚するの…」
「へぇ…」
「だからあなた!」
「…オレンジ」
「オレンジ!私と一緒に調査しましょ。大判焼き買えるお金くらいは払うから」
「………」
「じゃぁ見たいテレビがあるから今日はここまでね。また明日来てね」
女性は『探偵心得』なる厚めの本をオレンジに渡すとさっさと帰っていった。
「あっ、そうそう。私、神崎瞳。瞳さんって呼んでね♪じゃ」
「あ…うん」
オレンジはおそるおそる玄関を開けて入っていった。
「た、ただいまー…」
「あっ!オレンジ!大変なんだよ。イエローが…」
オレンジを見つけて困惑した顔でやってくるレッド。
「…へ、へぇ…。ど、どうしたの?」
「と、とにかく来てよ!!」
「(イエローに殺されませんように…)」
しかし、オレンジがレッドに連れて行かれた場所は医務室ではなくロビー。
「あぁっ!」
「にゃー。にゃー」
イエローがあの社長と同じように猫になってしまっていた。
今は毛糸の玉で遊んでいる。とりあえずオレンジの中でセーフの掛け声が響いたのは言うまでも無い。
「…どうしたんだろ…帰ってきたらこんなんなってて」
「これは…最近起こっている事件だよ事件」
「え、そうなの?」
「イエローはだれかに猫にされてしまったんだよ!!」
とりあえず見聞きしたことを語るオレンジだが知らないOFFレンは騒然としている。
その様子を見てオレンジも少し良い気分になる。
「でもどうしよう戻らなかったら…解剖途中のままなんだよ」
「えっ!?」
「…とりあえず血とか出てないから大丈夫だと思うけど…早くなんとかしなきゃなぁ」
「ま、まぁ…なんとかなるよ。うん」
翌日。オレンジは朝早く探偵事務所に来ていた。
「…早く解決して大判焼き買ってくればイエローに怒られなくて済む…よぉし」
「あ、オレンジ。早速来たみたいね」
「ま、まぁね」
瞳はオレンジを中に通すと、さっそく向かいの机に座らせた。
「とりあえず簡単な探偵用語をいくつか教えるから覚えてね」
「う、うん…」
「尾行の事を『追尾』尾行失敗を『失尾』OK?」
最初は真剣に聞いていたオレンジだったが、だんだんと耳から耳へと抜けていっていた。
「よし、じゃぁ早速聞き込み調査の報告をしておくから。これも覚えてね」
「え?聞き込み?」
すっかり止まってしまっていたオレンジの脳みそが再び回転し始める
「今朝、ちょこっとね。聞き込みしてきたの」
「わー警察っぽ~い」
「へっへー。一応探偵歴は5年だからぁー」
瞳さんはコホンと咳払いをすると赤い革の手帳を開いた。
「えっと…。パッと見た感じ10代後半から20代前半らしいわ」
「幅広いなー…」
「あと…額に何か模様があったらしいわね」
「…肉?」
「違う違う。そういんじゃなくって…なんか模様らしいわ。以上!さ、いくわよオレンジ!」
そう言うと瞳さんはオレンジを置いたまま走り出した。
オレンジもぺたぺた後から付いていく。
「はー…割に合うのかな…この仕事ぉ…」
──だが、オレンジの懸命の操作にも係らず、まったく情報はつかめなかった。
だが、TVを見る限りでは明らかに被害者は増えていっている…。
「被害者が増えれば情報も集まりやすくなるはずなのに…」
「猫になったらだめだよね…」
「もっと人手があれば…でも私お金ないし、友達はみんな故郷の仙台にいるし…」
「人手…人手かぁ…」
「と、ゆーことで来ました」
事務所へやって来たOFFレン隊員。
猫になっているイエローは置いておいて全13名が勢ぞろい。
「お、オレンジ…貴方って名前と見た目と髪型に似合わず、意外と交友関係広いのね」
「どういう意味だよ~…」
「まぁまぁ。とにかく話は聞いたから。僕らに任せてください!!」
レッドが胸をドンとたたいた。実に力強い対応だ。
