第64話

『プレインスターによろしく』

(挿絵:ピンク隊員)

その日、エコは尻尾を踏んづけて、朝から悪エコになっていた。
悪エコは机の上に足を乗せた思いっきり態度の悪い感じで食堂に座っていた。

挿絵

こうなるとオオカミはエコの席からかなり離れた場所へと集まって食事しているのだ。

「……ところでさ、今日の晩のAV鑑賞会お前も来るんだろ?」
「え!?聞いてねーよそんなの!」
「先週言ったじゃん」
「うわっ!忘れてた!昨日道路工事のバイトで徹夜だったから寝ちまうかもな」
「あ、じゃぁコーヒーでも飲んどけよ」
「おー。たっぷりカフェインとって今日の晩にそなえなきゃな」

「……バ~カ」

ワイワイ騒いでいるオオカミの後ろでエコが思い切り侮蔑のニュアンスをこめて言い放った。

「コーヒーに含まれてるカフェインなんてな。コーヒー豆100gの時点で約1.3%、コーヒーにすりゃ0.04%だ。
一番多く含まれてると言う番茶でさえ3.2%、50杯以上コーヒー飲んだって追いつかないから覚醒効果なんて期待できねぇよ。
あと、『たっぷりカフェイン取って』ってホント救いようがない馬鹿だな。カフェインは覚醒剤の仲間なんだよ
そんなにお前が死にたいんなら俺が致死量分のカフェイン注入してやるから後で部屋に来いよ」

エコはガタガタと椅子を揺らしながら淡々と語る。
オオカミたちはすっかり黙り込んでエコを無視しようと話を変え始める。

「そういや今日の占い。お前みずがめ座だったよな?最下位だったぜ?」
「えーマジ?最近俺ついてないからそういうの言うなよ。落ち込むだろ」
「ラッキーカラーは赤だってよ。赤毛に染めてみるか?」
「え~。赤くして街中で牛に襲われたらどうするんだよ」
「そんなわけないだろw」

「………バ~カ」

エコが椅子を揺らす速度を速めながら再び口を挟む。

「牛ってのはそもそも色の判別ができねーんだよ。全部白黒にしか見えねーの。
闘牛で赤い布を使ってるのはただのスペインの伝統。ホントお前ら馬鹿だな。
あと、お前。ついてないってお前はそういう星の下に生まれたんだよ。いくら待っも幸せなんてこねーんだよクズ」

オオカミたちはすっかり話をしなくなってしまった。
するとついにガマンできなくなったのかオオカミの一人がエコの元へと近づく。

「なんだよお前!さっきから馬鹿馬鹿ってよ!」
「あぁ?馬鹿だから馬鹿って言っただけだろ?相対性理論もわかんないクズが」
「口だけならなんとでも言えるぜ?俺らが納得できるような方法で証明しろよ」
「………俺が?お前らみたいな奴らのために?なんでそんなめんどくせーことを?」
「できないのか?え?できないんだろ!」

エコは少しムッとしてガタンと椅子を揺らすのを止めた。

「……じゃぁいいだろ。証明してやるよ」
「おう、わかればいいんだ」

エコはチラっと近くのTVへと目を移す。
そこでは最近発見された星のニュースが流れていた。

「………そうだな。あの星を二週間で消すというのはどうだ?」
「あの星を消す?なんか変な機械で消すんじゃないだろうな!?」
「いや、俺が使うのは……紙とペンだけだ。後は何もしない。見張っててもいいぜ?」
「……よ、よし!」
「その代わり……俺の言うとおりになったらお前らを俺の好きにさせてもらうぜ?」
「……あぁ、わかった一週間だからな!」