「じゃぁ、何からやろうか?」
「簡単に見つけられるレーダーとかあればいいのにねぇ」
「…あるっすよ。俺にいい考えが。さ、レッドちょっとじっとしててください」
「へ?何でまた…?」
「いいからいいから」
ブルーがレッドの帽子を下にひっぱりタイガへと変える。
タイガもすでに慣れたのか何事もなかったかのようにしている。
「タイガなら、猫の気配を感じられるんじゃないっすかね?」
「は!?猫!?」
「猫が大嫌いなタイガには適任ですね」
「な、なんだ??お、オレは猫じゃねーぞ!?」
「とにかく、この子が頑張ってくれるのね。協力よろしく」
「にゃっ!?だ、誰だこの色っぽい人は!!」
瞳さんを見るなりタイガの不機嫌そうな顔が元に戻る。
「瞳です。よろしくねぇー」
「にゃはー!よろしくぅ~♪後でお茶しようねー♪」
「…………とりあえずみんなで手分けして探して。見つかったら知らせてね」
「了解!!」
「でねでね♪オレ、最近筋肉つけようとしてるんだよー♪」
「つけても結局レッドの物になっちゃうんじゃないんですか?」
「むー…。まぁいいじゃんいいじゃん♪オレもレッドも同じだしー♪」
期待できるであろうタイガとコンビを組んで歩くクリーム隊員。
いつもペアのシェンナがいない分気は楽なものの余り代わりがなかった。
「…あ、ちょっとそこの公衆トイレ行ってきますね」
「えっ!!そ、そんな!や、野外でやるの?? にゃはー…♪オレ嫌いじゃないよ♪」
「…違います。単に用を足しにいくだけです」
クリームに冷たい目をされたタイガは公衆トイレの前で聞き耳を立てたりしながら待って
いた。
だが、耳に伝わってくるのは冷たいコンクリートの温度だけ。
「はぁ…。クリームちゃんならやってくれると思ったのに…」
「オイ、そこのお前」
一瞬ムッとしたものの何故だかそれよりも先に来るかなり嫌な感じ…。
「だ、誰だ!!」
タイガが振り返るとソイツはニヤリと笑った。
「………ふぅ。おまたせタイガくん」
「にゃ?」
「!?た、タイガくん!?」
地面でごろごろとしながら日向ぼっこをしているタイガの姿がそこにはあった。
「(ヤダ…写メとっとかなきゃ)」

「くっ!屈辱だぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
幸い、彼は嫌悪のおかげなのかしばらくして正気に戻ることが出来た。
だが、さっきからこの台詞を何度も叫びながら文字通り滝のようにタイガは泣いている。
「おっ!オレが…オレが猫の真似事なんかぁ…くっ、屈辱だぁぁぁぁぁ!!!」
「落ち着いてくださいタイガ!犯人の顔見たんでしょう?」
「ね、猫だった…。猫……?猫…猫………屈辱だぁぁぁぁ!!!!」
タイガの足元は綺麗な水溜りが出来ている。
これではまともな話が出来ない……。
「落ち着いてくださいタイガ。落ち着いて!」
「わぁぁぁぁぁん!!!」
「ハイハイ。キミキミ。泣き止んで。こんな些細なこと気にしちゃだめよ」
瞳さんがタイガの頭を撫でながら慰めるがタイガは泣き止まない。
それどころかチャンスとばかりに胸に飛び込んで泣き始めた。
……本当に悲しいのだろうか。
「良い?こんなの人生の中では些細なことよ」
「そ、そうかな…」
「そうそう。人間は人生の3分の一寝てるのよ。だからなく必要はないの」
「な、なんかよくわかんねーけど…わかったよ。でももうちょっとこのままで…」
「ハイハイ」
善意と悪意の狭間を見ながら隊員は複雑な表情をしていた。
「…タイガもういいでしょう?どんな犯人だったかを聞かせてください」
「聞かせてくれる?」
「お、おぅ…」
タイガは目をこすって腕を組み少ない頭で犯人を思い出していた
「え、えーと…なんかおでこに変な模様があって…緑っぽい色で…」
「……それはこんな顔かニャ?」
声のする方向を見るとずばりタイガが言っていたような姿の猫が立っていた。
「…あっ!コイツだ!!」
「ニャッハッハ。こんな所にOFFレンジャーが集まっているとは好都合ニャ」
「ム?あなた我々を…ハッ!よく見たらその額の模様は!!」
「気づいたようだな…OFFレンジャー」
謎の猫の後ろからゆっくりと姿を現した黒い影。
よーく目を凝らすとどこかで見たような顔。奇抜な顔の模様…。
「俺は、新生ブラックキャット団首領……ウィック」
「そしてオレ様はBC団改造猫4人衆の一人、猫猫様ニャ!」

BC団…詳しい話はバックナンバーを確認していただくとして
「久しいなOFFレンジャー…宅配ピザのバイトを経てようやく資金が集まったのだ…」
「ま、また性懲りもなく現れましたね!!」
「フッ…。今度のBC団は以前のBC団とは違う。たった今から解ることだ…。猫猫、コイツらの始末任せたぞ」
「ニャッ!おまかせくださいニャ!」
ウィックが去っていくと猫猫はニヤリと笑った。
「さぁー。オレ様に始末してほしいヤツは誰ニャー?」
「お前はこのタイガ様が倒してやるぜ!!お前だけは!!お前だけはぁぁぁ!!!」
「にゃ、にゃ?なんかよくわかんにゃいが…受けてたつニャ」
タイガが猫猫に走っていった瞬間、猫猫は額の前に両手で○を作った。
「にゃんにゃかビーーーーーム!!」
「ギャァァ!!」
猫猫の額の模様から放たれた黄色い光線がタイガを直撃した。
するとタイガは再びゴロゴロと地面で猫のような仕草をとる。
「ニャッハッハ!!オレ様は猫ビームでどんなヤツでも猫にすることが出来るのニャ!」
「にゃ~ん……ゴロゴロ…」
「さ・ら・に」
猫猫はどこからかねこじゃらしを取り出しタイガの前で降り始めた。
「にゃ…にゃーーー!!」
するとタイガは我慢できず飛びかかろうとする。まさに猫そのもの。
「オレ様は元ペットショップ店員!猫の扱いはお手の物なのニャ~♪」
「むぅ……まずいですね…あのビームを当てられたら…」
「さー!次はお前たちが猫になる番ニャ!」
猫猫は額に手を持っていくと再びビームを発射する準備を取った。
「にゃんにゃかビーーーーー…」
「危ないっ!」
猫猫に体当たり…というかドロップキックをかまして瞳さんがビームをそらす。
「い、痛いニャ!!なにするニャー!!」
「危ないっ!!」
猫猫の顔面に瞳さんの回し蹴りが炸裂する。
「な、なんなのニャ~~!!!」
「みんな伏せて!!」
猫猫の後頭部に瞳さんのストレートパンチが直撃する。
「いっ!痛いニャー!オレ様まだ何もしてないのニャー!!」
「危ないっ!」
「そうはいかないニャ!にゃんにゃかビーーーム!!」
瞳さんの過剰な助けにもよらずビームは瞳さんを直撃。
瞳さんまで猫じゃらしの魔の手にかかってしまった。
「あー痛かったニャ…後で覚えてろニャ…さーて。次は今度こそお前たちニャ!」
「残念でした!OFFレンボックス!!」
「甘いニャ…にゃんにゃかビーーム!!」
床に当たる直前にボックスにビームが当たりBOXは可愛い猫になってしまった。
「にゃーにゃー」
「よしよし。可愛いニャー。さぁ、もうお前たちは手も足も出ないニャ~?」
「グリーン!BOXもう無いんですか!?」
「す、すいません…最近つかってなかったんであれ一個しか……」
猫猫はニヤリと嫌な笑みを浮かべながらじりじりとこちらへと近づいてくる。
「ニャッハッハ……これからBC団は世界を征服し、みーんなウィック様の手下になるのニャ」
「(…まずいこのままでは…そうだ!)あ、貴方は何故BC団に??」
「ニャ?オレ様かニャ?ウィック様にスカウトされて改造猫になったのニャ」