エコは傍にあったナプキンになにやらサラサラとメモするとそれを細く折りたたんで尻尾に結びつけた。

「もうこれで完了だ。あとは何もしない……じゃぁスタートだ」

悪エコは尻尾のスイッチをポチッと押し元のエコへと戻った。
しばらくぽけっとしていたエコはお腹がすいたのかテーブルの上のパンを食べ始めた。

「(なんか調子狂うな……)」
「(できるわけねーよ。ただ強がり言ってるだけさ)」
「(だ、だよな。いくらIQ200でも二週間で星消すなんてな?)」

オオカミは少々不安に感じながらもぐもぐとパンを食べているエコを見ていた。











朝食を食べ終えたエコはOFFレン本部へとやってきていた。
だが、ロビーは随分と賑わっていた。

「せんぱ~い。どっか遊びにいきましょうよ~」

しかし、エコの方に隊員の顔は向けられずTV画面に隊員の興味は奪われてしまっていた。

『先日、発見されました星が今、学者や天体マニアの間で注目を集めています。
この星の精は実に慎ましく暮らしており、学会では昨夜この星をプレインスターと名づけられました』

TV画面にはちょこんと小さなちゃぶ台の前に座ってわずかなご飯と梅干を食べている星の精の姿が映し出されていた。

「うわぁ……この物欲にまみれた現代社会に現れた救世主ですね」
「なんだか勇気付けられるよねー」
「ねぇー。タイガ先輩はー?」
「せめて美味しい物でも食べさせてあげられませんかねぇー」
「でも、どうやって食べさせてあげるんですかー?」
「そーですねぇ………」

エコはキョロキョロと辺りを見回してみるがタイガどころかレッドの姿も見えない。
ロビーをそっと抜け出してレッドの部屋へと向う。

「ターイガ先輩!」
「にゃっ!?」

部屋の中にいたタイガはビクッとして慌てて見ていた本を隠す。

「………なんだエコか。脅かすなよな……」
「タイガ先輩、何やってるんですか?」
「ん?オレは……そのホラ。目のほよーって奴だよ」
「メノホヨー?」

タイガは見ていたアダルト雑誌を大きくエコの目の前に広げて見せた。

「た、タイガ先輩!これえっちな本じゃないですかぁ!」
「どうだ?なんか見ててにゃはーwって感じするだろ?」

挿絵

「うーん………べ、別に見ててなんとも思わないですケド……」
「やっぱお前もガキだな。男なら見ててにゃはーwってなるもんなんだぜ?」
「……そ、そうなんですか?さっすがタイガ先輩!大人ですねー!」

エヘンと調子に乗った素振りを見せたタイガはエコに何冊か手渡した。

「お前もこれでちょっと大人の勉強でもするんだな。貸してやる。大事に使えよ?」
「ハーイ!」

ためしにエコは上の方の本を広げて見てみる。
しかし、ちょっと見てて恥ずかしいだけで別に変わった感情が湧き出てくるわけでもなかった。

「(……や、やっぱりオレもまだ子供なのかぁ……ガッカリ)」
「所で、お前尻尾になに付けてるんだ?」
「え?」

エコの尻尾にはおみくじのように紙がくくりつけられていた。
タイガがその紙をとって開いてみると小さな文字でこう書かれていた

『尾布丘、午後12時、南南西の方向』

「あー?なんだこりゃ?」
「えーと…尾布丘で午後12時にその方向を向けって事ですかねー?」
「ははーん……わかったぞ?これは悪エコが書いたメモだなぁ?」
「解るんですか?」
「おうよ。で、アイツの事だからきっと何か凄い事を忘れない様に書いて尻尾につけた。
しかし、間違えて元のエコに戻ってしまって……こうしてお前がここに来たってことだ」

エコは目から鱗も麒麟も落ちそうなキラキラした目でタイガを見つめた。

「す、凄い!一枚の紙からそんな事まで解っちゃうなんて!さっすがタイガ先輩!カッコイイです!」
「にゃははーwそうだろそうだろ?」
「でも、悪エコが忘れない様にメモするほどの凄い事って何なんでしょうねー?」
「そりゃぁ……うーんと……あれだ!何でも願いの叶う宝石とか莫大な財宝とかそういうのだろ」
「うわぁ!悪エコのヤツ自分だけで独り占めしようとしてたのかぁ」
「よし、ここはオレたちが先に手に入れて山分けしよーぜ」

タイガもエコは尻尾がピンと立っていて明らかにワクワクしている様子だった。

「せ、先輩!オレ、ミドリガメ欲しいんですけどお宝あったら飼えますかねー?」
「んなもん世界中の亀買えるに決まってんだろ!」
「わぁ~!タイガ先輩!オレも協力します!一緒に探しにいきましょう!」
「よしよし。じゃぁ、今から行けばいい具合だし。みんなには内緒で行くぞ?」
「は、ハイ!」







午後11時半。エコとタイガの二人は尾布ヶ丘へとやってきた。
特にこれといってひっそりとした夜の丘の上である。目の前には民家の明かりたちが見える。

「ハァ……ハァ……せんぱぁい……もう走れませぇん……」

徒歩15分の道をずっと急いで走ってきたのでエコはすっかりヘトヘトになって草の上に寝転ぶ。
タイガはタイガで鍛えているのかケロッとした顔でアチコチに何か宝物はないかと探している。

「むー。無いなぁ……」
「先輩、12時までとりあえず待ってみましょうよぉ……」

ようやく落ち着いてきたエコの隣にタイガが座る。
頭上には三日月。星は雲であまりよく見えないがチョコチョコ綺麗な星が見える。

「ねぇ、タイガ先輩!お宝いっぱい見つけたらオレたちどうしましょうか?」
「うーん。そうだな。とりあえずオレが9割貰うから。お前に1割やるぜ」
「えー!せんぱぁい。オレにももうちょっとくださいよぉ」
「バカ!ガキが大金持ったらろくな事がねーんだぞ!だからオレがゆーいぎに使ってやるんだ」
「そ、そうか!タイガ先輩ってオトナー♪」
「にゃはーwそうだろそうだろ!」

しかし、時計を持ってくるのを忘れた為時間がわからない二人はそのまま話に花を咲かせていた。
しかも南南西の方向がもちろんこの二人に解るわけもなくあるかどうかも解らない財宝の話に夢中だった。


「カラオケで1年中歌い続けられるぞ!オレの美声に痺れるぜお前は」
「えぇー!凄いなぁ。カッコイイだけじゃなくて歌も上手いなんてさすがオレの憧れの先輩!」
「にゃははーw そんでそれからボーリングだって投げ放題だぜ?ゴロゴロー!ってな」
「先輩カッコイイー!」
「ゲーセンだって行き放題だぜ?色んなゲームだって出来るしな」
「わぁ!楽しみですー!」
「ほかにももーっと楽しい事ができるぜ!ワクワクするよなー」
「ハイ!ワクワクしますねー!」

すると時間は午後12時になった。だが、二人は話に夢中でまったく気がつかない
その瞬間。南南西の方角にキラっと流れ星流れた。

「あっ、タイガ先輩!流れ星ですよ」
「何!早くお願いしなきゃな!えーと女の子とH出来ますように……」
「おなかいっぱいバナナを食べられますよーに」
「ふー。これでOKだな。あぶねーあぶねー」

しかし、流れ星は消えておらずだんだんその形が大きくなっていたのにエコは気づいた。

「せ、先輩……なんか流れ星こっちに落ちてきませんか?」
「えー?あれ月だろ?」

タイガがそう言うならと無理やり納得はしてみたエコだったが、
星は空気を入れている風船のように物凄い速さで大きくなっている。

「せ、せんぱぁい!やっぱり月なんかじゃないですよぉ!」
「いや、待て。なかなか消えないからお願いがいっぱいできるんじゃないか?」
「そんな事言ってる場合じゃないですよぉ!」

星はぐんぐん近づき二人に直撃……!
と、思いきやグーンと綺麗に上部にカーブし二人の頭をかすり、そのまま二人の背後にあった大きな木に激突した。

「こ、今年こそ女の子とHできますよーに!あと、オレのカッコよさが永遠に続きますよーに!」
「あぁ、えぇと、エビピラフが一週間ずーっと食べられますよーに!」

明るかった光がだんだん弱まってくると、光っていた星はだんだん姿が見えてきた。
小さなリュックサックをしょってその星はよろよろと立ち上がった。

「ケホケホ……」
「お前が女の子とHさせてくれるのか?は、早くしろ!」
「エビピラフどこー?」
「な、なんのことですか?」

その星はぽかんとした顔で手を合わせて祈る二人を見ていた。

「お前、流れ星なんだろ?願い叶えてくれるんだろ?」
「えびピラフどこー?」
「ま、待ってよ。僕は星は星でもそういう星じゃないんだよ」
「あー?じゃぁなんだ?何しに流れてきたんだ?」