「ほ、ほぉー。それはそれは…それでどういうつもりで入ったんですか?」
「オレ様は入るつもりは無かったニャ。でもある改造猫に操られて契約しちゃったのニャ。
でも、今は後悔してないニャ。むしろウィック様に感謝してるくらいだニャ~」
「(やっぱ洗脳ですか…)も、元の生活には…」
猫猫は右手を出してちょっと待ったのジェスチャーをする。
「おっと、無駄話はこれでおしまいニャ。先代の改造猫である雷猫の方法を利用したつもりだろうが甘いニャ」
「(ば、バレてる…)」
「さーいくニャ!!にゃんにゃか……」
ドゴッ!!と、猫猫の後ろで誰かが猫猫を殴る音がした。
「いだっ!!」
「よくもこのオレ様に二度も恥をかかせてくれたなぁ……」
猫猫が後ろを振り返ると凶悪な顔をしたタイガが指をボキボキならしていた。
「おっ!おかしいニャ!!オレ様のビームで猫になったはずニャー!」
「…オレはなぁ…猫になんてなんねーんだよっ!!」
「ニャ…ニャー!!!」
タイガは怒り狂って猫猫に爪で全身を引っかくは、牙で腕だの足だのを噛み付くは、
タイガのほうが悪者なのではないかと思うらいボコボコにしていた。
「いっ!いたいのニャー!なんでオレ様がこんな目に会わないといけないのニャ~!!」
「お前がオレを怒らせたからに決まってんだろーーーっ!!!」
「ニャ~~~~~~~!!!!」
それから1時間か2時間が経ったくらいにタイガはようやくすっきりしたのか満面の笑みを浮かべていた
「あー!すっきりしたぜー!!」
「ひどいのニャ~!なんで今日はこんなに殴られたりしなきゃなんないのニャー!」
「あ~?またオレにボコボコにされてーのか?」
「ニャ…」
猫猫はじわじわ目に涙を浮かべてきた。
「お、お、覚えてろニャー!!!!BC団に盾突くとどうなるか後で思い知らせてやるニャー!」
猫猫はそう言うと一目散にダッシュし、逃げていった。
それを見ながらタイガは腰に手を当てて高笑いをしていた。
「ハッハッハ!虎の強さがわかったかー!」
そしてしばらくして、猫化していた人々が徐々に正気を取り戻してきた。
そして探偵事務所の彼も…。
「ハッ…僕は一体」
「伸一さん」
「瞳…」
感動の再会のような美しい瞬間。思わず隊員たちも照れてしまう。

「ありがとうオレンジ、後みなさん。ハイ大判焼きのお金。ご苦労様」
「よかった…。これでイエローに怒られなくてすむよ」
「え?」
「なんでもないよ。なんでも…。さ、帰ろう帰ろう!」
その頃、BC団アジトでは涙でくしゃくしゃになった顔の猫猫が帰っていた。
猫猫を見つめるウィックの鋭い視線が猫猫には痛かった。
「……猫猫。新生BC団に早速汚点を残してくれたようだな」
「も、申し訳ございませんニャ…」
「本来ならばお前を消すところだが…まだ資金も十分ではなく、人材も少ない…。特別に恩赦を与えてやろう」
「ハハッ!有難き幸せニャ。次こそこの猫猫がアイツらを…」
「恩赦を与えるとは言ったが、お前がアイツらを倒す作戦に加わってもよいとは言ってない」
「ニャ…で、では…」
「お前は一ヶ月間、アジト拡張工事班行きだ」
猫猫の腕を戦闘員が取り、ずるずると猫猫は部屋の出口へと連れて行かれていく
「そ!そんニャー!!ウィック様!お待ちくださいニャー!!」
「……そこでせいぜい自分の失敗を後悔するんだな猫猫よ…」
「ニャー!!!」
「(フン…期待を裏切ってくれるのは相変わらずだなOFFレンジャー…)」
ウィックが自室へ歩いていくと一人の改造猫がウィックの足元で跪いた。
「ウィック様。次はこのオレにお任せください」
「…いいだろう。猫猫よりかは良い結果を残すことを期待しているぞ…」
「ハッ…」
改造猫が去った後ウィックは静かに薄暗い廊下を歩いていった。