その星はニッコリ微笑んだ。

「だって、とっても楽しそうな話をしていたからつい来ちゃったんだ」

挿絵

「あー?楽しそうな話ぃ~?」
「ホラ、よく知らないけどなんだか楽しそうに話してたじゃない?」
「あぁ、遊びの話じゃないですか?先輩」
「そうそう!僕ね。遊び大好きなんだ。かくれんぼとかおにごっことかも好きだよ」

星は星らしく明るく輝かしい笑顔で二人を見ている。

「かくれんぼー?それって楽しいのか?」
「……全然楽しくないですよ。オレ、パパとやった事ありますけど物陰でじっとしているだけで日が暮れるんです」
「じゃぁ、鬼ごっこはどーだ?」
「あれは最高に面白くないですよ……オレが鬼でパパが逃げると思ったらパパ木陰で日向ぼっこ始めるんです。タッチしても寝てるんです」
「ふ、ふーん……」

エコの顔にうっすらと黒い影が広がっていく。何だか解らないがエコの辛い過去なのだろう。

「だったら、オレはカラオケやボーリングがいいな!」
「からおけやぼーりんぐ?それって楽しいの?」
「おー。すげー楽しいぜ?お前やったことねーのか?」
「僕、鬼ごっことかくれんぼだけですっごく楽しいから!」

純粋な笑顔が悪事をしていなくてもなんだかタイガの良心を突く。

「鬼ごっことかくれんぼさえあればいいなんて凄い質素な星ですねー先輩」
「お、おぉ。そうだな。でももっと楽しい事だってあるんだぞー?」
「あ、それってお手玉?竹とんぼかなぁ?だったらね。僕、持ってきてるんだ♪」

ゴソゴソとリュックをかき回して小さなお手玉やビー玉を取り出す星。
あまりの質素さになんだかタイガもエコもやり辛い表情を見せる。

「違う違う!さっきもいったろ?カラオケとかボーリングとか……後ゲーセンとかな」
「カラオケトカボウリングトカアトゲーセントカナ?」
「だー!全部くっつけるな!……よーし。今からオレたちと一緒にあそぼーぜ。楽しさを教えてやる!」
「先輩、お宝探しはどうなったんですか?」
「あぁ、もう何もねーし。どうせ悪エコのいたづらだろ。さ、エコお前も付いて来い!今日もお前に金払わせてやるからな!」

タイガと星は肩を組んで丘を降りていっている。エコは試しに辺りを見回してみるがやはり何もない。

「はぁ……悪エコ酷いよぉ……」











「こ、このうるさい場所はなんなの……?」

ゲーセンに来るなり星は不快そうに耳を押さえた。
その手をタイガは無理やり離させると辺りの騒音に負けないくらいの大声で叫んだ

「いーか!ここがゲーセンだ!とりあえずエコから3000円もらって好きなだけ遊べ!」
「さ、3000円もですかぁ?あのぉ……お、お小遣いが」
「当ったり前だろ?オレはいつもどおり三万円な」
「せんぱぁい、もう5000円しかないですよぉ……」

エコはがまぐちを逆さまに振るが5000円の他にほこりすら出てこない。

「ったく……しゃーねーなぁ……じゃぁ、オレがちょっとその辺でスってくるか……」
「すいません先輩。お願いしますー」
「久々だから腕が鳴るぜぇ……」

ポキポキ指を鳴らしながらタイガが人ごみに入ろうとした瞬間だった。
人ごみがいっせいにタイガを見たのだ。これにはさすがのタイガもびっくりくりーだ。

「オイ、あれ……」
「えぇ、間違いないわね……」

人々がざわつき始める。でもタイガは何もやっていない。
かと思えば人々はじりじりとタイガの方へとやってくる……!

「キミ、ニュースでやっていたプレインスターじゃないかい?」

タイガの後ろのあの星にみんなは話しかけ始めたのだ。タイガに寄る人は一人もいない。

「え?僕が?僕には名前なんてないよ。なくても僕は僕だから」
「なんて控えめでまっすぐな星なんだ……」
「可愛いわねぇ。お小遣いあげるからこれで美味しい物でも食べて」
「俺も少ないけどちょっとやるよ」

プレインスターの周りを取り囲んだ人たちがいなくなると手には何十枚ものお札。

「お、お、おーーーっ!!すげー!向こうから金くれるなんてお前有名人だったのか?」
「タイガ先輩、この子は星だからきっと有名星ですよ」
「……よくわかんないな。そういえば最近カメラとか望遠鏡でよく見つめられてはいるけど」

タイガはプレインスターからお金を奪うとそれをニヤニヤしながら数え始めた。

「おぉーっ!5万だぜー!これだけありゃ十分だ。さっそくあそぼーぜ」
「じゃぁ、オレのお小遣いも良いですよね先輩」
「バカ!お前の金も使うに決まってんだろ。オラ、よこせ」
「そんなぁぁ!」
「じゃぁ、えーとプレインスターだっけ?ゲーセン行こうぜ♪」

ホクホク顔のタイガを先頭に3人はゲーセンへと入っていった。
ゲーセンに入ると様々なゲーム機があり、プレインスターはそれらをまじまじと見ていた。

「これ何?ぴかぴかしたのがいっぱいあるよ?」
「まぁ、みてろって。エコ、両替して来たか?」
「あ、はい。先輩どうぞー」

タイガは不思議そうな顔をするプレインスターを横目にレーシングマシンに100円玉を入れる。

「よーし!いくぜー!」

レーシングゲームが始まるとタイガは下手くそなハンドルさばきでアチコチにぶつけながらゲームをプレイする。

「うわぁ、なにこれー!おもしろそー!……あ、でもなんか遅いね」
「タイガ先輩はね。速さを競うんじゃなくて短時間でどれだけ車の限界を試せるかチャレンジしてるんだって」
「へぇー……そうなんだぁ」

結局タイガの車はガードレールを飛び越えてゲームオーバーになってしまう。

「……チッ。ひ弱な車だぜ。このゲームはつまんねーな」
「僕もやっていい?」
「おーいいぞ」

嬉しそうにプレインスターは座席に座ってハンドルをぐいぐい回し始めた。

「あれ?何も起こらないよ?」
「100円玉入れなきゃうごかねーよ」

タイガは100円を入れてやるとさっそくゲームが始まった。
しかし、始まった瞬間プレインスターのロケットスタート。グングンぶっちぎりで一位を
獲得した。

「やったー!なんか僕がかけっこ一番だー!」
「……ま、まぁ。オレほどじゃないけど良くやったんじゃねーか?」
「タイガ!どこいってたんですかぁ!」

と、そこへやってきたのはグリーンたちOFFレンジャー

「(まずいですよ先輩……OFFレンジャーですよ)」
「まったく、レッドに用事があるから探していたら……夜にフラフラ出歩かないでください!」
「う、うるせぇなぁ!今、コイツと遊んでるんだよ!」
「コイツぅ?」

グリーンがチラとゲームの席を見るとそこには見覚えのある姿

「グリーン。この子あのプレインスターですよ!」
「あっ!ホント!」
「何だ?お前らコイツ知ってるのか?」

グリーンたちはプレインスターに手を合わせておがみ始める。

「あぁ、なんて慎ましい子なんでしょうね。こんなゲームで楽しそうに」
「はにゃ?どしたんだ?」
「プレインスターが一緒なら仕方ないですね。早く帰ってくるんですよ?」
「お、おぉ……」

グリーンたちは微笑ましい様子でその場を後にする。一体なんだったのだろうか。









──たくさんゲーセンで遊び、たくさん景品も手に入れたプレインスターらは楽しそうにゲーセンを後にした。

「いやーいっぱいおみやげができちゃったなぁ」
「せんぱぁい。いいんですか?プレインスターばっかり景品とってましたよ?」
「い、いいんだよ……オレはいつでも、と、取れるからな!」
「さっすが先輩ー!懐が広くてカッコイイなぁ」

エコの尊敬する目が少々タイガには痛かった。

「……よ、よし、次はボーリングいこーぜ」
「もうお金ないですよ。オレのお金も先輩なくなっちゃいましたし」
「仕方ねーな……オレがスってくるか?」
「先輩、この子有名人みたいですからきっとタダにしてくれるんじゃないですか?」
「にゃるほど!それは良い考えだぜエコ!よし、来いプレインスター!」


それから、タイガたちはボーリング場でタダにしてもらったり、カラオケをタダでオールしたり。
さらには野球観戦で良い席を取ったり、映画を何本も貰ったお金で見たり…………。やりたい放題だった。
しかも、遊び三昧でエコたちはもう3日間帰ってない。その日も夜中のカラオケ帰りの3人。

「オレたちトラトラトラー♪叫んでるー♪ってな。あぁ、スッキリしたぜ」
「タイガ先輩は歌が上手くて良いなぁ」

すっかりプレインスターも遊びを満喫したようでだいぶ遊びにも慣れてきていた。

「地球は楽しいんだねー。僕、もう満足満足」
「だろー?オレたちはこうやって楽しんでるんだぜ?」
「よし、次はどこへいこうかなぁー」

しかし、そこへバイクたちが何台かやってくる。バイクたちは3人を囲むと突然叫んだ。

「ガキがこんな時間にうろつくもんじゃねぇぞゴラァ!」
「ちょうどいいから金寄こせゴラァ!」

しかし、3人は怯えもせずにぼけーとした顔で暴走族らしき男たちを見ていた。
しかも、エコは族の一人の顔をじーっと見ながら首をかしげていた

「…………あっ!高槻さんじゃないですかー!」
「オイ、知り合いなのか?」
「ハイ、以前オレの入ってた族にいてすぐやめちゃったんですけど面倒見てもらってたんです」

その高槻とか言う男もポンと手を叩きエコを見て思い出していた。

「お前エコか!ずいぶん雰囲気変わったな。整形でもしたか?」
「いえいえー。いろいろとあって……まぁ、違うグループに」
「ふーん。久々にどうだ?一緒に遊ぼうぜ」
「いえ、オレたちは今日はちょーっと……」
「遊び!?やりたいやりたい!」

しかし、エコが言うと同時にプレインスターが言った。

「おーノリの良い奴だな。じゃ、コイツちょっと当分の間借りて行くぜ」
「え、で、でも……」

だが、もう遅くプレインスターはバイクに乗ってどこかへと走り去っていた。

「……お、おい。アイツ連れて行かれちゃったぞ?」
「昔からあーいう人なんです」
「そうじゃねーよ!もう金もらえねーじゃねーかよ!!てめぇの知り合いならてめーが責任だーっ!」

エコのアタマはタイガに殴られる。だが、硬すぎてあきらかにタイガの方がダメージが大きい
タイガの拳は真っ赤になりながら涙目。

「ったく!罰として金5万円盗って来い!今すぐだ!」
「は、あぁぁい…………」










それから5日後。二人がぶらぶら遊んでいるとバッタリプレインスターらしき人物と出くわした。
しかし、ずいぶんと悪い遊びばかりやっていたのかずいぶん悪い感じになってる。

挿絵

「おー久々~」
「あーどーも」

なんだか態度もすっかり無愛想になってしまっている。
朱に交われば赤くなるとはよく言ったものだ。

「また、オレらと一緒に遊ぼうぜー!カラオケ行くか?」
「あーそういうのマジ勘弁なんですけどーもうなんか飽きちゃったっつーか」
「(先輩、なんかすっかりふてぶてしくなりましたね……)」
「飽きたって……お前さー鬼ごっこですら飽きなかったんじゃねーのかよ!」
「あーもーうるせーうるせー。とにかく俺もうカラオケとか飽きちゃったから」
「えー?」
「キミら、よくこんなつまらない星に住んでるね」

プレインスターはそのまま感じ悪い態度で通り過ぎていった。

「……ちぇー」
「先輩先輩。もうほっときましょうよー」
「そだな。じゃ、オレらだけでゲーセン行こうぜ」







それからプレインスターは、同情のお金を貰いながらも地球で暮らしていたが、
そのうち飽きて銀河系の果てへ旅行する事にし、二度と地球からその姿を見ることは出来なくなったのでした。